荷待ち時間とは?
荷待ち時間とは、貨物の積み込みや荷降ろしの準備ができるまで、トラックが待機している状態を指します。重要なのは、これがドライバーの意思ではなく、荷主や物流施設の都合によって発生している点です。厚生労働省や国土交通省の定義では、荷主から指定された時間に到着したにもかかわらず、前の車両の作業が終わっていない、あるいは荷物の準備が整っていないために発生する時間を「荷待ち時間」として区別しています。
荷役作業前の待機時間
荷役作業前の待機時間は、トラックが物流拠点に到着してから、実際にバース(荷積み・荷降ろし場)に接車するまでの時間です。この時間はドライバーにとって休憩時間ではなく、いつでも動けるように準備しておかなければならない拘束時間に含まれます。そのため、労働時間の長期化を招く大きな要因となっているのが実情です。
荷主都合による停車時間
荷主都合による停車時間は、現場での作業準備が整っていないことによる待ち時間を含みます。たとえば、指定時間に到着したものの、倉庫内の在庫整理が終わっていない、あるいは伝票の発行に手間取っているといったケースが該当します。これらは輸送プロセスそのものとは関係のない事務的、または管理的な不備によって発生するものです。したがって、荷主側のオペレーションを見直すことで削減できる可能性が高い部分といえます。
荷待ち時間が発生する原因
荷待ち時間が発生する原因には、アナログな管理体制や特定の慣習が根強く残っていることが挙げられます。以下で、その主な原因を詳しく解説します。
特定の時間帯への車両集中
車両の集中は、多くのドライバーが「少しでも早く作業を終わらせて次の配送に向かいたい」と考えるために起こります。午前中の早い時間帯にトラックが殺到すると、物流拠点の受け入れ能力を超えてしまい、必然的に長い車列が発生します。この「先着順」という商慣習が、ドライバーに早朝からの待機を強いる原因となっています。
庫内作業や荷揃えの遅れ
トラックが到着しても、積み込むべき商品のピッキングや荷揃えが終わっていなければ作業を開始できません。倉庫側の作業進捗が遅れている場合や、出荷指示と現場の作業がうまく連携できていない場合に、この要因による待ち時間が発生します。また、荷降ろしの際にも、倉庫内の保管スペースに空きがないためにトラックを接車させられないといったケースも見受けられます。
現場情報のデジタル化不足
現場情報のデジタル化が遅れていることも、荷待ちを悪化させる一因です。受付が手書きのノートであったり、事務所から倉庫への連絡が電話や無線のみで行われていたりすると、情報の伝達にタイムラグが生じます。どの車両がどこで何分待っているのかがリアルタイムで可視化されていないため、適切な誘導や作業の優先順位付けができず、効率的なバース管理が困難になっています。
荷待ち時間がもたらす影響
荷待ち時間を放置することは、単に効率が悪いだけでなく、ドライバーや企業、さらには社会全体に負の影響を及ぼします。2024年問題として知られる労働規制の強化により、荷待ち時間は単なるロスタイムではなく、経営を圧迫する重大な懸念事項となりました。荷主企業は、自社の現場で発生している待機時間がどのような連鎖反応を引き起こすのかを深く理解する必要があります。

ドライバーの長時間労働を招く
荷待ち時間は、ドライバーの拘束時間を不必要に引き延ばす最大の要因です。待機中も車両から離れられないことが多く、精神的・肉体的な疲労が蓄積し、安全運転への支障をきたす恐れがあります。また、2024年4月から施行された時間外労働の上限規制により、長時間の荷待ちが発生する現場は運送会社から敬遠され、結果として必要な時にトラックを手配できない状況に陥る可能性が高まります。
物流コストが増大する
荷待ち時間の発生は、荷主企業にとって直接的なコスト増を招きます。運送会社は、待機によって生じた機会損失を補填するために、待機料金の請求や運賃の値上げを求めるようになっています。また、車両の回転率が低下することで、同じ量の荷物を運ぶために、より多くの車両や人員を確保しなければならなくなります。これは物流費全体の高騰を招き、企業の利益を圧迫する大きな要因となります。
物流網の維持が困難になる
荷待ち時間は社会全体の輸送能力を実質的に低下させます。本来であれば別の配送に向かえるはずの車両が駐車場に釘付けになることで、物流網全体の回転率が落ちるからです。荷待ちが深刻な拠点に対しては、運送会社が配車を拒否する「選ばれる荷主」の時代が到来しており、自社の供給網が寸断されるリスクが現実味を帯びています。安定した物流を維持するためには、この非効率を排除することが不可欠です。
荷待ち時間削減に向けた行政の取り組み
物流の停滞を防ぐため、日本政府は荷待ち時間の削減を国家的な課題として位置づけ、さまざまな施策を打ち出しています。特に国土交通省、農林水産省、経済産業省が連携して策定した「物流効率化に向けた自主行動計画」などでは、荷主企業が取り組むべき具体的な目標が示されています。これにより、これまで運送会社だけの問題とされてきた荷待ち時間は、法的な枠組みの中で荷主が責任を持つべき事項へと変化しました。
待機と荷役を2時間以内とするルール
行政は現在、トラック1台あたりの「荷待ち時間」と「荷役時間」を合計して2時間以内とする目標を掲げています。さらに、将来的にはこれを1時間以内にまで短縮することを目指しており、この2時間ルールは物流現場における一つの明確な評価指標となっています。もしこの時間を恒常的に超えている場合、荷主企業は運営体制に重大な欠陥があるとみなされ、改善計画の策定を求められる可能性があります。

荷待ち時間の記録義務化
2017年の貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正により、運送会社はドライバーの荷待ち時間を記録することが義務付けられました。当初は車両総重量8トン以上の大型車が対象でしたが、2025年4月からはすべての車両に対象が拡大されました。このデータ蓄積によって、どの荷主の現場でどれだけの待機が発生しているのかが客観的に証明されるようになり、行政による指導の重要な根拠として活用されています。
荷主勧告制度による是正指導
国土交通省は、ドライバーの労働基準法違反や過労運転の背景に荷主の無理な指示や長時間の荷待ちがあると認められた場合、荷主に対して勧告や指示を行う「荷主勧告制度」を運用しています。勧告を受けた場合、企業名が公表されるだけでなく、再発防止策の実施状況を厳しく監視されることになります。これは企業にとって重大なレピュテーションリスク(評判を損なうリスク)となるため、実効性のある削減対策が求められます。
荷待ち時間を削減するための具体的な対策
荷待ち時間の削減には、現場の努力だけでなく、デジタルツールの活用や商慣習の見直しが必要です。国土交通省が推進する物流効率化法に基づき、多くの企業が具体的なアクションを開始しています。特に効果が高いとされるのが、予約システムの活用と、荷役作業そのものの簡素化です。これらの対策を組み合わせることで、大幅な待機時間の短縮が期待できます。
主な削減対策とその期待効果を以下の表に整理しました。
| 対策の名称 | 内容と効果 |
|---|---|
| トラック予約受付システム | 到着時間の指定による車両分散、待機の解消 |
| パレット化の推進 | フォークリフト作業による荷役時間の短縮 |
| 荷揃えの徹底 | 入場後すぐに作業を開始できる体制構築 |
予約システムの導入
予約システムの導入は、荷待ち時間を削減するための確実な手段です。ドライバーが事前に到着予定時間をシステムで予約し、施設側がそれを受け入れることで、車両の集中を防ぎます。これにより、ドライバーは無駄な早出をする必要がなくなり、現場も一日の作業計画を正確に立てられるようになります。デジタル技術を活用して、現場の状況を可視化することが改善の鍵となります。
パレット化を推進する
パレット化を推進することは、荷役作業の時間を劇的に短縮させます。段ボールを一つずつ手で積み降ろす作業には膨大な時間と体力が求められますが、パレット単位でフォークリフトを使用すれば、作業時間は数分の一に短縮されます。荷主と運送会社がパレットを共通化する一貫パレチゼーションを導入することで、車両の回転率が向上し、結果として待機車両の列が解消されます。
荷揃えを事前に行う
荷揃えを事前に行う体制を整えることも重要です。トラックが到着してから商品をピッキングしたり、検品したりするのではなく、接車した瞬間に積み込みを開始できる状態にしておきます。この当たり前のプロセスを徹底するだけで、一台あたりの滞在時間は大幅に短縮されます。事務所側と倉庫現場の連携を強化し、次に到着する車両の荷物を優先的に準備するフローを構築してください。
まとめ:荷待ち時間削減を進めるための次のステップ
本稿では以下のことを解説してきました。
- 荷待ち時間とは荷主の都合で作業開始を待つ拘束時間であり、予約システムの導入やパレット化によって大幅に削減することが可能です。
- 放置すると2024年問題に伴う法違反や運賃上昇のリスクを招くため、現場情報の可視化と到着時間の分散が急務となります。
- 荷主と運送会社が協力して待機時間を解消することは、物流コストの抑制だけでなく、持続可能な輸送体制の構築に直結します。
物流の停滞を防ぎ、企業の社会的責任を果たすためにも、まずは自社拠点の荷待ち実態を「見える化」し、客観的なデータに基づいて改善策を検討することが重要です。
そのための手段として、丸紅I‑DIGIOグループが提供する「TRASCOPE‑AI」は、トラック予約・バース割当・ヤード内の滞留時間可視化などを通じて、荷待ち時間の削減と新物流効率化法への対応を同時に支援するソリューションです。さらに、ナンバープレート認識カメラとクラウドを組み合わせることで、車両の入退場時刻や滞留時間を自動記録し、「トラック滞留時間の定期的な計測・記録」といった法令対応に必要なデータの取得負荷を軽減する仕組みも提供しています。
荷待ち時間対策と物流DXを同時に進める一手として、TRASCOPE‑AIを自社の取り組み候補に加え、具体的な活用イメージをぜひご検討ください。
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