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監視カメラシステムはクラウド型が主流に 遠隔監視やデータの安全性が向上

IoTの進展に伴い、防犯カメラ・監視カメラもネットワーク対応が主流となり、価格もリーズナブルになったことで、利用シーンが拡大している。

特にコロナ禍以降は、監視業務の無人化や省力化が進み、複数の防犯カメラを一か所で管理したり、遠隔で管理できるシステムへのニーズが高まった。

そのため、従来の主流だったオンプレミス型の防犯カメラやVMS(Video Management System:ビデオマネジメントシステム)から、クラウド型への移行が加速している。

本稿では、防犯カメラ市場がクラウド型に移行している背景や、クラウド型のメリットなどについて、丸紅I-DIGIOグループ IT基盤サービスセグメント エッジソリューション事業室 AI営業課の岩田 祐輝に話を聞いた。

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拡大を続ける防犯カメラ市場

――昨今の防犯カメラ市場の状況についてお教えください。

岩田 大きくは、一般の方々や企業などにおいて、非常に安全意識が高まっているという社会的背景があります。また技術面の進歩により、高画質・高機能の防犯カメラが安価に入手できるようになったことや、IoTの進展でネットワークカメラの導入が進んだことなども、普及に拍車をかけたといえます。ある調査機関の調査によれば、2023年度の監視カメラ/システム市場(国内)は約2,000億円と算出されており、未集計ながら翌2024年度は2,300億円に届く勢いで伸びると推計されています。

今、防犯カメラ市場は、オンプレミス型からクラウド型へ

――実際の防犯カメラやVMSなどについても、従来のオンプレミス型から、クラウド型にシフトする傾向が顕著だと伺いました。

岩田 コロナ禍で、外出や人との接触が制限される中、防犯カメラ・監視カメラのシステムについても、監視室に人が常駐することが敬遠され、省力化・無人化が進みました。そうした中で、従来のオンプレミス型から、クラウド型へのリプレイスが進むようになりました。

また防犯意識の高まりを受けて、新たに防犯カメラなどのシステムを導入したいと考える企業では、最初からクラウド型のシステムの導入を検討するケースが増えています。また、すでにオンプレミス型で運用しているような場合でも、可能ならクラウド型に変えたいというニーズは確実に高まっています。

クラウド型防犯カメラシステムのメリット

――防犯カメラシステムをクラウド型にするメリットには、どんなことが挙げられますか。

岩田 ひとつは、オンプレミス型よりも、クラウド型の方がイニシャルコストを抑えられるという点です。オンプレミス型の場合、カメラだけでなく、NVR(Network Video Recorder=ネットワークビデオレコーダー)やDVR(Digital Video Recorder=デジタルビデオレコーダー)という機器が必要になるなど、どうしてもハードウェアへの投資が必要になります。しかしクラウド型の場合は、録画機器などを用意しなくても、録画データはクラウド上にアップされるので、相対的にイニシャルコストは抑えられます。

また、オンプレミス型の場合、使用している機器に何らかの不具合が発生した場合に、録画データが消失してしまうというリスクがあります。クラウド型であれば、録画データはクラウド上にアップされますから、データ消失のリスクは大きく低減できます。

また、システムの拡張性や柔軟性が、オンプレミスよりも高いということもメリットだといえます。

たとえば、いったん構築してしまったオンプレミスの監視システムの中に、新たに監視対象となる拠点(店舗など)を増やして、そのためにカメラを増設したりすると、物理的に配線をやり直さなければならなかったり、システム自体のスケールアップが必要になるなど、手間がかかります。その点、クラウド型なら、増設するカメラはネットワークでつなぐだけですし、録画データが増えることになっても、録画装置を増設することなく、クラウド側の容量を増やすだけで簡単にスケールアップできます。

既存のオンプレミス型システムをクラウド型に移行する際の注意点

――これから防犯カメラのシステムを構築するなら、クラウド型を検討すべきであることがよくわかりました。しかし一方ですでにオンプレミス型で運用している企業などが、クラウド型に移行したいという場合には、どんな注意ポイントがありますか。

岩田 オンプレミス型からクラウド型にリプレイスしようという場合には、3つのポイントがあると思います。

まずひとつめは、既存のカメラがクラウドに対応しているかどうかです。最近のカメラであれば、多くはクラウドに対応していると思われますが、古いカメラの場合、互換性がなくクラウドに接続できないということもあり得ます。その場合は初期投資としてクラウド型で運用できる防犯カメラを準備する必要があります。

ふたつめとしては、ネットワークがきちんと整備されているかという点です。多くの場合、複数台のカメラを使用して常時監視を行い、その録画データをクラウドにアップロードするということになります。回線の速度や安定性が不十分だと、動画データのアップロードに支障をきたし、運用に影響を及ぼす可能性があります。そのため、ネットワーク環境を確認することは重要です。

なお、この点については、どの程度のデータ容量を扱うかといった利用シーンの前提条件によって異なります。たとえば、最低限の画質で1週間分の録画データを保存したいといった要件の場合、データ容量はそれほど大きくならないかもしれません。しかし、より高画質な映像を、3ヶ月間保存する必要がある場合には、より大きな容量が必要になります。

また、使用しているカメラの台数も数台程度という場合と、数十台も使用しているという場合では、必要な回線の帯域も変わってきます。運用したいカメラの台数は運用コストにも影響を及ぼしますので、リプレイスにあたっては、きちんと確認しておくことが重要です。

なお、実際にクラウド型へのリプレイスを検討するにあたっては、まずは理想とする運用方法や課題解決策を明確にし、予算と照らし合わせて優先順位をつけたり、必要に応じて予算の増額を検討することが重要です。予算から逆算して考える場合もありますが、まずは理想像を描くことが大切だと考えております。

初期費用を抑え、運用負荷を軽減する「TRASCOPE-cloud VMS」

――クラウド型の防犯カメラシステムとして、「TRASCOPE-cloud VMS」を展開されています。新規の構築であれ、既存のオンプレミス型をリプレイスする場合であれ、優位性のあるシステムだと伺っています。「TRASCOPE-cloud VMS」の概要や、優位性などについてお教えください。

岩田 「TRASCOPE-cloud VMS」は、無線×クラウドを活用した次世代型映像監視サービスです。カメラで撮影された動画データは、ネットワークを通じてクラウドサーバーに送信され、ユーザーはクラウド上のデータを遠隔で視聴・管理できるというサービスです。

「TRASCOPE-cloud VMS」の優位性のひとつとしては、回線が非常に強いという点を挙げることができます。実は当社はNTTドコモ系の回線を利用したフルMVNO(Mobile Virtual Network Operator)サービスを提供しており、自社でSIMを発行できますので、お客様にネットワーク構築の手間をかけることなく、安定したネットワーク環境をご提供できます。はじめてクラウド型の防犯カメラに関するVMSを導入する際はもちろん、オンプレミス型からのリプレイスに際しても、ネットワーク環境を含めてお任せいただけますので、効率的なリプレイスが可能になります。

また「TRASCOPE-cloud VMS」の場合は、録画データをクラウドにアップするのはもちろんなのですが、カメラで取得したデータをSDカードに蓄積することも可能です。ごく一般的なクラウド型のシステムはカメラからストリーミングで録画データをアップロードしているので、回線が切れてしまった場合は、その間の録画データがクラウドにアップされず、未録画の時間帯が発生してしまいます。しかし「TRASCOPE-cloud VMS」は、万が一、ネットワークに不具合が生じた場合でも、エッジボックス(カメラに接続し、映像解析を行う機器)のSDカードに保存されている録画データを、回線が復旧した際に、クラウド側に自動でアップロードします。そのため、未録画状態という空白が発生しません。この仕組みについては現在特許出願中で、「TRASCOPE-cloud VMS」ならではの優位性だと自負しています。

さらに、「TRASCOPE-cloud VMS」であれば、既存のカメラ機器をそのまま使用しながらクラウド化することも可能です。事前に連携の可能性を調べる必要はありますが、「TRASCOPE-cloud VMS」の場合は、既設のカメラがIPカメラやアナログカメラであったとしても、そのカメラの撮影データをデジタル信号に変えてエッジボックスにつなげることもでき、カメラ自体をそのまま活用できる可能性が極めて高まります。一般的なクラウド型のVMSサービスはメーカー依存で、特定メーカーのカメラに対応するシステムであることが多いのですが、この点でも、「TRASCOPE-cloud VMS」はリプレイスに強いということがいえると思います。

なお、「TRASCOPE-cloud VMS」のエッジボックスは最大で8台までのカメラを接続できますので、イニシャルコストも大きく低減することができます。また、使用している機器が国際標準規格のONVIF(オンビフ)に対応していれば、遠隔でのカメラ操作も可能になります。

――かなり優位性のある「TRASCOPE-cloud VMS」ですが、今後さらに付加される機能などがあればお教えください。

岩田 ひとつには、「TRASCOPE-AI」という、AIによる画像解析のソリューションを活用することで、撮影された映像について、クラウド上で各種の検知や解析を行えるようになります。たとえば、大勢の人が集まるような場所の人流を解析したり、駐車場などで車の出入りを解析して渋滞予測をしたり、あるいは河川の水位変化を監視しているカメラ映像をAIで解析して氾濫を予測するといったことも可能になります。こうしたAIの活用が進めば、人が監視モニターを見なくても、AIが状況を解析し、必要なアラートを発報し、そこで人的に対応するようなことも可能になり、省力化につながります。

さらに、当社がもつ「MAIDOA Plus」というセンサー情報などを統合的に管理できるIoTプラットフォームと連携させれば、各種センサーと防犯カメラとの連携も可能になります。死角をなくすほどにカメラを設置することは大変ですが、カメラでとらえることができない部分はセンサーでキャッチアップすることで漏れなくデータの収集が可能となります。 

このように、「TRASCOPE-cloud VMS」は、今後ますます活用のシーンが広がっていきますので、ぜひご活用いただきたいです。

――多様な機能や、AI連携、「MAIDOA Plus」連携も魅力的だが、やはり「TRASCOPE-cloud VMS」の大きな活用メリットは、状況に応じてカメラの台数の増減、システム構成のスケールアップやスケールダウンに、柔軟に対応できる点にある。「TRASCOPE-cloud VMS」を活用することで、監視業務の無人化・省力化を加速させることが可能になるだろう。

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岩田 祐輝
丸紅I-DIGIOグループ IT基盤サービスセグメント
エッジソリューション事業室 AI営業課
※所属・職名等は記事公開当時のものです。