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物流関連2法とは?改正の概要と影響を解説

物流関連2法の改正が、2025〜2026年にかけて順次施行されます。荷主企業・運送会社・倉庫業者など、物流に関わる事業者の業務や契約の進め方が大きく変わる見込みです。「何が変わるのか」「自社は何をしなければならないのか」が分からず、不安を感じている担当者も多いのではないでしょうか。

本稿では、物流総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正ポイントを整理し、荷待ち時間への対応、契約書の見直し、デジタルツールの活用など、現場で押さえるべき実務対応を解説します。

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物流関連2法とは?

物流関連2法とは、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(一般に『物流総合効率化法』)」と「貨物自動車運送事業法」の2つの法律を指します。いずれも、荷主企業や運送会社、倉庫事業者など、物流に関わる事業者の物流業務や取引のあり方に大きく関わる法律です。

物流総合効率化法の概要

物流総合効率化法は、物流業務全体のムダを減らし、効率的で持続可能な物流体制をつくることを目的とした法律です。輸送手段や輸送経路の見直し、共同配送の活用、トラックの積載効率向上などを通じて、荷主と運送会社の双方に物流改善を促します。

今回の改正では、こうした取り組みをより一層進めるため、荷主・運送会社・倉庫事業者などに対し、具体的な効率化の取り組みを求める内容が強化されています。物流コストの削減や業務の効率化にとどまらず、ドライバー不足や過重労働といった現場の課題への対応も狙いとされています。なお、荷待ち時間の削減やデジタル技術の活用、多重下請け構造の見直しなど、具体的な改正ポイントは後半で詳しく解説します。

貨物自動車運送事業法の概要

貨物自動車運送事業法は、トラック運送事業の安全確保と健全な運営を図ることを目的とした法律です。トラック事業者の許認可や運行管理、安全対策に関するルールのほか、荷主との取引の適正化に関する規定も含まれています。

改正では、運送契約の条件を明確にし、書面で残すことや、荷待ち時間・荷役時間を適切に管理することが重要視されています。口頭ベースのあいまいな依頼や、荷主と運送会社の力関係の偏りから生じる不公平な取引を是正し、公正で透明性の高い取引環境を整えることが狙いです。

なぜ物流関連2法は改正されるのか

物流関連2法の改正は、物流業界が抱える深刻な課題を解決し、持続可能な物流体制を築くことを目的としています。背景には、ドライバー不足や長時間労働、不公平な取引慣行、環境・リスク対応など、これまでの仕組みでは対応しきれなくなっている問題があります。

ドライバー不足と荷待ち時間の深刻化

少子高齢化や長時間労働のイメージも重なり、物流業界では慢性的なドライバー不足が続いています。加えて、働き方改革関連法による労働時間規制の強化が進み、これまでのような長時間労働に依存した運行は成り立たなくなりつつあります。現場では、荷物の積み下ろしや荷待ち時間が長時間に及ぶことが少なくなく、それがドライバーの拘束時間を押し上げています。

この状態が続けば、運送事業者にとって人材の確保・定着はいっそう難しくなります。こうした状況を踏まえ、法改正では荷待ち・荷役時間の適正管理を求める流れが強まりました。運送会社だけでなく荷主企業側も、配送スケジュールの見直しや業務プロセスの改善に取り組むことが求められています。

荷主・運送会社間の力関係と不透明な商慣行

従来は、荷主企業と運送会社との力関係の偏りから、あいまいで不利な条件の取引が行われるケースが少なくありませんでした。運賃や付帯作業の条件が口頭のやり取りだけで決まり、正式な契約書が交わされない、荷待ち時間の負担が事実上運送事業者側に押しつけられている、といった状況です。

こうした不透明な商慣行は、現場のトラブルや「言った・言わない」の争いを生むだけでなく、運送事業者の収益悪化やドライバーの長時間労働の要因にもなってきました。今回の法改正では、運送契約の条件を明確にし、書面で残すことや、取引内容を適切に共有することが重視されています。多重下請け構造の見直しも含めて、取引の透明性と公正さを高めることが目的です。

カーボンニュートラル・サプライチェーン強靱化への要請

気候変動対策や災害・感染症リスクに強いサプライチェーンづくりも、改正の大きな背景です。企業にはカーボンニュートラルへの貢献が求められ、物流分野でもCO₂排出削減が重要になっています。積載効率の向上や共同配送、モーダルシフトなどは、トラック台数や走行距離の削減を通じて温室効果ガス排出の抑制に直結します。

改正物流関連2法のポイントと影響

ここからは、改正された物流関連2法の主なポイントと、物流業界への具体的な影響をみていきます。

ポイント1:物流効率化の取り組み義務と荷待ち2時間ルール

改正物流総合効率化法では、荷主企業や物流事業者に対して「物流を効率化するための具体的な取り組み」を行うことが、これまで以上にはっきりと求められるようになりました。とくに重視されているのが、荷待ち・荷役時間の短縮とトラックの積載効率の向上です。新たに導入される「荷待ち2時間ルール(原則として2時間を超える荷待ちを発生させないことを求めるルール)」により、長時間の荷待ちが常態化しないよう、荷主・倉庫・運送会社が協力して業務プロセスや時間管理を見直すことが求められます。

ただし、対策が不十分なまま「敷地内で待たせない」運用だけを強めると、敷地外での待機(周辺道路の滞留、混雑、違法駐車、近隣苦情など)に置き換わるリスクもあります。そのため、予約受付の精度向上、バース割当の最適化、荷役段取りの平準化、構内動線・入退場の整理、待機スペースの確保といった“現場側の受入能力”を高める改善とセットで進めることが重要になります。改善を進めるには、入退場や構内滞留の実態(いつ混むか/どこで詰まるか)をデータで把握し、ボトルネックを特定したうえで、対策前後の効果を検証できる状態にすることが欠かせません。

荷待ち時間が減れば、ドライバーの拘束時間が短くなり、労働環境の改善や人材定着につながります。積載効率を高めることで、運行回数や走行距離を抑え、燃料費などのコスト削減にもつながります。これらを進めるうえでは、入退場・予約・バース運用の可視化に加え、運行データの可視化や配車システムなどデジタル技術の活用が重要になります。

ポイント2:運送契約条件の書面化・情報共有の義務化

改正貨物自動車運送事業法では、運送契約の条件をあいまいな口頭のやり取りに頼るのではなく、書面で明確にすることが義務付けられます。従来は、「メールや電話での依頼」「表計算ソフトでの管理」にとどまり、運賃や付帯作業、荷待ち時間の扱いなどがはっきりしないまま運行が行われるケースもありました。トラブルが起きた際に責任の所在が不明確になったり、運送事業者側に負担が偏ったりする問題も生じていました。書面化と情報共有を徹底することで、

  • どの業務にどこまで対応するのか
  • 追加作業が発生した場合にどう扱うのか
  • 荷待ち時間やキャンセル時の取り決めをどうするのか

といった点を事前に確認しやすくなります。その結果、荷主と運送会社の関係も、より対等で透明性の高いものに変えていくことが期待されています。実務面では、契約書や運行指示の電子化、クラウド上でのデータ管理など、デジタルツールを活用した運用への切り替えが進んでいくと考えられます。

ポイント3:多重下請け構造の是正と取引慣行の見直し

「多重下請け構造」も、法改正の重要なテーマです。荷主からの仕事が複数層の下請けを経由していくなかで、運賃が目減りし、末端の事業者ほど負担が重くなる、といった問題が起きていました。

改正では、運送契約の内容を上流から下流まで分かりやすくし、実際に運行を担う事業者が不利な条件を一方的に押しつけられないようにすることが重視されています。契約内容の明確化と業務実態の可視化を通じて、取引の流れ全体を見直していくことが求められます。

対象となる「特定大手事業者」の範囲と、荷主・倉庫・運送会社への影響

改正物流関連2法では、まず「特定大手事業者」とされる一定規模以上の荷主企業・運送会社・倉庫事業者が主な対象となります。具体的な規模要件や基準は、今後の政省令やガイドラインで示されますが、大量の貨物を扱うメーカーや小売、全国展開している物流企業などが中心になる見込みです。

これらの事業者には、トラックの積載効率向上や「荷待ち2時間ルール」への対応、業務進行状況をデータで管理する仕組みづくりなど、従来より踏み込んだ取り組みが求められます。

その結果、行政への報告や証跡管理の事務負担だけでなく、業務フロー見直しやシステム導入、社内で物流全体を統括する体制づくりも必要になります。直接の義務対象ではない中小規模の事業者も、大手荷主や大手物流企業からの要請を通じて、契約書の整備や荷待ち時間の把握、データ共有の仕組みづくりなどに対応していく必要があります。

改正物流関連2法に対応するための実務課題

法改正への対応では、現場レベルの運用を見直すことが不可欠であり、特に「時間」と「証跡」をどう管理するかが大きな課題になります。

荷待ち・荷役時間を「正確に計測・記録する」難しさ

改正物流関連2法では、荷待ち時間や荷役時間を正確に把握し、記録として残すことが重視されています。しかし現場では、タイムカードや紙の伝票、表計算ソフトへの手入力、担当者の目視など、従来型の方法に頼っているケースが多いのが実情です。こうしたやり方では、次のような問題が生じやすくなります。

  • 記入漏れや時間の書き間違いが起きやすい
  • 担当者の感覚や都合で時間が記録されてしまうことがある
  • 後から第三者に説明できるだけの客観性に欠ける

ドライバーの総拘束時間や休憩時間を正しく把握し、労務管理の裏付けとなるデータを残すことも難しくなります。時間データを自動で取得できるデジタルツールの導入が望ましいものの、機器やシステムの導入コスト、既存システムとの連携など、ハードルを感じる企業も少なくありません。それでも、「客観的で第三者にも説明可能な証跡」を整備することは、今後避けて通れないテーマになります。

紙・表計算ソフト・目視管理の限界と、証跡としての弱さ

紙の帳票や表計算ソフト、目視による管理は、これまで多くの物流現場で当たり前に使われてきましたが、記録ミスや紛失、後からの書き換えといったリスクは避けきれません。必要な情報を集めて行政や荷主に報告する際も、ひとつひとつ資料を集計・確認する必要があり、事務負担が大きくなります。

一方、クラウド型のシステムや専用ツールでデータを自動記録すれば、記録の抜け漏れや改ざんリスクを抑えつつ、必要な情報をすぐに検索・抽出でき、行政報告や社内レポートの作成も効率化できます。法令遵守と業務効率化を両立するには、紙や目視中心の運用から、デジタル前提の管理への移行が重要になります。

デジタルタコグラフや位置情報サービスの課題

デジタルタコグラフや車両の位置情報サービスも、時間管理や証跡取得の手段として広く利用されています。ただし、これらの仕組みだけで法改正への対応が完結するとは限りません。よくある課題としては、次のような点が挙げられます。

  • 自社の常用車両にしか対応しておらず、スポット便や協力会社の車両はカバーできない
  • 機器の操作やステータス変更をドライバーが行う必要があり、現場負担が増えやすい
  • 機器の操作履歴を含めた「第三者から見た客観性」をどこまで担保できるか

「どの車両であっても、誰が見ても納得できる形で、荷待ち・荷役の状況を確認できること」が今後のポイントになります。そのためには、自社車両かどうかにかかわらず広く車両をカバーできる仕組みや、倉庫やセンターの入退場を軸にした管理方法なども検討対象になります。

法改正に備える具体策3つ

ここからは、改正物流関連2法に備えて、現場で実践しやすい具体策を3つに絞って整理します。

対策1:積載効率の向上と共同配送・モーダルシフトの検討

積載効率の向上は、輸送コストだけでなくCO₂排出量の削減にも直結します。法改正でも、トラック1台あたりの積載率向上や空車回送の削減が重要テーマとされています。具体的には、次のような取り組みが有効です。

  • 近隣の取引先やグループ会社との共同配送
  • 鉄道・船舶を組み合わせたモーダルシフトの検討
  • 積み合わせやルートの最適化による積載率の向上

対策2:荷待ち時間の短縮に向けた受付・搬入プロセスの見直し

「荷待ち2時間ルール」への対応でもカギとなるのが、受付から搬入までのプロセス改善です。ドライバーがどこで、なぜ待たされているのかを分解すると、多くの場合「順番管理」と「情報の行き違い」に原因があります。まずは、次のような点から見直しを進めます。

  • 搬入時間の事前予約や時間帯指定のルール化
  • 受付方法や必要書類の標準化
  • 到着順だけに頼らない優先順位付け(予約優先、時間指定優先など)

これらを徹底するだけでも、無駄な待機時間は大きく減らせます。さらに、予約システムや入退場管理システムを導入し、受付や入退場の情報をデジタルで管理すれば、誰がいつ来るのかを事前に把握しやすくなります。倉庫側の人員配置やドック割り当ても計画的に行えるようになります。

対策3:デジタル技術(車番認識AI・TMS・入退場管理)の活用

法改正後は、「いつ・どの車両が・どれくらい待機したのか」といった情報を、客観的な証跡として残すことが求められます。その際に有効なのが、次のようなデジタル技術です。

  • 車番認識AIカメラによる、車両の入退場時刻の自動記録
  • TMS(輸配送管理システム)による配車計画と実績の一元管理
  • 倉庫や工場ゲートでの入退場管理システム

これらを組み合わせることで、荷待ち・荷役時間を自動で可視化でき、ドライバーや現場担当者が都度手入力する負担を減らせます。記録の改ざんリスクが低く、行政や荷主への報告データとしても信頼性が高い点もメリットです。

改正物流関連2法対応を支えるTRASCOPE-AIとは?

丸紅I-DIGIOグループが提供するTRASCOPE-AIは、物流拠点での「車両の入退場」と「滞在時間」を自動で記録し、荷待ち・荷役時間を客観的なデータとして残せる入退場管理ソリューションです。改正物流関連2法で求められる荷待ち時間の把握や証跡管理を、紙・表計算ソフト・ドライバー入力に頼らず行えるようにします。

荷待ち・荷役時間を「客観的データ」として可視化

改正物流関連2法では、荷待ち時間や荷役時間を正確に把握し、第三者にも説明できる形で記録しておくことが重視されています。紙の記録や口頭報告、表計算ソフト管理だけでは、証跡としての客観性や信頼性に不安が残ります。TRASCOPE-AIは、施設の出入口に設置した車番認識カメラで、車両の入退場時刻を自動で取得します。これにより、以下の記録を、人手を介さずに残すことができます。

  • 車両ごとの施設滞在時間(荷待ち・荷役時間の把握に活用可能)を自動算出
  • 入退場時の静止画とともに、「いつ・どの車両が出入りしたか」を客観的に説明できるデータとして保存

データは日別・時間帯別・拠点別などに集計して確認でき、CSV出力で行政提出や社内報告にもそのまま活用できます。

ドライバー負荷を増やさない入退場管理

従来のデジタルタコグラフ方式のように、ドライバーのボタン操作を前提とした仕組みは、スポット便や協力会社車両まで含めた運用が難しいという課題があります。TRASCOPE-AIは車載器を使わず、ゲート側のカメラで全車両を自動検知する方式のため、次のような特長があります。

  • 自社車両・協力会社車両・スポット便を問わず、一律に入退場を自動記録
  • ドライバーの操作は一切不要で、既存の運行に負担をかけない
  • 入退ゲート設備との連動や誘導オペレーションの工夫により、ゲート通過の迅速化や停車位置案内など、受付〜入場のムダ時間削減にもつなげられる

まずは「荷待ち2時間ルール」への対応や、拠点ごとの滞在時間の見える化から始めることで、法改正対応に必要な証跡づくりと、現場の業務改善の両方を進めることができます。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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