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長距離無線LANとは?基本から使用用途、選び方を解説

長距離無線LAN(Local Area Network)とは、遠隔地間での通信を迅速かつ安定して行うための技術です。工場、農業、インフラ管理、監視カメラ、大規模施設のネットワーキングなど、多岐にわたる用途で利用されており、特にIoTの分野で、その需要は増加しています。本稿では、長距離無線LANの基本知識から最新技術、具体的な使用用途、そして適切な機器の選び方まで解説します。

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長距離無線LANとは

長距離無線LANとは、大規模なエリア内で無線ネットワークを提供する技術のことを指します。この技術は、通常の家庭やオフィスで利用されるWi-Fiとは異なり、数キロメートルにわたる広範な範囲で安定した無線通信を可能にします。これにより、従来の有線通信では敷設できなかった距離やエリアをカバーすることができ、また物理的なケーブルやその維持が不要になることからコスト削減のメリットもあります。

長距離無線LANは、IEEE 802.11ah規格(Wi-Fi HaLow™)や他の特定の規格に基づいており、2.4GHz帯や5GHz帯を利用する無線通信規格に比べて周波数が低いため、障害物がある環境でも信号が回り込みしやすく、遠くまで届きやすいという特徴があります。また、この無線LAN技術は、信号強化や中継機を使用することでさらに通信距離を伸ばすことができます。

長距離無線LANの特徴

長距離無線LANは以下の特徴があります。

まず、通信距離の長さです。通常の無線LANと比較して、より遠くまで電波が届くように設計されています。これにより、広大な農地や工場、インフラ施設などでも安定した通信が可能です。

次にローカルネットワークを使用する点です。長距離無線通信規格にはWAN(Wide Area Network)のものが多く存在します。一方、LAN(Local Area Network)の場合、プライベートIPアドレスを使用し、外部インターネットと直接接続されないため、情報漏洩のリスクを低減できます。

また、通信の安定性です。長距離無線LANは強力な信号強化技術を採用しており、Wi-FiやBluetoothといった近距離無線通信と比較して干渉や障害物による通信品質の低下を最小限に抑えます。これにより、遠隔地間でも円滑なデータ通信が実現します。

これらの特徴により、長距離無線LANはさまざまな業界で利用され、効率的な通信インフラの構築に貢献しています。

長距離無線LANのメリット

長距離無線LANの最大のメリットは、広範囲にわたる通信範囲をカバーできる点です。これにより、広いエリアでの通信が安定し、遠隔地のデバイス間でも迅速なデータ通信が可能になります。たとえば、製造業や農業分野では、広範な敷地に設置されたセンサーからのデータをリアルタイムで収集することができ、効率的な業務管理に大いに役立ちます。

また、インフラ管理やエネルギー産業においても、長距離無線LANは重要な通信手段となっています。遠隔地にあるインフラ設備やエネルギープラントのモニタリングや制御が可能になり、迅速な対応が求められる場面でも情報を受け取ることができます。

さらに、監視カメラの設置や大規模施設のネットワーク構築においても、長距離無線LANは大変有効です。たとえば、大規模イベントや公共施設での監視システムの運用には、広いエリアにわたる無線通信が欠かせません。長距離無線LANを利用することで、複数の監視カメラを一元化し、効果的な監視体制を構築することができます。

このように、長距離無線LANは広範なエリアで安定した通信を確保し、遠隔地でのリアルタイムなデータのやり取りを可能にすることで、多くの業界での業務効率化や安全性の向上に大きく寄与します。

長距離無線LANの仕組み

無線通信は送信機から受信機へ電波を利用してデータを転送します。長距離無線LANでは、特に電波の到達距離を延ばすための技術と設計が重要です。

これを実現するために、いくつかの要素があります。まず、高出力の送信機や高感度の受信機、そして使う場所の環境を考慮して通信距離を伸ばします。これにより、遠く離れた地点からでも安定した通信が可能になります。また、信号を中継したり増幅する中継機を配置することもよく行われる手法です。この中継機は通信範囲内に設置され、一度受け取った信号を再送信することで、実質的な通信距離を延ばします。

さらに、使用する周波数帯も重要な要素です。たとえば、IEEE 802.11ah規格(Wi-Fi HaLow™)などの新しい技術は、従来のWi-Fi規格よりも低い920MHz帯の周波数を使用しており、障害物による信号減衰が少ないため、より長距離の通信が可能です。また、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術により、複数のアンテナを使用してデータの送受信を並行して行うことで、通信の安定性と速度を向上させています。

長距離無線LANは、これらの技術を組み合わせることで、広い範囲にわたり安定して通信を行うことができるのです。

長距離無線LANの使用用途

長距離無線LANの主な使用用途としては、製造業や農業、インフラ管理、無線機やカメラとの連携、大規模施設のネットワーク構築が挙げられます。これらの用途では、広範なエリアで安定した通信が必要とされるため、長距離無線LANの導入が効果的です。

製造業・農業・インフラ管理

長距離無線LANは、製造業分野において多くのメリットをもたらします。たとえば、工場の設備や機械に取り付けた電流センサーや温度センサーからローカルネットワークで情報を送信することで、遠隔で稼働状態や消費電力量、設備異常を把握することが可能になります。また、農業分野においては農作物の生育状況をリモートで監視するためのカメラシステムのデータ転送に利用されます。これにより、農作物の生産性向上や、水や肥料の使用効率化が図れます。また、インフラ管理においては、遠隔地にあるダムや橋の構造物監視に活用できます。リアルタイムでのデータ収集は、異常の早期発見と迅速な対応を可能にします。このように、長距離無線LANの導入により、製造業や農業、インフラ管理がより効率化し、コストやダウンタイム削減につながります。

無線機・カメラとの連携

長距離無線LANは、無線機や監視カメラなどのデバイスと連携することで、その性能を最大限に発揮します。たとえば、大規模な工場や農地、工事現場において監視カメラと連携することで、安全性の向上を図れます。無線LANを使った監視カメラシステムは、ケーブルが不要で設置が容易です。電波の干渉や距離の影響を受ける可能性もありますが、広いエリアでも安定した映像通信が行えます。また、無線機との連携により、緊急時の連絡手段としても機能します。このような連携により、業務効率化やコスト削減が期待できます。

大規模施設のネットワーク

ビルや倉庫、大規模な商業施設などでは、広範囲にわたり高品質なネットワーク接続が必要とされます。無線LANを導入することで、ケーブル敷設の手間を省き、柔軟な配置変更が可能になります。また、屋外エリアにおいても条件によっては安定した通信を提供できるため、施設全体の管理が容易になります。さらに、センサーなどのIoTデバイスとの連携により、リアルタイムでのモニタリングや自動化が進み、業務の効率化と安全性の向上が期待できます。

最新技術と規格

長距離無線LANの最新技術と規格は日々進化しています。ここでは、特に注目される技術と規格について解説します。また、各技術の利点と導入にあたっての留意点も併せて紹介します。

IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow™)

IEEE 802.11ah、通称Wi-Fi HaLow™は、従来のWi-Fi技術とは異なり、920MHz帯の低周波数帯を使用している無線通信規格で、2022年の法改正により日本国内での利用が開始されました。1GHz未満の周波数帯域を使用することで、最大1kmもの長距離通信を実現し、たとえば、通常のWi-Fiではカバーしきれない広範な農業地帯やインフラ施設でも安定した通信が期待できる、IoT分野で注目されている通信規格です。

IEEE 802.11ahには以下のような特長があります。

1.フルオープン・デファクトスタンダードのIP通信対応

IEEE 802.11ah はWi-Fiと同じIPフレームを使用しているため、汎用的な通信が可能です。これによってIoTデバイスなどで一般的に使用されているTCP/IPなどのオープンな通信規格を簡単に無線化することができます。他の無線通信規格では独自のプロトコルを使用しているものがあり、利用時にプロトコル変換をしないといけないケースがあります。しかし、IEEE 802.11ahは不要で、従来のWi-Fiと同じ仕組みで運用できることから仕組みが理解しやすく、導入のハードルが比較的低いといえます。IPカメラとの親和性が高い点もメリットの一つです。

2.数Mbpsのスループット

従来、長距離の無線通信で使用されているLPWA(Low Power Wide Area)では、低い頻度で容量の小さいデータ通信を目的にしていたため、通信速度が遅く、大容量のデータ通 信には適していませんでした。しかし、IEEE 802.11ahでは数Mbpsのスループットを実現し ており、画像や映像の伝送も可能です。

3.免許不要で利用可能なアンライセンスバンド

IoT向けの規格としては、携帯電話事業者などが主に提供するライセンスバンドを用いる規格と、免許不要の帯域を用いるアンライセンスバンドを用いる規格がありますが、802.11ahはアンライセンスバンドを用いる規格です。そのため、特別な免許や専用サーバが不要で、従来のWi-Fiと同様、自由に導入ができます。

4.デバイス接続

IEEE 802.11ahは高い接続密度を誇り、一度に多くののデバイスを接続することができます。この特性は、都市部や工業地帯で大量のIoTデバイスを運用する際にも特に有用です。

4.9GHz帯無線LAN

4.9GHz帯は、2.4GHzや5GHz帯に比べて干渉が少なく、通信の安定性が高いことが特徴です。これにより、地震や台風などの災害時にも確実な通信を提供できます。

また、この帯域は専用のライセンスが必要なため、不特定多数が利用することが少なく、セキュリティ面でも優れていると考えられます。このため、たとえば警察や消防といった公共機関による運用が一般的です。

4.9GHz帯無線LANの他の特徴として、ビデオ監視のような高データレートを必要とするアプリケーションにも対応できる点が挙げられます。映像データのリアルタイム伝送が求められる現場で、その高い信頼性は多くのシステム管理者に支持されています。

長距離到達性を重視した2.4GHz/5GHzの無線LAN

長距離到達性を重視した2.4GHzおよび5GHzの無線LANもまた、多くの用途で利用されています。2.4GHz帯は障害物に対する透過性が高く、建物内外問わず広範囲に電波が届きやすいです。ただし、他の電子機器との干渉が発生しやすいため、チャンネル設定には注意が必要です。

5GHz帯は帯域幅が広く、2.4GHz帯に比べて高速なデータ伝送が可能です。特に、工場や大規模施設など、多くのデバイスが同時にアクセスする環境でその真価を発揮します。これにより、高データレートが要求されるアプリケーションでも安定した通信が保たれます。

長距離到達性を高めるためには、適切なアクセスポイントや中継機器の配置が重要です。最近ではビームフォーミング技術を使用して、特定の方向に向けて信号を送信することで、通信距離をさらに延ばすことが可能となっています。これらの技術を駆使することで、2.4GHzおよび5GHzの無線LANは広範なエリアでの安定したネットワーク構築に貢献します。

長距離無線LANの選び方

長距離無線LANの選定には、使用環境や必要な通信性能に応じたポイントを押さえることが重要です。

通信距離と通信速度

長距離無線LANを選ぶ際には、通信距離と通信速度が重要なパラメータです。通信距離は、接続するデバイス間の最大距離を示しており、一般的に周波数が低い通信規格が長距離通信に向いています。一方、通信速度はデータの転送速度を示し、一般的に周波数が高いほうが高速な通信を提供します。使用目的によって、この二つのバランスを考えるとよいでしょう。たとえば、広い工場や農地での監視カメラの設置には通信距離が重視される一方、大規模な施設内での高速通信には通信速度が優先される場合があります。

耐環境性とセキュリティ

屋外での使用が多い長距離無線LANは、耐環境性が非常に重要です。機器は雨風や温度変化に耐えられる防水・防塵性能を持っていることが求められます。特に農業やインフラ管理のように過酷な条件下で使用される場合には、IP65やIP67等の防水・防塵性能が推奨されます。また、セキュリティについても配慮が必要であり、不正アクセスやデータの盗聴を防ぐためにWPA3等の最新のセキュリティプロトコルに対応している機器を選ぶことが推奨されます。その他にも、物理的な機器の保護措置や、アクセス制限設定を行うことで、通信の信頼性と安全性を高めることができます。

活用事例

長距離無線LANの導入による具体的な活用事例を紹介します。各業界での活用方法と効果について詳しく解説します。

工場でのIoT化によるリモート監視

長距離無線LANは、工場におけるリモート監視システムにおいても重要な役割を担っています。広範な敷地を持つ工場では、LANケーブル等の配線敷設が困難な場合が多く、無線通信が効果的です。電流や温度などのIoTセンサーと無線LANを用いることで、工場の環境によりますが、工場内外の各種機器と中継機がリンクし、リアルタイムなデータの伝送が可能になります。その結果、機器の稼働状況や生産ラインの監視を建屋同士が離れた場所からでも遠隔で容易に行えるようになり、業務効率化を図ることができます。また、監視カメラを連携させることで、ユーティリティ設備などの異常の早期発見や保守作業の効率向上が図れます。さらに、最新のIEEE 802.11ahなどを導入することで、通信の安定性と到達距離の向上が期待でき、工場全体のセキュリティと管理が強化されます。このように、工場における長距離無線LANの導入は、リモート監視機能の向上と業務効率化に大いに貢献します。

農業での効率化

長距離無線LANは、農業分野において大きな役割を果たしています。広大な農地において、Wi-Fiや中継機を用いることで、通信環境を大幅に改善できます。具体的には、遠隔地からのリアルタイムなデータ収集や、ドローンを使った空撮画像の迅速な伝送が可能となります。これにより、作物の状態を常にモニタリングでき、病害虫の早期発見や適切な施肥が実現します。また、IoT技術と組み合わせることで、自動灌漑システムや温度・湿度管理が可能となり、働き手の負担を軽減すると同時に、収量を最大化することができるのです。このように、長距離無線LANの導入は、農業の効率化と持続可能な経営の実現に大いに貢献しています。

Wi-Fi HaLow™対応のマルチゲートウェイ「SurfGate2」

丸紅情報システムズが提供するIoTマルチゲートウェイ「SurfGate2」は、Wi-Fi HaLow™に対応した長距離無線LANソリューションとして注目を浴びています。これにより、屋外見通しで最大約1kmもの広範囲なエリアで安定した無線通信を確保することが可能になり、遠隔地間のセンサー情報やカメラ映像などのさまざまな通信を円滑に行えるようになります。

「SurfGate2」は、LTE、2.4GHz WiFiやEthernetによる通信はもちろん、RS485接続によるシリアル通信の他、EnOceanやLoRaWAN、Modbus RTU、Modbus TCP、I/O、WLAN映像伝送などさまざまな手法で通信が可能です。さらに、ノンプログラミングで設定が可能なWebUIも有し、従来のIoTゲートウェイと比較してスムーズな導入を実現します。

「SurfGate2」をご利用いただくことで、さまざまな規格でバラバラに取得していたセンサーデータの一元収集やシステム構成のシンプル化が可能となります。 また、集約したセンサーデータやIPカメラの映像を、施設内の管理棟など離れた場所へ、Wi-Fi HaLow™によるローカルネットワークで送信することができます。 さらに標準的なTCP/IP通信対応により、従来変換に手間を要していたバイナリデータを特別な処理不要で既存サーバやシステムに連携することが可能となります。

総じて、「SurfGate2」は長距離無線LANの導入を検討する多くのユーザーにとって、最適なソリューションといえます。

SurfGate2 お役立ち資料

SurfGate2の紹介資料をダウンロードいただけます。

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