サイバーセキュリティフレームワークとは?企業が押さえるべき基礎知識と導入ポイント

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サイバー攻撃がますます巧妙化し、企業や組織が直面する脅威が多様化する昨今、効果的なセキュリティ対策の導入が不可欠です。

サイバーセキュリティフレームワークは、企業がサイバー攻撃や情報漏洩リスクに対応するための“指針”です。

本稿では、サイバーセキュリティフレームワークの基礎知識、主要なフレームワークの違いやNIST(米国国立標準技術研究所)が提供するNIST サイバーセキュリティフレームワーク 2.0(NIST CSF 2.0)の最新動向、導入時のポイントを分かりやすく解説します。

サイバーセキュリティフレームワークとは

サイバーセキュリティフレームワークは、企業や組織がサイバーセキュリティ対策を体系的かつ効果的に行うための指針です。

フレームワークの定義と重要性

サイバーセキュリティフレームワークは、情報資産の保護とリスクマネジメントを目的とした一連の手続きや基準です。このフレームワークの重要性は、企業や組織が直面するサイバー脅威に対して防御策を講じるための構造を提供する点にあります。

まず、フレームワークは組織全体のセキュリティポリシーを統一し、情報の保護に一貫性をもたらします。特に、各部門が独自のセキュリティアプローチを取っている場合、全体のセキュリティ体制に欠陥が生じやすくなります。

次に、サイバー攻撃は日に日に巧妙化しており、新しい脅威が常に生まれています。そのため、定期的なリスクアセスメントと対策の見直しが不可欠です。フレームワークではこのプロセスを体系化し、継続的な改善を促進します。たとえば、NISTのサイバーセキュリティフレームワーク(CSF)の改訂版であるNIST CSF 2.0では、ガバナンス機能やサプライチェーンリスクマネジメントの強化が図られています。

最後に、フレームワークは法令や規制の遵守を支援します。多くの業界ではセキュリティ関連の規制が厳格化されており、違反すると罰金や制裁の対象となる可能性もあります。フレームワークを導入・運用することで、これらの規制に対する要件を満たすことができます。

主要なサイバーセキュリティフレームワーク

主要なサイバーセキュリティフレームワークとしてNIST CSFやISO/IEC 27001、COBIT、CIS Controlsなどがあります。

まず、NIST CSFはアメリカ国立標準技術研究所によって開発されたフレームワークです。特に、重要インフラの保護を目的としており、広く採用されています。

次に、ISO/IEC 27001は国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が共同開発した国際標準規格です。これは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の確立、実施、維持、および継続的改善のための要求事項を規定しています。

さらに、COBITは情報技術管理およびガバナンスのためのフレームワークで、主にITガバナンスの強化に重点を置いています。

CIS Controlsは、実証されたサイバーセキュリティベストプラクティスのセットで、攻撃を防止し、リスクを低減するための具体的な指針を提供します。これらのフレームワークはそれぞれ独自の特長を持ち、組織のニーズに応じた組み合わせが求められます。

NISTフレームワークの特徴

NISTフレームワークの特徴は、リスクベースのアプローチと柔軟性にあります。NIST CSFは、五つの基本的な機能(識別、保護、検出、対応、回復)から構成されており、このプロセス全体を通じて組織のセキュリティ態勢を強化します。

まず、識別の部分では、資産、脅威、脆弱性、リスクを特定し、内容を把握します。これにより、どの部分が特に重要であるかを理解し、適切な対策を講じることができます。

次に、保護の段階では、特定されたリスクに対して具体的な保護策を設けます。これは、アクセス制御やデータ保護、トレーニングなど多岐にわたります。これにより、不正なアクセスやデータ漏洩を防ぐことが可能です。

検出機能では、異常な活動やセキュリティインシデントを早期に発見することが求められます。そのためには、ネットワークモニタリングやログ分析が重要な役割を果たします。

対応機能では、検出されたインシデントに迅速に対処し、被害を最小限に抑える手順を確立します。そして回復機能では、被害を受けたシステムやデータを迅速に回復させ、通常の業務を再開するための計画を策定します。

これらの機能を柔軟に組み合わせることで、組織に最適なセキュリティ態勢が構築可能です。

NISTサイバーセキュリティフレームワーク(CSF)の概要

NIST CSFは、サイバーセキュリティ対策を組織が体系的に導入し、持続的に管理するための指針です。

NIST CSFの構成要素

NIST CSFの主要な構成要素は、コア(Core)、ティア(Tier)、プロファイル(Profile)の3つです。これらの要素は、企業がセキュリティ戦略を策定し、リスクを効果的に管理することを支援します。

コア(Core)は、特定、保護、検知、対応、回復の5つの機能に基づいており、サイバーセキュリティの全体像を網羅しています。これにより、企業はどの部分を強化すべきかを明確に理解できます。

ティア(Tier)は、企業のセキュリティ成熟度を示すもので、1から4までの段階に分かれており、自社のセキュリティレベルを評価するための尺度となります。これにより、現状のセキュリティ体制を把握し、必要な改善点を識別できます。

プロファイル(Profile)は、企業のセキュリティの目標や現状を基にカスタマイズされたセキュリティプランを指します。これにより、企業は自社の業務やリスクに応じたアプローチを取ることができるため、効果的なサイバーセキュリティ対策が可能です。

これらの構成要素を理解し活用することで、企業はサイバーセキュリティリスクの管理を強化し、持続的なセキュリティ体制を構築することができます。

NIST CSF 2.0の改訂ポイント

NIST CSF 2.0の改訂ポイントでは、適応範囲の拡大、ガバナンス機能の追加、サプライチェーンリスクマネジメントの強化、オンラインコンテンツの拡充が含まれています。

適応範囲の拡大

NIST CSF 2.0では、適応範囲が従来の重要インフラからさらに広がり、多様な業界や構造の企業にも利用可能となりました。これにより、中小企業や非営利団体も、サイバーセキュリティ対策のフレームワークとしてNIST CSFを導入しやすくなります。たとえば、教育機関や医療機関など、従来のCSFの対象外であった組織も、自身のリスクプロファイルに合わせたセキュリティ対策を設計・実施することが可能です。

この改訂によって、幅広い業界が一貫したセキュリティ対策を行う基盤が整い、サイバー攻撃への耐性が高まります。また、適応範囲の拡大によって、多種多様なビジネスや非営利団体もセキュリティのベストプラクティスを取り入れやすくなり、全体的なサイバーセキュリティの向上に寄与します。

ガバナンス機能の追加

NIST CSF 2.0の大きな改訂点の一つに、ガバナンス機能の追加があります。これは、組織全体でのサイバーセキュリティ戦略の策定と実行を支援するための機能です。具体的には、組織のコンテキスト(GV.OC)、リスクマネジメント戦略(GV.RM)、役割・責任・権限(GV.RR)、方針(GV.PO)、監督(GV.OV)などが含まれています。

たとえば、リスクマネジメント戦略は、組織が直面するリスクを適切に管理し、全体のセキュリティ体制を強化するための指針を提供します。役割・責任・権限の明確化は、全ての関係者が自分の役割を理解し、適切に対処するための基盤を築きます。

このようなガバナンス機能の追加により、組織はサイバーセキュリティの取り組みを効果的に統制し、組織全体でのセキュリティ意識と対応力を高めることができます。

サプライチェーンリスクマネジメントの強化

NIST CSF 2.0では、サプライチェーンリスクマネジメントの強化も重要な改訂点となっています。現代の企業は、グローバル化に伴い、複雑なサプライチェーンを持つことが一般的です。そのため、一次サプライヤーだけでなく、その先に続くサプライヤーも含めたセキュリティリスクを管理する必要があります。

具体的には、サプライチェーン全体のリスク評価と継続的なモニタリング、サプライヤーのセキュリティポリシーの遵守確認、サプライチェーンに関する情報共有とコラボレーションなどが求められます。これにより、サイバー攻撃による連鎖的な被害を防ぎ、全体のセキュリティを強化します。

たとえば、自社のセキュリティが万全であっても、サプライヤーの一つが攻撃を受けると、その影響が自社にも及ぶ可能性があります。そのため、サプライチェーンリスクマネジメントを強化することで、全体のセキュリティ体制を向上させることができます。

サイバーセキュリティフレームワークを活用し、ITガバナンスを推進する

NIST CSF 2.0は、企業のセキュリティ対策を次のレベルに引き上げるための重要な指針です。改訂では、適応範囲が拡大し、ガバナンス機能が追加されたことで、ますます包括的な対策が可能となりました。特に、サプライチェーンリスクマネジメントやオンラインコンテンツの拡充により、現代の多様なサイバー脅威に柔軟に対応できるようになりました。

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