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LPWAとは?特徴と仕組みや活用例を解説

IoT技術の急速な進展に伴い、低消費電力広域通信(LPWA)ネットワークが注目されています。LPWAは、広範なエリアで通信を可能にしつつ、消費電力を抑える技術です。これにより、IoTデバイスは長距離にわたって安定した通信を維持できます。本稿では、LPWA技術の概要、特徴、仕組み、および具体的な活用例について詳細に解説します。

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LPWAとは

LPWA(Low Power Wide Area)とは、低消費電力で長距離通信を可能にするネットワーク技術のことを指します。特にIoTデバイス向けに設計されており、大規模な通信インフラを必要とせずに広域接続を実現します。LPWAは、セルラーとノンセルラーの2つの主要なカテゴリーに分類され、主な規格にはLoRaWAN、Sigfox、NB-IoT、LTE-Mなどがあります。この技術は、スマートメーター、物流管理、農業モニタリングなど、多様な分野におけるデータの効率的な収集と管理に役立ちます。低消費電力により、デバイスのバッテリー寿命を延長し、コスト効率を向上させます。

LPWAの特徴

LPWAの主な特徴として、低消費電力、長距離通信、低通信速度が挙げられます。これらの特性により、LPWAはIoTデバイスに最適な通信技術として広く利用されています。

低消費電力

LPWAは、低消費電力であることが大きな特徴の一つです。これにより、デバイスを長期間にわたって運用することが可能です。IoTデバイスにとってバッテリー寿命は非常に重要であり、たとえばスマートメーターや環境センサーのように、頻繁に充電やバッテリー交換ができない場所に設置されるケースでは、低消費電力の技術が不可欠です。LoRaWANやSigfoxなどのLPWA技術は、数年間バッテリー交換が不要な設計を実現できます。また、電力消費を最小限に抑えるためのさまざまな省電力モードも提供しており、これにより運用コストの削減も期待できます。

長距離通信

LPWA技術は長距離通信が可能な点も大きな特徴です。Wi-FiやBluetoothの通信距離が数十メートルから数百メートル程度であるのに対し、LPWAは数キロメートルから数十キロメートルの範囲で通信できます。これにより、広範囲のデバイスのモニタリングやデータ収集が容易になります。たとえば、農場全体の環境データを一元管理する場合でも、LPWA技術を使えば遠隔地からデータを送信でき、農業の効率化や管理精度の向上につながります。

低速度

LPWAは低速度でデータ通信を行います。高速通信が必要な用途には適していませんが、IoTデバイスが扱うデータ量は少ないため、低速度でも十分です。たとえば、環境センサーが温度や湿度などのデータを定期的に送信する場合や、スマートメーターがエネルギー使用量を送信する場合には問題ありません。通信速度が低いことで電力消費も抑えられ、LPWAの低消費電力特性と連動しています。これによりバッテリー寿命が延び、メンテナンスの頻度も減ります。

LPWAの仕組み

LPWAの仕組みは大きく2つに分けられます。以下で解説します。

セルラー系LPWA

セルラー系LPWAは、携帯電話ネットワークを利用することで広いカバーエリアを実現します。代表的な技術にはNB-IoTやLTE-Mがあり、高い信頼性とセキュリティを備えています。都市部や郊外でも安定した接続が可能で、既存の携帯電話インフラを活用できるため、初期投資を抑えられる点も利点です。一方、データ速度が低いため、大量のデータを頻繁に送信する用途には向いていません。

ノンセルラー系LPWA

ノンセルラー系LPWAは、携帯電話ネットワークではなく独自の通信ネットワークを利用します。代表的な技術にはLoRaWANやSigfoxがあります。これらは遠隔地やインフラが整っていない地域でも利用でき、非常に低い消費電力で長期間の稼働が可能です。ただし、セルラー系と比べて通信エリアが限定される場合があり、都市部や人口密集地での利用には制約が生じることがあります。また、一部のノンセルラー系LPWAは独自のネットワーク構築が必要なため、初期導入コストが高くなる場合があります。

LPWAの規格一覧

LPWAには複数の通信規格があり、それぞれ異なる特性を持っています。代表的なものとして、LoRaWAN、Wi-Fi HaLow、Sigfox、NB-IoT、LTE-Mが挙げられます。

LoRaWAN

LoRaWANは、Low Power Wide Area Networkの略で、地下や建物内などの厳しい環境下でも安定した通信が可能です。長距離通信と低消費電力が主な特徴です。免許不要の周波数帯を利用するため、導入コストを抑えやすく、シンプルなネットワーク構築ができます。農業分野の土壌モニタリングや物流業界の在庫管理など、幅広い分野で活用されています。また、柔軟性が高く、さまざまなIoTデバイスと容易に連携できます。企業のIT担当者や通信システムの研究者にとって、LoRaWANの導入は多くのメリットがあります。

Wi-Fi HaLow

Wi-Fi HaLowは、IEEE 802.11ahに基づくLPWA規格で、最大約1kmの長距離通信と省電力性を両立した通信技術です。他のLPWA規格と比べてスループットが高く、数Mbpsレベルのデータ通信が可能なため、センサーデータだけでなく画像や動画など大容量データにも対応します。また、従来のWi-Fi(5GHzや2.4GHz帯)とは異なり、920MHz帯を使用することで障害物に強く、安定した通信が実現します。IPベースの通信規格であるため、既存のWi-Fiインフラとの親和性が高く、ネットワーク統合やセキュリティ面でも優れています。産業用途で多数のIoTデバイスを効率的に接続できる点が大きなメリットです。

Sigfox

Sigfoxはフランス発のLPWA技術で、低消費電力と低コストを重視しています。非常に低速度の通信を行うため、頻繁なデータ送信が不要なIoTデバイスに適しています。通信範囲が広く、ビル内や市街地でも利用できます。物流管理や設備管理など、業務の効率化に役立つ事例が多くあります。Sigfoxを利用することで電池寿命が延び、メンテナンスコストも削減できるため、多くの企業が導入を検討しています。

NB-IoT

NB-IoTは、Narrowband IoTの略で、3GPP(Third Generation Partnership Project)によって標準化された技術です。既存のLTEネットワークを利用し、低消費電力で広範囲の通信が可能です。スマートメーターや環境センサーなど、定期的に細かなデータを送信する用途に適しています。NB-IoTの主なメリットは、高い通信セキュリティと既存ネットワークインフラの活用が可能な点です。企業のIT担当者や通信システムの研究者からも注目されています。

LTE-M

LTE-Mは、LTE Cat-M1とも呼ばれる、LTE技術を基にしたLPWAの通信規格です。低消費電力で効率的な通信を実現し、VoLTE(Voice over LTE)による音声通信もサポートします。これにより、機器の遠隔操作やリアルタイムモニタリングなど、多様なIoTアプリケーションに対応できます。農業モニタリング、物流管理、スマートシティ構築など、幅広い分野で活用が進んでいます。LTE-Mの導入により、企業の運用効率向上やコスト削減が期待されます。

LPWAの活用例

LPWAはさまざまな分野で活用されています。ここでは、特に注目される3つの例について解説します。

工場

製造現場では、生産設備の稼働状況や異常検知、環境データの取得など、さまざまなセンサー情報をリアルタイムで収集するニーズが高まっています。LPWAを活用することで、無線による長距離通信が可能となり、広い工場内や離れた建屋間でもセンサーやカメラの設置場所に柔軟に対応できます。配線工事が不要なため、導入コストの削減やレイアウト変更時の手間も軽減されます。さらに、省電力性が高いため、電源確保が難しい場所でも長期間の稼働が可能です。これにより、設備の状態監視や予防保全が容易になり、ダウンタイムの削減や生産性の向上に貢献します。

スマートメーター

スマートメーターには、LPWA技術を活用したものがあります。LPWAを利用することで、家庭やオフィスのエネルギー消費をリアルタイムで監視・管理できます。従来のメーターと比べて、LPWA対応のスマートメーターはデータを正確に収集・送信し、遠隔での監視や制御が容易になります。たとえば、電力会社はLPWA技術を導入することで、効率的な需給調整が可能になります。また、消費者にもリアルタイムの消費情報を提供できるため、無駄なエネルギー消費の削減や省エネ意識の向上が期待されます。LPWA技術を活用したスマートメーターは、エネルギー管理の高度化と持続可能な社会の実現に貢献する重要なツールです。

物流管理

物流管理では、LPWA技術がトラックやコンテナの位置情報のリアルタイム追跡に活用されています。これにより、配送計画の最適化や輸送中の商品の状態監視が可能になります。たとえば、冷凍食品の配送では、温度センサーとLPWAを組み合わせることで温度変化を正確に把握し、品質維持に役立ちます。また、在庫管理にも応用されており、倉庫内の商品の流動性向上や効率的な在庫管理が実現できます。LPWA技術の導入によって、物流業務の効率化やコスト削減が期待されます。

インフラ設備の監視

橋梁、道路、ダム、トンネルなどの社会インフラでは、老朽化対策や災害リスク管理のため、センサーによる常時監視のニーズが高まっています。LPWAは低消費電力で長距離通信が可能なため、電源や通信インフラが整っていない場所でもセンサー設置が容易です。これにより、定期点検に頼らず継続的なモニタリングが実現できます。たとえば、振動、傾き、水位、ひび割れなどのデータを遠隔で取得し、異常の兆候を早期に察知することで、事故や災害の未然防止に役立ちます。また、設置や運用コストが低いため、多拠点への展開も容易であり、社会インフラのスマート化を支える基盤技術となっています。

農業モニタリング

農業モニタリングでは、LPWA技術が作物の生育状況や環境データのリアルタイム収集に活用されています。LPWA対応センサーは低消費電力で広い範囲をカバーできるため、効率的に広域のデータを集めることが可能です。たとえば、土壌の湿度や温度、気象情報などを常時監視でき、作物の状態を最適化し、精密農業の実現を支えます。また、生育状況に応じた灌漑のタイミングや肥料の使用量を適切に管理することで、生産性の向上と資源の節約にもつながります。このように、LPWA技術は農業の効率化とスマート化に大きく貢献しています。

導入のメリットとデメリット

LPWA(Low Power Wide Area)には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。メリットとしては、まず低消費電力が挙げられます。これによりバッテリー寿命が延び、デバイスのメンテナンス頻度が減少します。また、長距離通信が可能なため、広範囲でのデータ収集やモニタリングが容易です。さらに、低コストで運用でき、初期投資や維持費も比較的安価です。

一方、デメリットとしては通信速度が遅い点が挙げられます。そのため、大量のデータをリアルタイムで処理する用途には適していません。また、一部地域ではLPWAの通信インフラが未整備のため、導入に時間やコストがかかる場合があります。これらを踏まえ、LPWAの導入にあたっては、用途や環境を考慮し、メリットとデメリットを総合的に評価することが重要です。

LPWAの未来と技術動向

低消費電力で長距離通信を実現するLPWAは、IoTの普及とともにその重要性が高まっています。今後、技術の進化により、より効率的で低コストな通信が期待されます。たとえば、LoRaWANやSigfoxなどのLPWA規格では、通信範囲や速度の向上、セキュリティ強化などの改良が進められています。また、5GやLTE-Mなどの新しい技術と連携することで、さらに広い範囲での利用が可能となり、業界全体に革新をもたらすでしょう。環境モニタリングやスマートシティ構築など、応用分野も拡大しています。こうした進展は、IoT製品開発者や企業のIT担当者にとって新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。

Wi-Fi HaLow対応のIoTゲートウェイ「SurfGate2」でDXを実現

IoT技術の進化に伴い、企業は効率的な経営や競争力強化を目指してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。このような背景の中、マルチIoTゲートウェイ「SurfGate2」が注目されています。SurfGate2は、最大見通し距離1kmの長距離無線LAN通信を実現するWi-Fi HaLowを採用し、多数のIoTデバイスやIPカメラと容易に接続できるゲートウェイです。また、Ethernet、RS485、I/Oなど多様なインターフェースを備え、Modbusなどのプロトコルにも対応しています。センサーデータの収集、PLCとの連携、カメラ映像の伝送による状態監視など、さまざまな用途で活用が進んでいます。SurfGate2の導入により、企業は運用効率の向上やコスト削減を実現し、業務のデジタル化を加速できます。

SurfGate2 お役立ち資料

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