AIシステムを効率的に開発。3つの注意点と外注先の選び方を解説

AIをビジネスで活用するためには、AIシステムの開発が不可欠です。本稿では、AIシステム開発の標準的なプロセス、開発する際の注意点、また、AIシステム開発を外注する際の依頼先選定のポイントについて解説していきます。

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AIとは?

AIとは、Artificial Intelligenceの略称で、「人工知能」と訳されます。人間の知能のような思考プロセスを実現するコンピュータプログラムのことを指します。

1950年代、アメリカの科学者ジョン・マッカーシーが初めて「AI」という概念を提唱して以来、3度のAIブームを経てきました。

現在の第3次AIブームは2000年頃から始まり、インターネット上の膨大な情報を学習・推論する「ディープラーニング」が可能になった2010年から実用化が始まりました。現在、AIはビジネスだけでなく、医療、交通、災害対策など幅広く活用されています。

AIの利用例

たとえば製造業では、完成品の外観検査にAIが活用されています。従来は人間が目視確認していましたが、現在は専用カメラで製品を撮影し、その画像を使って検品しています。

また、AIは製品の販売予測(需要予測)にも活用されています。季節変動が大きい製品もあるため、より正確な生産計画を立てるためにも販売予測(需要予測)は重要です。

このように、AIは今日、ビジネスシーンでさまざまな形で活用されています。

AIシステムとは?

AIは「人工知能」と訳され、人間に置き換えると「脳の一部」ということになります。脳だけでは考えることはできても、何かをアウトプットすることはできません。たとえば、AIに何らかのデータを与え、AIが目的に応じた回答をアウトプットする場合、データの読み取り、AIモデルによるデータ処理、処理結果のアウトプットといった一連の仕組みが必要になります。その一連の仕組み全体がAIシステムです。

AIシステム開発とAIモデル単体の開発との違い

AI(人工知能)は、概念的には「人間の知能のような思考プロセスを実現するコンピュータプログラム」としか定義されていません。そして、そのAIを実際に具現化したものがAIモデルです。データをインプットし、そのデータを処理し、何らかの判断を下すまでが一連の流れです。

AIモデルは、ある目的に沿ってインプットされたデータを処理し、何らかのアウトプットをするコンポーネントとして機能し、AIシステムの一部を構成します。

つまり、AIシステム開発では、まずAIモデルを開発し、そのAIモデルを組み込んでAIシステムを開発する流れになります。

AIシステム開発の3つのプロセス

実際のAIシステム開発プロジェクトは、一般的に以下の3つの手順で進みます。

1. AIで解決したい課題の整理

まず、AIを活用してどのような課題を解決したいのかを整理します。すでに例として挙げたように、「製品の外観検査を効率的に実施したい」「需要予測をできるだけ正確にしたい」など、目的を明確にすることが重要です。加えて、AIに代替させたい業務の適用範囲やレベルを明確にすることも必要です。これが整理されていないと、完成したAIシステムが問題を解決できず、弊害をもたらす可能性があります。

AIが解決すべき課題が明確になったら、その課題解決に最適なAIモデルのベースを選定します。たとえば、インプットされた外観検査の製品画像の良否を判定するAIシステムを開発する場合、教師あり学習のAIモデルベースを使うのが適しているのか、教師なし学習、あるいは強化学習、ディープラーニングが適しているのか、といったことを選定します。

2. データ準備とAIモデル実証実験

AIが解決すべき課題が明確になり、その課題を解決するためのAIモデルのベースが選定されたら、当該AIモデルに読み込ませるデータの準備を進めます。先ほどの「外観検査の合否判定」の例でいえば、合格品・不合格品の画像100枚でAIモデルを構築するよりも、画像500枚を使った方がAIの精度は向上します。データ量も重要ですが、同時にさまざまな種類の画像を用意することも重要です。光の当たり方を変えた画像、発生しうる不合格パターンごとの画像、異なる類似製品の画像など、派生的な画像を含めたバリエーションの豊富さも精度向上のポイントです。

一般的に、用意するデータには「学習用データ」と「推論用データ」の2種類があります。学習用データをできるだけ多く用意することで、合格品と不合格品の特徴をより高い精度で判別基準にすることができます。

次に、出来上がったAIモデルに推論用の画像データを読み取らせて、外観検査の合否を判定させます。これがAIモデルの実証実験となります。AIモデルが目指している精度で判別できれば、AIモデルは完成します。しかし、AIモデルが目指している精度に達しない場合は、学習用データを増やすか、AIモデル自体をチューニングすることで、AIモデルの精度を向上させます。

3. 実運用に向けたAIシステム構築

完成したAIモデルをAIシステムに組み込んで実用化します。AIシステムの構築にあたっては、操作性や画面の見やすさなど、インターフェイスをはじめ、業務で使いやすいものにしていきます。

AIシステムを開発する際の3つの注意点

AIシステム開発を効率的に進めるためには、以下の3つの注意点があります。

1. AIモデルの精度、作業補助

AIシステムを運用する際の留意点として、AIモデルの精度は決して100%ではないということです。解決すべき問題の種類によって精度は異なりますが、100%の精度を持つ完璧なAIなど存在しません。

AIシステムの導入には、特定の業務の効率化、判断基準の統一化、従来費やしていた工数やコストの削減といったメリットがあります。しかし、人が全く介在しないということはありません。採用するAIモデルやAIシステム自体が担う業務範囲にもよりますが、ある程度の人的な作業補助は不可欠であることを理解しておく必要があります。

2. 必要に応じた機器選定

AIシステムは、あるデータがインプットされると、AIモデルで処理し、結果をアウトプットします。インプットするデータが画像であればカメラ、音声であればマイクなどが必要になります。

精度の高いAIシステムを構築しても、そこにインプットされるデータの質が悪ければ、アウトプットの精度も落ちてしまいます。そのため、画像データを処理するのであれば、一定の画質が確保でき、使用環境に適したカメラ機器を選定することが非常に重要です。

3. AIの利用に最適なシステム

AIシステム自体が優れたものであっても、利用者の業務フローに合わせたものでなければ、業務効率が上がらないという弊害が生じる可能性があります。そのため、AIシステムを準備する前に、AIの中身を理解しておく必要があります。

たとえば、既存のシステムに、別途AIモデルを開発し組み込む場合、開発ベンダーが異なるため、AIを動かすのに最適なシステム環境にならないケースもあります。より良いAIシステム開発のためには、外注に際して、AIモデルの開発と、それを組み込むAIシステムの開発をワンストップで行うことが望ましいです。

既存システムを開発しているベンダーとは別の業者が開発したAIモデルやAIシステムを組み込む場合、プロジェクトの初期段階で既存システムの環境を確認し、AIを取り込むためのシステム改修を含めた取り組みをする必要があります。

AIシステム開発の依頼先を選定する3つのポイント

実際のAIシステム開発を進める際には、外部のパートナー企業に依頼することになります。その際、以下の3つのポイントに沿ってパートナー企業を選定することが、AIシステム開発プロジェクトを成功に導く重要なポイントとなります。

1. 要件定義からシステム保守まで一貫したサポート体制があるか

AIシステム開発の前段階として、課題解決のためにどのようなAIシステムを開発すべきか要件定義することや、さらにその前段階として課題を整理することが重要です。そのため、AIシステム開発の経験が豊富で、その経験や実績をもとにAIシステム導入の事前コンサルティングができる依頼先を選定する必要があります。

また、AIシステム開発後の運用ステージにおける保守・サポートなどのアフターサービスを一貫して任せられるかどうかも見極める必要があります。

2.幅広い提案が受けられるか

企業が課題解決にAIの導入が不可欠だと考えていても、実はその課題を解決する最適な方法はAIではないケースも少なくありません。

そこで、AIシステム開発を委託する前提の場合でも、AIシステムだけでなく、幅広い提案力を持つ依頼先を選定することが重要なポイントです。AIシステム開発に特化した開発ベンダーの場合、解決方法がAIでなくなると、依頼先の選定をやり直すことになります。しかし、AIシステムに限らず、幅広いソリューションを提案できる依頼先であれば、依頼先の選定をやり直す必要はありません。

3. AIやシステム開発における知見・ノウハウの有無

もちろん、最も重要なのは、AIやシステム開発に関する深い知見と、実績に裏打ちされたノウハウを持っているかどうかです。それを見極めるコツは、過去のAIシステム開発の実績や、AIシステム以外のシステム開発の実績を確認することです。

AIシステム開発の事例

AIシステム開発の事例を一部ご紹介します。

駐車場の出庫待ち時間予測

あるショッピングモールでは、併設する立体駐車場の混雑が問題になっていました。休日の混雑時には、駐車場から出るまでに時間がかかり、利用者はどのくらい待たされるのかわからず不満が募っていました。そこで、駐車場を出るまでの待ち時間を予測するAIモデルを開発し、利用者に待ち時間の目安を表示するAIシステムを開発しました。駐車場の混雑予測の場合、天候やイベントの実施状況などさまざまな条件が複雑に絡み合うため、AIの予測精度を高めることは非常に困難です。そこで、AIシステムとして、管理者が自らの経験をもとにその場でAIをチューニングすることで、より精度の高い待ち時間予測を可能にしています。

産業廃棄物の過積載予測

ある産業廃棄物処理会社では、建設解体現場などで発生する廃棄物をコンテナに積み込み、一定量が溜まったら搬出しています。しかし、鉄やコンクリート、木材などさまざまな種類の廃棄物を積み込むため、全体の重量を正確に把握することができず、過積載のリスクが常にありました。そこで、コンテナに専用カメラを設置して廃棄物を撮影し、AIで廃棄物の材質や大きさを読み取って重量を計算し、過積載重量になる前に担当者に通知するAIシステムを開発しました。

AIシステムの開発には幅広いノウハウをもった企業からのサポートが必要

丸紅情報システムズは、AIシステム開発をはじめ、さまざまなテーマのシステム開発やIoTソリューションなどを手掛けています。

前述の事例のように、さまざまなAIシステムの開発実績があります。場合によっては、AI以外のソリューションの方が効果的で費用対効果が高いケースもあります。そのような場合、丸紅情報システムズではさまざまなソリューションを取り揃え、AIシステム以外の課題解決もワンストップでサポートできます。また、システムのセキュリティ対応やネットワークなどのインフラ部分も幅広くサポートが可能です。さらに、丸紅グループならではのネットワークと調達力により、AIシステムに最適な機器を提供することができます。

このような総合力を活かし、丸紅情報システムズは、幅広いAIシステムの開発をワンストップで提供します。

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