丸紅グループのIT基盤を構築した技術力で実現する企業セキュリティ対策。 ソリューションとサービスはこちら

商業施設でどんなデータをお客様に見せれば行動変容が起きて売上UPができるのか?

一定の規模を持つ商業施設などでは、駐車場の収容台数が多いことにより、出庫渋滞や周辺道路の渋滞などが大きな課題となることが多いようだ。また広い商圏の中でのマーケティング・ターゲットを明確化するために、より精緻な顧客(利用者)属性などを分析したいと考えても、データの収集・分析に手間とコストがかかるという課題もある。そうした課題をワンストップで解消し得るのが、AIを活用した映像監視サービス「TRASCOPE-AI」である。

本稿では、TRASCOPE-AIによって、多くの大規模商業施設などが抱える課題をどのように解決できるのか、特にお客様の行動変容を促し、渋滞緩和やイベント効果測定にどのように寄与するかについて、丸紅I-DIGIOグループ IT基盤サービスセグメント エッジソリューション事業室 AI営業課の佐々倉 彬能に話を聞いた。

本記事に関連する資料ダウンロードはこちら >>

大規模商業施設等が抱える「見えない」課題とは

――一定の規模をもつ商業施設や観光施設、道の駅などにおいては、施設運営上どのような課題を抱えていることが多いのでしょうか。

佐々倉 大規模商業施設などの運営において直面する課題は多岐にわたりますが、特に深刻なのが「駐車場の渋滞」と「顧客行動(人流や回遊行動、顧客属性など)が見えない(把握できていない)」という問題ではないでしょうか。

たとえば、500台以上の駐車場を備える大型施設では、駐車場の混雑や渋滞が大きな課題となります。特に、入庫時と出庫時では発生する渋滞の様相が異なります。特に出庫時の渋滞は、個々のお客様の都合に左右されてタイミングのコントロールが難しく、対応が困難になりがちです。たとえば「楽しい買い物の最後に、駐車場から出るだけで30分もかかった」という体験は、施設の全体的な評価を大きく下げ、再来店への大きな障壁となります。

これまでの対策は、警備員を配置し、その経験と勘で車両を誘導するというアナログなものが中心でした。しかし、この方法は警備員のスキルに大きく依存しやすく、必ずしも最適な誘導とはいえません。よりシステマティックな対応・対策が求められます。

もうひとつの課題である「顧客行動(人流や回遊行動、顧客属性など)が見えない」というのは、お客様が「いつ、どこから来て、施設内をどのように動き、何に興味を持つのか」を正確に把握できていない状態を指します。その結果として、顧客に響くマーケティング施策を効果的に展開することが難しくなっています。こうしたデータは、効果的なマーケティング戦略やテナント構成の最適化にも不可欠です。しかし、多くの施設では、こうしたデータを効率的に収集できていないという課題があるのです。

従来、こうしたデータを取得するためには、専門の調査員を雇って目視でカウントするといった手法が取られてきました。しかしこれには莫大なコストと手間がかかります。また、得られるデータは特定の期間や場所における断片的なものでしかなく、施設全体の動きをリアルタイムで継続的に把握することは不可能でした。

このように、十分なデータがなければ、効果的な戦略を立てることはできません。どのエリアにどんな店舗を配置すれば回遊性が高まるのか、実施したイベントは本当に集客につながったのか、といった問いに対して、データに基づいた客観的な評価ができないのです。結果として、運営は過去の成功体験や感覚に頼らざるを得ず、知らず知らずのうちに大きな機会損失を生んでいる可能性があります。 これらの「見えない」課題は、顧客満足度の低下、売上の伸び悩み、そして運営コストの増大という形で、施設の経営に悪影響を及ぼすことにもなりかねないのです。

見えない課題を、データで「見える化」する、新しい施設運営

――そうした課題をきちんと「見える化」するにはどうすればいいのでしょうか。

佐々倉 先にお話ししたような課題を解決するには、「データドリブンな施設運営」が重要であり、その第一歩が「見える化」です。これまで勘と経験に頼っていた領域を、客観的なデータに基づいて判断し、アクションにつなげていくことこそが、これからの商業施設運営には不可欠の要素だといえるでしょう。 そして、この「見える化」を実現する強力なツールが、映像AIソリューションである「TRASCOPE-AI」です。TRASCOPE-AIは、施設に設置されたカメラによる映像を、AIがリアルタイムに解析し続け、駐車場や施設内の様々な状況をデータとして「見える化」します。これにより、運営者はこれまで把握できなかった事実を正確に捉え、データに基づいた的確な意思決定を行うことが可能になります。

駐車場渋滞をTRASCOPE-AIで解消する

――駐車場の渋滞という課題を、TRASCOPE-AIはどのように解決するのでしょうか。

佐々倉 まず、TRASCOPE-AIはカメラ映像から駐車場の満空情報をリアルタイムで把握し、その情報をデジタルサイネージ等に表示することが可能です。これにより、入庫するお客様は空いている駐車スペースを簡単に見つけることができ、駐車場の渋滞緩和に寄与します。また、出庫時には、AIが現在の出庫車両の流れなどを分析し、「現在の出庫所要時間:約30分」といった具体的な予測時間を提示することが可能になります。この情報を見たお客様は、「まだ混んでいるから、もう少し施設内にいよう」と考えるでしょう。つまりお客様自身が自発的に出庫タイミングを調整するようになります。こうした行動変容が、出庫車両のピーク分散や渋滞緩和につながります。これまでやっていたような、警備員が一方的に誘導するのではなく、顧客自身が情報を見て最適な行動を選択するのです。また、施設内の滞留時間が増えれば、売上増につながるという副次効果も期待できます。このように、TRASCOPE-AIを活用することによって、こうした渋滞対策が可能となります。

また、TRASCOPE-AIは、過去の利用データと現在の状況、天候や周辺道路の状況などを解析し、「30分後、60分後にはAゲートが混雑する」といった渋滞予測を可能にする機能も備えています。これにより、施設運営者は渋滞発生後に対応するのではなく、事前に警備員の配置最適化を実行するなど、施設運営全体の効率化も実現します。実際に、西日本の大型ショッピングモールや、関東の大型商業施設などでは、この渋滞予測機能を活用し、出庫時の渋滞時間を大幅に削減するという成果を上げています。

人流・属性分析などのマーケティングデータをTRASCOPE-AIで収集する

――人流分析などについては、どのような活用が可能になるのでしょうか。

佐々倉 TRASCOPE-AIは、駐車場問題の解決だけでなく、施設全体のマーケティング活動をも強力に支援できます。これまで、調査員を雇う必要があり、高コストかつ断片的になりがちだった人流調査を、カメラ映像などを活用して、低コストで、かつ継続的に行うことが可能になります。

TRASCOPE-AIは、カメラ映像から人の流れを解析し、「どの入口から何人が入ったか」「どのエリアに長く滞在したか」といったデータをヒートマップ(混雑度を色で示す図)などで可視化します。さらに、AIが映像から性別や年代といった顧客属性を推定。これにより、「平日の午前中は主婦層が多く、週末はファミリー層が増える」といった具体的な顧客像をデータで裏付けることもできます。 こうしたデータを活用することで、テナント構成の最適化や効果的なイベントの企画・実施を効率的に行うことができます。また、イベント開催時には来場者数や属性、滞在時間などをリアルタイムで把握できるため、イベント効果測定にも活用できます。

TRASCOPE-AIで商業施設の課題を一元的に解消する

――TRASCOPE-AIを導入することで、商業施設などが抱える課題を一元的に解決できるということですね。導入にあたってのハードルも低いと伺いました。

佐々倉 TRASCOPE-AIの最大の特長は、これまで個別のシステムで対応する必要があった「駐車場管理」「マーケティング分析」「安全対策」といった複数の課題を、一つのソリューションで一元的かつトータルに解決できる点にあります。

たとえば、駐車場にセンサー式のシステムを導入しようとした場合、従来の方法では大規模な工事が必要で、工事の規模によっては休業しなければならないなど、導入には高いハードルがありました。しかし、TRASCOPE-AIで使用するカメラは大掛かりな設置工事などは不要で、電源さえあれば設置可能です。そのため、初期費用を抑え、施設の営業を中断することなく短期間で導入することも可能です。まずは特定のエリアから小規模に開始し、効果検証をしながら段階的に対象範囲を広げていくといった柔軟な運用も可能です。

――鉄道会社が踏切などでの安全確保にTRASCOPE-AIを活用していると伺いました。

佐々倉 TRASCOPE-AIの技術は、その高い信頼性から、鉄道の踏切における安全システムにも採用されています。これは、踏切内に取り残された人や車をAIが検知し、鉄道会社のシステムと連携して、当該の踏切に接近する電車に自動で停止信号を送るという、人命に関わる重要なシステムです。このような厳しい環境で培われた実績は、TRASCOPE-AIの高い検知精度と安定した稼働を証明しているものと考えています。

こうしたシステムとしての信頼性の高さは、災害時の活用にもつながります。ある道の駅では、平常時には駐車場の満空情報のための仕組みとして活用し、災害などが発生した際には、遠隔から駐車場の状況(物理的な損傷の有無など)を確認し、緊急車両の受け入れスペースが確保できるかを迅速に判断するといった判断するといった活用がされています。こうした活用の仕方が可能になるのも、TRASCOPE-AIのシステムとしての信頼性の高さがあってこそだと考えています。

――500台以上の駐車場を持つ大型の商業施設や、観光施設、道の駅などでは、顧客分析や人流分析など、きちんとしたマーケティングデータに基づいて、顧客満足度を高める工夫を実践することが事業成長のキー・ファクタ―であることは間違いないところである。その一方、せっかく顧客満足を高めるために付加価値を増強しても、「駐車場渋滞」で嫌な思いをした利用者は、結果的に顧客満足を低下させてしまうということにもなりかねない。こうした事態を回避し、顧客満足度と売上の向上を両立するためにも、TRASCOPE-AIの導入は行動変容の促進や渋滞緩和、さらにイベント効果測定にまで対応できる有力な選択肢となるだろう。

お役立ち資料

本記事に関するお役立ち資料をダウンロードいただけます。

佐々倉 彬能
丸紅I-DIGIOグループ IT基盤サービスセグメント
エッジソリューション事業室
※所属・職名等は記事公開当時のものです。