丸紅グループのIT基盤を構築した技術力で実現する企業セキュリティ対策。 ソリューションとサービスはこちら

リグレッションテストの効果的手法と成功させるコツ

ソフトウェアやアプリケーションを開発・運用していると、「新しい機能を追加したら、それまで正常に動いていた機能が突然使えなくなった」という経験はないでしょうか。このような予期しない不具合を防ぎ、安心してサービスを提供するために重要な役割を果たすのが「リグレッションテスト」です。

本稿では、リグレッションテストとは何か、なぜ必要なのか、そして実際にどのように進めるのかについて、初心者にも分かりやすく解説します。テストの効果的な手法、さらには自動化によるメリットまで、具体例を交えて紹介していきます。

本記事に関連する資料ダウンロードはこちら >>
INDEX

リグレッションテスト(回帰テスト)とは? 

リグレッションテスト(回帰テスト)は、ソフトウェアやシステムが新たな変更やアップデートを受けた際、既存の機能や品質が損なわれていないかを検証するためのテストです。システムの変更が、予期せぬ副作用を生んでいないかを確認し、ソフトウェア全体の信頼性と品質を維持するために不可欠な作業となります。

特にリリースサイクルが短いアジャイル開発の現場では、頻繁な変更のたびにリグレッションテストが活躍します。テストレベルや優先順位、適切なテスト範囲の設定が品質向上のカギです。効率的な実施方法を知ることで、開発コストの最適化やセキュリティリスクの低減に繋がります。

リグレッションテスト(回帰テスト)の具体例

以下は、実際のソフトウェア開発現場で起こりうるリグレッションテストの具体例です。

業種・システム修正内容テスト対象リグレッションテストで検出すべき不具合
ECサイト決済画面のデザイン変更決済機能、ポイント付与、購入履歴表示、メール送信決済ボタンのクリック判定が効かなくなる、ポイントが正しく計算されない、購入確認メールが送信されない
SNSアプリログイン認証の仕様変更ログイン機能、プロフィール表示、投稿機能、フォロー機能ログインできなくなる、他ユーザーのプロフィールが表示されない、過去の投稿が消える
銀行システム振込機能の追加振込処理、残高照会、入出金履歴、セキュリティ認証残高が正しく表示されない、不正な振込が実行される、セキュリティ認証がスキップされる
オンライン予約システム予約キャンセル機能の改修キャンセル処理、返金処理、空き状況の更新、通知機能キャンセル後も予約が残る、返金されない、他ユーザーが予約できない、キャンセル通知が届かない
クラウドストレージファイルアップロード容量の拡張アップロード機能、ダウンロード機能、ファイル共有、アクセス権限大容量ファイルがアップロードできない、ダウンロードが失敗する、共有設定が解除される

これらの例からわかるように、一見すると修正内容と関係のない機能にまで、意図しない不具合が波及する可能性があります。そのため、リグレッションテストで修正箇所だけでなく、影響が及ぶ可能性のある機能を検証することが重要です。

リグレッションテスト(回帰テスト)の実施ポイント

テスト範囲や優先順位を明確に設定し、自動化対応とテストケースの改善を重視することが成功のポイントです。

テスト対象範囲を明確に定義

リグレッションテストを効果的に実施するためには、テスト対象範囲の明確化が重要です。範囲を決めずに進めると、テストの抜け漏れが発生し、品質を担保できません。たとえば、改修箇所だけでなく、その周辺機能や連携するシステム部分も含めてテスト範囲を定義することがポイントです。

PMOやQA担当、プロジェクトマネージャーは、リスク評価や優先順位付けを基に、どこまでテストを行うか決定する必要があります。テストレベルや拡充計画を事前に議論し、頻繁なアップデートにも柔軟に対応できる体制を作っておきましょう。これにより、信頼性の高いリリースと、コスト削減も同時に実現しやすくなります。

テストケースの継続的な改善

テストケースは一度作成したら終わりではなく、システムの機能追加や仕様変更に応じて、継続的な改善が必要です。バグ修正や新しい機能開発のたびに既存のテストケースを見直し、品質や信頼性を最大限に確保しましょう。

たとえば、優先順位を付けて、影響範囲が広い部分やセキュリティリスクの高い領域に重点を置くと効果的です。QA担当やアジャイル開発チームは、過去の障害報告も活用しながら改善点を抽出します。これを積み重ねることで、コスト削減や効率向上にもつながり、長期的なシステム運用での安定性を支えることができます。

早期のテスト自動化対応

リグレッションテストの早期自動化は、品質維持と開発コスト削減を両立する上で不可欠です。手動でのテストは多くの時間と工数がかかるため、頻繁なリリースが求められるアジャイル開発や大規模なシステム開発では早期の自動化が効果を発揮します。

テスト自動化エンジニアが、代表的なテストケースや高い優先順位の領域から自動化を始めることで、効率と信頼性を大きく向上させることができます。徐々に自動化の範囲を広げていくことで、重要なテストを継続的かつ安定して実行できるようになり、一定の品質基準でテストを実施できる体制を構築しやすくなります。

リグレッションテスト(回帰テスト)を実施しないリスク

一方で、リグレッションテストを省略すると信頼性や品質低下、修正コストの増加、セキュリティリスクの拡大につながる可能性があります。

システムの信頼性が損なわれる理由

リグレッションテストを省略すると、ソフトウェアの新しい変更によって既存機能が意図せずデグレードを起こすことがあります。これがシステムの動作不具合や品質低下につながり、ユーザーの信頼性を損なう大きな要因となります。特に複数の開発チームが関与する現場では、コミュニケーション不足によるテスト範囲の抜けも生じがちです。

信頼性を維持するには、テストケースの拡充や優先順位付けを定期的に見直し、全体の品質を継続的に管理するプロセスが求められます。

修正コストの増大のリスク

後から発覚したバグや障害の修正によりコストが急増する危険性があります。開発の初期段階で発見できていれば、開発中の効率的な対応が可能ですが、リリース後に問題が広範囲に及ぶと、修正範囲の特定や調査工数、関係部署への影響も拡大します。特にアジャイルプロジェクトでは、短期間での改修が続くため、品質の管理がおろそかになると顧客対応の面でも追加コストが発生します。

テストケースを整備し、優先順位を意識したリグレッションテストを定期的に実施することで、長期的な視点でコスト削減と品質維持の両立を目指すことが重要です。

リグレッションテスト(回帰テスト)の自動化

リグレッションテストの自動化には、多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットも存在します。メリットとデメリットを正しく理解し、自社の状況に合わせて自動化による品質向上を目指しましょう。

メリット

リグレッションテストを自動化する主なメリットは以下の3点です。

  1. コストと工数の削減
    テストケースを自動で繰り返し実行できるため、人的なコスト削減が可能です。アジャイル開発や頻繁なアップデートを行う現場では、特に自動化が強みを発揮します。
  2. 品質の安定化
    人為的なミスを排除し、一定の基準で品質と信頼性を維持しやすくなります。
  3. 実行速度の向上
    手動に比べて圧倒的に速くテストを完了でき、開発サイクルを高速化できます。 

デメリット

リグレッションテストを自動化する主なデメリットは以下の3点です。

  1. 初期導入コスト
    自動化ツールのライセンス費用や環境構築に初期投資が必要で、小規模プロジェクトでは費用対効果が合わない場合があります。 
  2. 自動化対象範囲の選定 
    自動化対象となる範囲やテストレベルの選定には慎重な判断が必要であり、どのテストを自動化すべきかを見極める判断力が求められます。 
  3. 保守管理の手間
    テストコードを作成・修正するための技術習得や、継続的なメンテナンス作業が発生し、定期的な第三者検証や品質コンサルティングの活用が必要になるケースがあります。 

Eggplant DAIで実現するリグレッションテスト(回帰テスト)

Eggplant DAIは、リグレッションテストを自動化するためのソリューションとして注目されています。アプリケーションの状態遷移を可視化したモデルを基に、テストケースの生成や実行順序を自動で最適化できるため、複雑なシステムや頻繁なアップデートにも柔軟に対応できます。

また、Eggplant Functionalと統合することで、モデル上のアクションと事前に定義したテストスクリプトを連携させ、テスト実行まで含めた自動化を実現します。これにより、リグレッションテストの範囲拡充と工数削減を同時に達成できます。

アジャイル開発との相性もよく、変更点の影響範囲を踏まえながら必要なシナリオを重点的に実行できるため、短いリリースサイクルでも品質を維持できます。モデルは段階的に構築・拡張できるため、従来の手動設計型テストと比較して、効率的に信頼性の高いテスト環境を整えられる点も特長です。

操作性や導入のしやすさにも配慮されており、テスト自動化の経験が浅いチームでも比較的スムーズに活用を始められます。リグレッションテストの効率化や自動化を検討しているプロジェクトマネージャーやテスト担当者にとって、Eggplant DAIは有力な選択肢の一つといえるでしょう。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Eggplant お役立ち資料

Eggplantのカタログ、国内事例をダウンロードいただけます。

INDEX