目次
サードパーティーリスクマネジメントとは
サードパーティーリスクマネジメントは、外部委託先など第三者との取引におけるリスクを体系的に管理する手法です。
サードパーティーとは
サードパーティーとは、企業が業務を進めるうえで直接の統制下にない外部の企業・団体を指します。
製造委託先、ITベンダー、物流事業者、コンサルティング会社などが代表例です。
現代のビジネスでは多くの業務が外部に委託されており、関与するサードパーティーの範囲は拡大し続けています。これらのパートナーシップは業務効率や競争力の向上に寄与する一方、思わぬリスクの発生源にもなり得るため、きめ細かなリスク管理が不可欠です。
サードパーティーリスクとは
サードパーティーリスクとは、外部委託先や協力会社など第三者と取引することで、自社に波及しうるリスク全般を指します。具体的には、情報漏洩やサイバー攻撃による機密情報の流出、サードパーティーが法令違反やコンプライアンス違反を行った場合の連帯責任、供給遅延や品質トラブルによる業務停止、評判リスクなど多岐にわたります。
近年ではサイバーセキュリティの脅威が増大し、外部委託先が利用しているSaaSやクラウドサービスのセキュリティ設定の不備や脆弱性が自社システムへの侵入経路となる事例が増加しており、最大のリスク要因の一つとなっています。こうしたサードパーティーリスクを見過ごすと、想定外の損失につながる危険があるため、事前の管理が極めて重要です。
サードパーティーリスクマネジメントの重要性
サードパーティーリスクマネジメントは、企業の継続的成長と安全確保のため不可欠なリスク管理手法です。
現代のビジネス環境とサードパーティーの関係
現代のビジネス環境では、外部委託や業務提携の拡大によって企業間ネットワークが複雑化しています。多くの企業はコスト削減や専門性向上を目的に、IT・物流・コールセンター・製造など幅広い業務をサードパーティーへ委託しています。
クラウドサービスやグローバル調達の普及により、国内外のさまざまな企業が自社業務に直接・間接的に関与する場面が増えました。その結果、自社のビジネスはサードパーティーの経営状況やリスクマネジメント体制にも左右されるようになり、相互依存の度合いが過去に比べて格段に高まっています。これに伴い、統合リスク管理やガバナンスの観点から、より厳格なサードパーティー管理が必要とされています。
リスクが企業に与える影響
サードパーティーのリスクが現実化すると、企業には多様な影響が及びます。
まず、情報漏洩やシステム障害などのインシデントによる経済的損失や業務停止があります。次に、委託先の法令違反やコンプライアンス違反による企業イメージの毀損や信頼性の低下も重大な問題です。さらに、サプライチェーンの中断によって重要な資材やサービスの調達が遅れる場合、最終的には顧客満足度の低下や売上減少に直結します。
このような事態を防ぐためには、事前のリスク管理や継続的なモニタリング、危機対応体制の整備が不可欠です。特にIT分野や機密情報を扱う業界では、サイバーセキュリティの強化が急務となっています。
効果的なサードパーティーリスクマネジメントの方法
効果的なサードパーティーリスクマネジメントには、明確な評価基準や継続的な管理体制の確立が不可欠です。
リスク評価方法とデューデリジェンス
サードパーティーのリスク評価では、委託先ごとに潜在リスクを洗い出し、事前に詳細なデューデリジェンスを実施することが重要です。
デューデリジェンスとは、契約前の財務・コンプライアンス・サイバーセキュリティ・ガバナンス体制などを多角的に調査・確認するプロセスです。取引の規模や業務内容に応じた評価項目を設け、現地調査や書類提出、専門部門によるヒアリングなどを組み合わせて実施します。
その結果を基に、契約条件や管理レベルを調整し、リスクの高いサードパーティーには追加の管理措置を講じる必要があります。継続的な見直しとモニタリングも不可欠です。
リスク管理フレームワークの導入
サードパーティーリスクマネジメントを体系的に運用するためには、共通のリスク管理フレームワークを導入することが有効です。
代表的なフレームワークにはISO 27001やNIST、COSOなどがあり、各企業の業務特性に合わせて活用できます。これらのフレームワークでは、リスクの特定・評価・対応・モニタリングの一連プロセスや、社内外のガバナンスとコンプライアンス体制の整備を推奨しています。
また、フレームワークの運用により、リスク評価の透明性向上や、社内外の説明責任(アカウンタビリティ)の確立が図れます。定期的な運用見直しで継続的なリスク低減が可能です。
ガバナンスとコンプライアンスの強化
サードパーティーリスクマネジメントではガバナンスとコンプライアンスの強化が極めて重要です。
信頼できる外部委託先を選定し、契約書で守るべき法規制や企業倫理、情報セキュリティ要件を明文化しましょう。さらに、定期的な監査や内部通報制度の構築、従業員へのコンプライアンス教育も重要なポイントです。違反時の対応フローや情報共有体制を整えることで、トラブル発生時にも迅速かつ適切に対応できます。
経営層やリスク管理部門が主体となり、全社的なリスク意識と統合リスク管理が根付くよう、組織文化の醸成も不可欠です。
サイバーセキュリティと法規制遵守
サイバーセキュリティ強化と法規制遵守は、サードパーティーリスクマネジメントには不可欠です。
サイバーセキュリティ要件の確立
サイバーセキュリティ対策は、サードパーティーリスクマネジメントの要となる領域です。
自社だけでなく外部委託先に対しても、厳格な情報セキュリティ要件を設定し、実施状況を定期的にチェックする必要があります。具体的には、アクセス制御や暗号化、脆弱性対応、ログ管理、セキュリティ教育の徹底などが求められます。
また、委託先に対してセキュリティ基準の順守を契約で義務付け、万が一に備えたインシデント対応計画の策定も欠かせません。第三者認証の取得(ISO 27001など)も効果的です。取引先のセキュリティ対策が甘い場合、自社にまでリスクが及ぶため、継続的なモニタリングと改善活動が重要です。
法規制への対応と遵守
法規制遵守は企業経営の信頼基盤であり、サードパーティーとの取引でも厳守が不可欠です。
外部委託先や協力企業がデータ保護法や個人情報保護法、業界ごとの規制を遵守できているか確認しましょう。取引条件書や契約書に法的義務や守るべきガイドラインを明記し、違反時の責任分担も明文化しておくことが大切です。継続的なコンプライアンス監査や社内外の教育、最新法改正へのアップデートも必要です。
これらの対策を徹底することで、法令違反による罰則リスクを防ぎ、企業の社会的信用や事業継続性を強化します。
継続的なモニタリングと改善プロセス
継続的なモニタリングと改善は、サードパーティーリスクマネジメントを成功させる鍵です。
モニタリングの重要性
モニタリングは、サードパーティーリスクの早期発見と迅速な対応を可能にする重要なプロセスです。
契約締結後も定期的に外部委託先の業務状況やサイバーセキュリティ対策、コンプライアンス状況をチェックし、異変がないかモニタリングを続けましょう。たとえば、財務状況の急変や人員交代、情報セキュリティ事故の発生など兆候があれば即座に対応策を検討します。ITツールを利用したリアルタイム監視、定期的な報告書や現地監査も効果的です。
こうした継続的なチェック体制により、重大なインシデントや損失リスクの未然防止につながります。
リスク管理の継続的改善
リスク管理は一度整備すれば終わりではなく、継続的な改善が不可欠です。
外部環境やサードパーティーの経営状況、法規制が変化すれば、新たなリスクが発生する可能性もあります。定期的なリスク評価や手順見直し、社内教育や最新ベストプラクティスの導入により、リスクコントロールの精度を高めましょう。また、インシデントが発生した場合にはPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回し、課題を分析して再発防止策へ反映させることが重要です。
これにより、企業全体のリスク耐性やガバナンス水準が着実に向上します。
サードパーティーリスクマネジメントの実践に向けて
本稿では、サードパーティーリスクマネジメントの基礎から評価手法、ガバナンスやサイバーセキュリティ、モニタリングの重要性までを解説しました。
丸紅I-DIGIOグループでは、サードパーティーリスクマネジメントを強力に支援するソリューションとして、BlueVoyant「Cyber Defense Platform」を提供しています。クラウドネイティブな統合プラットフォームにより、企業内外の脅威を検出・調査・軽減するサイバー防御機能をサービスとして提供します。主な機能は以下の通りです。
サプライチェーン防御
サプライヤー、ベンダーをはじめとするサードパーティー起因のリスクを可視化・管理し、適切に対応します。
検出と対応
エンドポイントからSIEM、クラウド環境に至るまで、セキュリティスタック全体をカバーするMXDR(Managed Extended Detection and Response)を提供します。さらにDFIR(Digital Forensics and Incident Response)を組み合わせることで、インシデント対応力を高め、内部ネットワーク防御を一層強化します。
デジタルリスク保護
ブランドなりすましやフィッシング、盗難データなど、外部に潜むサイバーリスクを検出して対処します。
プロアクティブ防御
脆弱性管理、外部攻撃対象領域管理、侵入テスト、フィッシング訓練、ダークウェブ脅威調査、構成管理などを通じ、攻撃対象領域を先回りして最適化します。
サードパーティーリスクマネジメントの強化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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