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ニデックモビリティ株式会社様

作業工数を大幅に削減。ATOS Qで実現した計測業務の劇的効率化

電動化・自動化・コネクテッド化などの進展により、自動車産業は「100年に一度の大変革期」を迎えているといわれる。そうした中で、車載部品メーカーに求められる品質管理の精度とスピードはこれまでになく高まっている。製品形状の複雑化や部品の大型化、厳格化する納期など要求レベルは年々上がり続けている。

独立系の車載電装部品メーカーとしてグローバルに事業を展開するニデックモビリティ株式会社では、こうした課題の解決策として、10年以上前から3D計測ソリューションを活用してきた。

本稿では、同社が新たに導入した高性能3D計測装置「ATOS Q」がもたらした成果と、10年来のパートナーである丸紅I-DIGIOのサポート体制などについて、ニデックモビリティ株式会社 品質統括部 品質管理部 品質管理1グループ 清水 聖志氏に伺った。

  • 製品の大型化などにより、3D計測の工数が増え、作業の手間をいかに削減するかが課題になっていた
  • 旧型の計測器では作業に手間がかかる分、計測にかかる時間も膨大になり、計測時間の短縮が喫緊の課題になっていた

多様な車載電装部品の開発・製造・販売をグローバルに展開

――御社の事業概要と、現在注力されている業務内容について詳しく教えてください。

清水氏 当社は、自動車の「走る・曲がる・止まる」に加え、昨今のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に対応するための重要な電子制御・ボディ制御ユニットの開発・製造・販売を手掛けています。

歴史をさかのぼると、もともとはオムロン株式会社の車載事業部門からスタートし、2019年にニデックグループの一員となりました。当社の最大の特徴は、特定の自動車メーカーの系列に属さない「完全独立系」の部品メーカーであることです。これにより、世界中のあらゆる自動車メーカー様に対して、自由度の高い提案と最先端の技術を提供しています。

製造している製品は非常に多岐にわたります。運転席まわりのパワーウィンドウスイッチなどのインターフェース部品から、車体の高度な制御を担うECU(電子制御ユニット)、さらには夜間の走行安全を支えるオートライト用の日照センサーといった精密センサー類までカバーしています。近年では電動化の流れを受け、電動パワーステアリング(EPS)用制御ユニットや、電気自動車(EV)に不可欠なDC-DCコンバーターといった電源系ユニットの重要性が増しており、製造・品質管理の両面で、より高い精度が求められるようになっています。

製品形状の複雑化や大型化で、従来型の3D計測では作業負担が増大

――今回、最新の3D計測装置である「ATOS Q」を導入されました。その背景にはどのような現場の課題があったのでしょうか。

清水氏 当社では10数年ほど前から、3D計測を導入していました。当時はまだ3Dスキャンの黎明期に近い状態でしたが、ATOSの旧モデルである「Compact Scan」を導入しました。それまでの計測は、ノギスやマイクロメーター、三次元測定機による「点」や「線」の寸法測定が主流でした。しかし、自動車部品の形状が複雑化するにつれ、図面で指示された箇所の数値だけでは、製品全体の歪みや微妙な曲面の変化を捉えきれなくなっていたのです。

そこで、製品全体を「面」で捉え、CADデータと重ね合わせることで、スムーズに形状の良否を判断できる3D計測を導入しました。10年以上にわたり、このCompact Scanは当社の品質を支える大黒柱として活躍してくれましたが、近年の製品トレンドの変化により、いくつかの限界も見えてきました。

最大の課題は「部品の大型化」とそれに伴う「膨大な測定工数」です。最近では、車体の構造に関わる40cmクラスの部品などの計測ニーズが増えています。旧型のCompact Scanでは、一度にスキャンできる範囲が限定的だったため、大型部品の計測時には非常に手間がかかっていました。大型部品を旧型機で計測しようとすると、部品をワーク上で何度も手で動かし、角度を変えながらスキャンを繰り返す必要があります。一回のスキャンが終わるたびに位置合わせを行い、エラーが出れば撮り直しです。こうした一連の作業を丁寧に行うと、1つの製品を完璧に取り込むだけで3~4時間かかってしまうこともありました。

開発スピードが加速する現在の状況において、これは非常に大きなボトルネックです。作業工数の削減と、作業時間の短縮は喫緊の課題になっていました。

ATOS Qが他社製品を圧倒した測定精度と信頼性と拡張性

――導入にあたり、他社の製品との比較検討も行われたと伺っています。最終的に「ATOS Q」を選定された決め手は何だったのでしょうか。

清水氏 当然ながら他社の最新鋭スキャナーとも徹底的な比較検討を行いました。そのうえで、ATOS Qを選んだ理由は主に3つのポイントに集約されます。

第一の理由は、圧倒的な「測定精度と信頼性」です。当社の製品は精密機器ですので、測定データの信頼性がすべてと言っても過言ではありません。ATOS Qを導入する前に実機を用いた検証を行いましたが、ATOS Qは±0.02mm(20ミクロン)程度という極めて微細な誤差範囲内で安定してデータを取り込むことができました。他社製品と比べても、この精度の高さは際立っていました。特に重要視したのは、その高い精度が「表面・裏面を含めた全体形状」に対しても一貫して確保されている点です。他社製品では、表面と裏面をそれぞれデータ化しても、それらを正確に合成することができず、全体形状の検査には性能として不十分と判断しました。一方、ATOS Qはソフトウェアの高性能な合成アルゴリズムにより、表裏のデータをズレなく正確に合成できました。「完全な全体形状データ」として、厚みや円筒形状などの検査にも幅広く活用可能です。表裏の合成に煩雑な調整必要なく、全て自動で実施されます。誰でも安定して高精度な全体形状を計測できる信頼性は、ATOS Q ならではの大きな強みだと考えています。

第二の理由は、将来を見据えた「拡張性」です。ATOS Qは、レンズ交換によって計測範囲と解像度を柔軟に変更できます。現在は大型部品の効率的な計測を主眼に置いていますが、将来的にさらに微細なコネクター端子などを高精度に計測したい場合、レンズを追加購入するだけで対応可能です。また、ソフトウェア面での優位性も大きかったですね。解析ソフトは、無償版であっても非常に高度な解析が可能で、インターネットからダウンロードすれば、品質管理部門だけでなく設計や製造現場のPCでも、スキャンした3Dデータを詳細に確認・共有できます。こうした点もATOS Qの強みだと感じました。

第三の理由は、旧型機での「成功体験」です。先代のCompact Scanは10年以上、文字通りノントラブルで稼働し続けました。これはもう、精密機器としては驚異的な耐久性だといえると思います。こうした実績もあり、検証した結果としての精度の高さや使い勝手の良さなどもあり、「次世代機もATOSで行こう」と判断しました。

ATOS Q導入により、大幅な工数削減・時間短縮を実現

――実際にATOS Qを導入されてから約3ヶ月が経過しましたが、どのような具体的な成果が出ていますか。

清水氏 結論から申し上げると、当初想定していた以上に劇的な効果が出ています。

まず、最大の懸案事項だった測定時間は劇的に短縮されました。以前は手動で位置を変えながら3~4時間かけていた40cmクラスの部品計測が、ATOS Qと自動回転ステージを導入したことで、部品を置いてボタンを押すだけでスキャンが完了するようになりました。部品を2周ほど回すだけで、ほぼすべての形状が自動的に取り込めます。

以前と比べて、スキャン前の準備作業としての「参照点シール」の貼り付け枚数が大幅に減りましたし、ワーク上に製品を固定する苦労もなくなりました。トータルの工数でいえば、以前と比較して50%も削減できたという印象です。ものによっては75%近い時間短縮に成功しているものもあるのではないかと思っています。結果として、生産性の向上に大きく貢献していると評価しています。

また、副次的な効果として「計測精度の進化」も感じています。最新のATOS Qは、2つのカメラのうちどちらか一方の視界に入っていればデータを補完できるアルゴリズムが進化しています。これにより、以前は「影」になって撮れなかった深い穴の奥や、入り組んだリブの隙間なども、部品をひっくり返すことなく高精度に取り込めるようになりました。

さらに、以前のCompact Scanを使う際は、どういう角度で撮れば効率的に撮れるのか、とか、どうやって製品をワーク上に固定しようか、といったことをしっかり考えないといけない部分がありました。あえていえば、少々「職人技」的なノウハウが必要だったということです。一方でATOS Qは、操作が非常に簡略化され、自動化が進んでいます。極端な話、基本的な操作を覚えれば、誰でも一定以上のクオリティでスキャンが可能です。これにより、特定の担当者に負荷が集中することを防ぎ、よりスピーディーな品質評価が可能になった点も、大きな効果だと感じています。

ATOSの信頼性に加え、丸紅I-DIGIOの迅速なサポートで安心して運用

――提案から導入、そして稼働後のサポートに至るまで、丸紅I-DIGIOの対応はいかがでしょうか。

清水氏 10年以上のお付き合いになりますが、一言でいえば「非常に丁寧で、信頼できるパートナー」です。我々のような製造現場にとって、最もありがたいのは「困った時にすぐ来てくれる」という迅速対応です。ATOS Qを導入後のある時、制御用のノートPCがかなりの熱を持つことがあり、少し心配になって問い合わせをしたことがありました。精密機器ですから、熱による暴走や寿命が短くなるのが怖かったのです。すると、担当者の方はすぐにスケジュールを調整して、東京から飯田まで駆けつけてくれました。実際に現場でPCの挙動を一緒に確認し、「このスペックでこれだけの演算を行えば、この程度の熱を持つのは正常範囲内です」と理論立てて説明してくださり、その上で効率的な冷却方法や運用のアドバイスもいただけました。

このように、「実機を見ながら現場で一緒に問題を解決してくれる」フットワークの軽さは、非常に心強く感じています。必要な時に、必要な精度で、迅速に対応してくれる。その適度な距離感とプロフェッショナルな姿勢に、非常に満足しています。

思えば、10年以上前に導入した旧型機が今でも現役で、かつノントラブルで使い続けられたのも、丸紅さんの適切な初期導入支援と定期的なバックアップがあったからこそだと感謝しています。

製品関連の情報はもとより、技術トレンドなどの周辺情報の提供にも期待

――最後に、今後の御社の事業成長に向けて、丸紅I-DIGIOやATOSシリーズに期待することがあればお聞かせください。

清水氏 自動車業界は今、電動化や自動運転技術の進化により、部品に求められる要件が刻一刻と変化しています。我々ニデックモビリティも、そのスピードに遅れることなく、常に最先端の製品を世界へ供給し続けなければなりません。そのためには、我々自身が新しい技術に触れ続ける必要があります。しかし、現場の人間はどうしても日々の生産やトラブル対応に追われ、展示会へ足を運んだり、最新の技術動向をリサーチしたりする時間が限られてしまいます。

そこで丸紅I-DIGIOさんには、世界の計測技術トレンドを教えてくれる「情報のコンシェルジュ」としての役割を、より一層期待しています。たとえば「いま世の中では、こうした計測手法が主流になりつつある」「他業界ではATOSをこのように活用して効率化している」といった、カタログスペックを超えた“生の情報”を届けていただきたいと思っています。

私たちがまだ気づいていない課題に対して、「こういう技術を使えば、もっと楽になりますよ」と提案してくれる存在であってほしい。今回のATOS Q導入がまさにそうだったように、技術の進化を私たちの力へと変えてくれるパートナーとして、これからも末永くお付き合いしていきたいですね。

――自動車産業が大きな転換点を迎える中で、Tier1、Tier2サプライヤーの役割はますます重要性を増している。車載電装部品に限らず、あらゆる部品に対して、より高い精度とスピードが求められ、その要求水準は今後もさらに高度化していくだろう。そうした中で、ATOS Qのような高精度3D計測システムは、製品の品質向上はもちろん、現場の生産性向上にも大きく寄与することが期待される。ニデックモビリティの取り組みは、その可能性を示す好例といえる。