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生成AIの効果的な活用により、高品質で継続可能なKCSを実現

昨今、コンタクトセンターやカスタマーサポートなどにおいて、生成AIを活用したKCSの構築に取り組む企業が増えている。ナレッジ管理のグローバルスタンダードである「KCS(ナレッジ・センター・サービス)」は、米国の大企業を含め世界的に採用されているナレッジ管理の手法であり、顧客対応のプロセスの中でナレッジを作成・更新していこうという考え方である。

日本でも、導入に積極的な企業が増えているのだが、一方で、その円滑な導入・運用を阻む大きな障壁のひとつが「ナレッジの質」である。質の低いデータを基にしたAIは、事実とは異なる回答を生成する「ハルシネーション」を引き起こし、場合によっては顧客体験を損なうリスクを内包する。

そうした中で、高品質で継続性のあるKCSを実現するためのツールとして注目されているのが、顧客対応プロセスから自動で高品質なナレッジを生成するソリューション「Omnis(オムニス)」である。本稿では、KCSの効率的な構築・運用の要諦と、Omnisによって実現できる次世代型ともいえるナレッジ管理のポイントについて、丸紅I-DIGIOグループ 流通・産業ソリューションセグメント エンタープライズソリューション事業本部 営業第一部 クラウド推進課 岡本 隼に詳しく聞いた。

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次世代型のナレッジ管理「KCS」の重要性

――近年、コンタクトセンター、カスタマーサポートなどで導入が進んでいるKCSについてお教えください。

岡本 KCSとは、Knowledge-Centered Serviceを略したもので、ひと言でいうと、コンタクトセンターなどにおけるナレッジ管理の進化系フレームワークとでもいうべきものです。

従来、コンタクトセンターなどで実施されてきたナレッジ管理は、顧客対応が済んだ後に、オペレーターがFAQなどを作成するというのが一般的でした。しかしKCSでは、顧客対応のプロセスそのものにナレッジの作成・更新を組み込むという考え方での取組みとなります。オペレーターは、顧客からの問合せ等に際して、蓄積されたナレッジから適切な回答内容を探し、それを活用して回答し、もし当該の内容が古くて適切ではないという場合には、その場で新たなナレッジの作成または更新作業を行います。こうしたプロセスを顧客対応業務そのものに組み込むことで、常に最新にして適切な回答をナレッジとして蓄積・更新していくことが可能になります。

近年、KCSが注目され、導入を推進するコンタクトセンターなどが増えている背景には、深刻な人材不足や、オペレーターのスキルの属人化によるサービス(回答)内容のバラツキという問題があります。KCSをしっかりと導入し、活用することができれば、属人化していたナレッジが組織全体の共有財産となり、かつ陳腐化を防ぎ、サービスの質的向上と業務効率の大幅な改善が見込めるようになります。そして昨今では、生成AIを活用することで、KCSの構築そのものを効率化できるようになっています。

生成AI活用に潜むGarbage In, Garbage Outという課題

――昨今、多くのコンタクトセンターで生成AIの導入が進んでいるようですが、一方で、期待されたほどの成果が出ていないという声も聞きます。現状の課題はどこにあるのでしょうか。

岡本 生成AI自体は非常に優秀なテクノロジーですが、それをどう活用するかという点において、多くの企業が順番を間違えてしまっているのが現状です。多くの現場では、まずお客様とのフロント接点にチャットボットやボイスボットを置き、そこで生成AIに回答させようとします。しかし、AIが回答の根拠とする社内のドキュメントやナレッジが整備されていなかったり、内容が古かったり、あるいは低品質な状態であれば、AIは無理に答えをひねり出そうとして事実とは異なる「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」を引き起こします。

コンタクトセンターなどにおいて、このハルシネーションは致命的です。誤った情報を顧客に提供すれば、クレームに繋がるだけでなく、企業の信頼を失墜させかねません。つまり、生成AIを真に活用するためには、その基となるナレッジの質をいかに高め、鮮度を維持し続けるかという、地味ながらも本質的な課題に向き合う必要があるのです。いわゆる「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れたらゴミが出てくる)」の状態をどう脱却するかが、KCSの効果的な導入・活用における最大の壁となっています。

顧客対応プロセスそのものを「ナレッジ」に変える思考法

――実際に、KCSの導入・活用を効率的に推進していくにはどうすればいいのでしょうか。

岡本 KCSは、顧客対応のプロセスの中で、ナレッジを作成・更新・管理していくという非常に合理的で効率的な方法です。しかし、これを現場のオペレーターに徹底させるのは非常に困難が伴います。なぜなら、従来のプロセスでは、多くの場合、オペレーターは電話対応が終わった後に、アフターコールワークという形で、ナレッジ作成を行っており、その業務自体が高い負荷のかかるものでした。

また、オペレーターにとって、0から1の文章を書き起こすのは心理的にも時間的にも大きなハードルです。さらには、人によって文章の質にバラつきが出ますし、忙しい時間帯にはどうしても後回しにされ、結果的に質の低い、あるいは古いナレッジが放置されることになりがちです。多くの企業がKCSの考え方には賛同しながらも、継続的なナレッジ作成の段階で挫折してしまうのは、こうしたオペレーターへの過度な負荷が解消されていないからだといっても過言ではないでしょう。KCSを形骸化させないためには、現場の負担を限りなくゼロに近づけつつ、ナレッジの質を均一化する仕組みが必要不可欠なのです。

Google Cloud × Omnisにより、最先端AIでナレッジ運用を自動化する

――そこで丸紅I-DIGIOが提案しているのが、Omnisですね。このソリューションは、具体的にどのようにKCSのプロセスを変えるのでしょうか。

岡本 Omnisは、コンタクトセンターの顧客対応を一元管理するプラットフォームですが、Google Cloudの高度な生成AI(LLM)を統合することで、ナレッジ運用のサイクルを劇的に自動化します。最大の特徴は、オペレーターが対応を終えた瞬間に現れます。通話を終了した後、Omnis上のAIボタンをワンクリックするだけで、通話内容のテキスト化データに基づき、生成AIが瞬時にナレッジの原案を作成します。この原案には、問い合わせの要約、具体的な解決策、さらには検索性を高めるための適切なタグ付けまでが含まれます。

オペレーターは、0から文章を作る必要はありません。AIが生成した高品質なドラフト(下書き)を確認し、必要に応じて修正を加えることで、精度の高い、高品質のナレッジを作り出すことができます。つまり、オペレーターの役割は「作成者」から、内容をブラッシュアップする「監修者(磨き手)」へと変わるのです。

Omnisが持つこの仕組みにより、ナレッジ作成のハードルは大きく下がり、対応の鮮度が失われないうちに高品質なナレッジがシステムに蓄積されていくことになります。これこそが、次世代型のナレッジ運用だといえるのではないでしょうか。

テクノロジーだけではない、「People・Process」を含めた三位一体改革の重要性

――Omnisという強力なツールがあれば、KCSは必ず成功すると言えるのでしょうか。それとも、他にも必要な要素があるのでしょうか。

岡本 非常に重要なポイントですが、システムを導入するだけでKCSが成功することはありません。私たちは、テクノロジー(Technology)、人(People)、プロセス(Process)の三位一体の改革が必要だと考えています。

例えば、どんなに優れたAIが原案を作っても、それを確認するオペレーター側に「なぜナレッジを蓄積することが自分たちの業務を楽にするのか」というマインドセットがなければ、運用は定着しません。また、作成されたナレッジをどのような基準で評価し、組織全体で共有していくかという明確なプロセスも必要です。

丸紅I-DIGIOグループでは、KCSの最上位資格である「KCS Principles」の有資格者が多数在籍しています。30年以上にわたるコンタクトセンター向けビジネスの知見を活かしつつ、単なるツールの提供だけでなく、研修を通じた人の意識変革や、組織の評価指標(KPI)の再設計といったプロセス改善までをトータルでサポートすることが可能です。

テクノロジーはあくまで強力なレバレッジであり、それを使いこなすための組織文化とルールを並行して構築することが重要です。これこそが、KCSを成功に導くためのキー・ファクターだと考えています。

ナレッジを活かす組織になるために、まずはアセスメントで現状を可視化する

――最後に、これからKCSの導入や生成AIの活用を検討している企業に向けて、まず何から始めるべきかアドバイスをお願いします。

岡本 まずは、自社のナレッジ運用の現状を正しく把握すること、つまり「アセスメント」から始めることを強くお勧めします。現状、どのようなプロセスで情報がやり取りされ、どこにボトルネックがあるのか、既存のナレッジの品質はどの程度なのか。これらを可視化しないままツールを導入しても、期待した成果は得られません。

私たちは、コンタクトセンターの現状評価を行うアセスメントサービスを提供しており、組織の課題を明確にしたうえで、最適なOmnisの活用方法をご提案しています。まずは相談ベースで、現状の課題をぶつけていただきたいと考えています。

生成AIのポテンシャルを最大限に引き出し、ハルシネーションのない顧客対応を実現するためには、高品質なナレッジの自動構築は避けては通れないステップです。Omnisと私たちの伴走支援を通じて、コンタクトセンターを単なる「コストセンター」から、企業の貴重な知財が蓄積され続ける「バリュードライバー」へと進化させる。そのお手伝いができることを願っています。

また現在、より多くの企業にこの価値を体験いただくため、Omnisの新規導入における初期費用を無料とするキャンペーンを実施しています。本年6月末までにお申し込みいただけると、Omnisの新規導入における初期費用が無料となります。

――生成AIは優れた技術だが、低品質なデータに基づけばハルシネーションを招き、顧客の信頼を損なうリスクがある。KCSはナレッジ管理の理想的な手法だが、ナレッジ作成の負荷が現場への導入を阻む壁となっていた。

そうした環境の中、Omnisは通話内容からナレッジ原案を自動生成することでこの負荷を劇的に軽減し、オペレーターを「作成者」から「監修者」へと変革させる。しかし、真の成功にはテクノロジーだけでなく、人とプロセスを含めた三位一体の改革が不可欠である。組織全体でナレッジを資産として捉え、評価指標を再設計する文化醸成が求められる。

コンタクトセンターやカスタマーセンターなどの顧客接点について、まずは現状のアセスメントを通じて課題を可視化し、テクノロジーと組織変革を両立させることが、次世代型KCSの定着と活用には不可欠だといえるであろう。

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岡本 隼
丸紅I-DIGIOグループ 流通・産業ソリューションセグメント
エンタープライズソリューション事業本部 営業第一部 クラウド推進課
※所属・職名等は記事公開当時のものです。