製造業において、生産効率向上は常に最優先課題である。多くの現場において、そのために設備の自動化が進められている。しかし、どれほど設備を自動化しても、期待したほどの成果が得られないケースも少なくないようだ。
本稿では、「iField」の開発元であるマルティスープ株式会社 ビジネス・グロースDept マーケティングチーム アシスタントマネージャー 玉造 伸一 氏と、丸紅I-DIGIOグループ デジタルソリューションセグメント グローバル事業本部 グローバルソリューション部 吉澤 歩に、製造現場が抱える真の課題とその解決策、さらには位置情報が切り拓く自動化の未来について詳しく話を聞いた。
設備の自動化が進んでも生産効率が向上しない製造現場の課題
――製造現場では、設備の自動化が進んでいるにもかかわらず、思うような生産効率の向上に至らないことがあると伺いました。その原因はどこにあるのでしょうか。
玉造氏 製造現場には古くから「3M(マン・マシン・マテリアル)」という考え方があります。「人・設備・物」の3要素ですね。現在、多くの製造現場で設備の自動化が進み、設備側の稼働情報、つまり「マシン」に関するデータは非常に精度高く取得できるようになりました。しかしその一方で、設備を動かす「人」や、そこに投入される「物」の情報に関しては、依然としてアナログな管理に頼っている現場が非常に多いのが実情です。
設備単体の効率が上がっても、前工程からの部材が届くのを人が待っていたり、人による部材の搬送やセット作業にムダな動きがあったりすれば、工場全体の生産性は上がりません。現場全体を最適化するためには、設備のデータだけでなく、そこに関わる「人」や「物」の情報を正確に把握し、つなぎ合わせる必要がありますが、現在はそのデータが圧倒的に不足しているのです。
吉澤 付け加えるなら、設備が高速化すればするほど、人や物の停滞がボトルネックとして顕著に現れるようになります。例えば、ラインが止まった際、熟練の作業員がすぐに対処すれば3分で済みますが、不慣れな作業員だと10分かかってしまう。この「7分の差」がなぜ生まれたのか。あるいは、ラインの間に置かれた仕掛品がどこでどれだけ滞留しているのか。これらは従来の「結果(出来高)だけを見る管理」では見えてこない部分です。設備を自動化しても、それをつなぐ「人の動き」などを管理できていなければ、真の全体最適は実現できないのです。
製造現場の生産効率向上に向けた課題解決の方向性
――製造現場が抱える生産効率の向上を阻害している課題の解消にはどのような取り組みが必要になるのでしょうか。
玉造氏 重要なのは「結果」だけではなく「過程(プロセス)」を可視化することです。従来、多くの現場では「この時間内に何個作れたか」という結果データはMES(製造実行システム)などで取得できています。しかし、「なぜその結果になったのか」という「理由」を分析するためのデータがありませんでした。
製造現場の改善において大切なのは、ムリ・ムダ・ムラをなくし、標準化された再現性のある作業を実現することです。そのためには、作業の過程において「誰が、どこで、どの作業に、どれだけの時間を費やしたのか」という客観的かつ精緻なデータを取得し、それをベースに「なぜ」を深掘りしていく取り組みが不可欠です。

具体的には、これまでの手書きの作業日報や、記憶に頼った管理などから脱却する必要があります。手書きの帳票は記載漏れや記入ミスのリスクが常にありますし、管理側と現場側との間で「計画が未達だった」「いや、現場は頑張っていた」という主観的な水掛け論に陥りがちです。
こうしたズレを解消するには、位置情報や動線、滞留状況といった客観的な「事実」をデータとして蓄積し、管理側と現場側が同じデータを見ながら対話できる環境を作ることです。また、ベテランの「勘と経験」に頼るのではなく、誰でもデータに基づいて正しい判断ができる仕組みを構築すること。少子高齢化による人手不足が進む中で、こうしたデータドリブンな管理への移行こそが、課題解決の最善策だと考えています。
位置情報の活用を高効率・高精度で実現するためのソリューション「iField」
――現場情報プラットフォームである「iField」の活用が生産効率向上に有効だとのことですが、「iField」とはどのようなソリューションですか。
玉造氏 iFieldは、位置情報を中心に、センサー情報やアプリケーション機能を組み合わせた現場情報プラットフォームです。私たちの代表はよく「位置情報はインフラになる」と言っていますが、まさに現場のあらゆる活動を自動的に計測し、可視化するためのインフラとなるサービスです。
まず、iFieldの基盤となる位置情報には大きく3つの要素があります。1つ目は「自動的」であることです。人の手を介さずデータを取得します。2つ目は「リアルタイムな状況把握」ができること、そして3つ目は、それらがデジタルデータとして「記録・蓄積」されることです。リアルタイムのマップ表示で「今、誰がどこにいるか」を把握するだけでなく、蓄積されたデータを分析することで、動線や作業時間の管理を可能にします。
さらにiFieldは、現場の業務を効率化するためのアプリケーションも多数備わっています。エリア進入をトリガーとした自動処理をはじめ、報告書の作成、作業指示なども併せて活用いただくことで、より詳細な作業情報や予実管理ができるサービスです。
吉澤 導入のしやすさと柔軟性も大きな特徴です。iFieldはスマートフォンや、当社(丸紅I-DIGIO)が提供する高品質な日本製Bluetoothビーコンを組み合わせて利用できます。これまで、こうした管理によく使われていたカメラによる管理と比較すると、iFieldの優位性は明確です。カメラによる管理の場合、高価な本体費用に加え、設置工事や配線、さらには高所作業のリスクやラインを止める必要性など、導入ハードルが非常に高くなります。一方、iFieldはビーコンを設置し、作業員がスマホや小型タグを持つだけで利用を開始できるため、安価かつスピーディーに現場全体の可視化が可能です。
また、カメラには「死角」の問題や、作業着を着た個人の識別が難しいという課題がありますが、iFieldはID(アイデンティティ)に基づいた管理が原則です。さらに、カメラは顔が映ることで現場作業員に監視されている感覚を与えてしまい、心理的な抵抗感を醸成しがちですが、位置情報データであればそうした障壁も低く、スムーズに受け入れられるという特徴もあります。
玉造氏 さらに技術的な強みとして、iFieldは「アダプター方式」を採用している点が挙げられます。特定の測位技術に縛られることなく、デバイスや通信の進化に合わせて屋内・屋外の多様な測位技術に標準対応しています。お客様の目的に合わせて「精度重視」なのか「コスト重視」なのか、最適なハードウェアと精度の組み合わせを提案できるのは、大きな優位性であると自負しています。私たちは単なる「位置情報屋さん」ではなく、現場のデータ収集から分析を一気通貫で提供し、現場DXを推進する「デジタルツインソリューションベンダー」でありたいと考えています。
動線分析などにより、生産効率が大幅に向上
――「iField」の導入により、生産効率向上などに成功した事例をご紹介ください。
玉造氏 実はここ数年で、継続的に工場を管理するためのシステムとしてご利用いただくケースがかなり増えてきました。その例として、1つ目は食品メーカーのお客様の事例です。このお客様は「人員の最適配置による省人化」を目的にiFieldを導入されました。一人の作業員が複数の工程を受け持つ現場において、実際どの工程にどれだけの時間を費やしているのか、また一時的な別工程の作業がどれほど発生しているのかを、従来の手書き記録では正確に把握できずにいました。
iFieldの導入により、各工程に設置したIoTゲートウェイと作業員が持つビーコンによって、工程ごとの滞在時間を自動的に計測し、「作業時間」をデータ化しています。工程間の流動性も自動的に捉えることで、人員の最適配置や多能工化の推進に必要な情報を自動収集しています。このデータをもとに最適な人員配置を行うことで、工場全体の省人化と、多能工化による生産効率の最大化、人的投入原価の精度向上を実現されています。
2つ目は、産業用ロボットアームを製造しているメーカーの事例です。ここでは組み立てラインの工程管理にiFieldを導入いただきました。導入前は、手書きによる工程管理でしたが、現場改善や生産性向上を進めるには記録の単位が粗く、さらにはデータの2次活用が難しい状況でした。先ほどの食品メーカーさんの例も同じですが、より細かい単位の工程管理を行おうとすると現場の運用負荷が大きくなってしまう。その結果、記録の正確性も低くなってしまうというのは多くの企業が感じている課題だと思います。
iFieldの導入により、仕掛品と一緒に動く作業指示書にビーコンを取り付け、各工程の滞在時間を「タクトタイム」として自動集計しました。工程管理を自動化することで、管理の単位を細分化しつつ、データの2次活用ができる環境になりました。
こうした蓄積された滞在時間を各工程の標準作業時間と比較したり、「ヒートマップ」で仕掛品の滞留を分析したりすることで、ボトルネックの工程の特定ができました。管理側と現場側が同じ分析結果を見ながら対話した結果、前段取りに時間がかかることがボトルネックの原因となっていることが見えてきました。
こうしたデータの裏付けをもとに、前後の工程の順番を入れ替えるなどの改善策を実施したところ、該社では製造リードタイムを26%削減、さらに仕掛在庫数を60%も削減するという驚異的な成果を上げられました。iFieldによって工程管理を自動化したことに加え、「どこに問題があるか」を客観的に特定し、改善のビフォーアフターを即座に確認できるPDCAサイクルが確立された好例といえると思います。
データドリブンな現場改善の重要性と、「iField」が目指す未来
――製造現場などにおけるデータに基づく改善の重要性と、そこに資する「iField」の今後の可能性などについてお教えください。
玉造氏 今後、人手不足はさらに加速します。その中でQCD(品質・コスト・納期)を維持・向上させるには、属人的な「勘と経験」による管理から、信頼性の高い「データ」に基づく管理への転換が不可欠です。iFieldが提供する位置情報は、まさにその改善活動を支えるインフラとなります。
さらに私たちは、AIを活用してデータをより解釈しやすくする「正規化」の取り組みも進めています。将来的には、iFieldで取得された現場の活動情報に基づいた作業推定、あるいは自動で作業指示を出すといった「ロケーション・ベースド・オートメーション(位置情報に基づく自動化)」の世界を目指しています。生成AIの発達により、その未来はすぐそこまで来ています。
吉澤 製造現場において、すべての工程をロボットで自動化できるわけではありません。コスト面や品質面で「人」の力が必要な領域は必ず残ります。だからこそ、その「人の動き」をいかに精度よく、効率的に可視化し、改善につなげられるかが勝負になります。
丸紅I-DIGIOとしては、iFieldという優れたプラットフォームに、当社の高品質な日本製ビーコンや長年の導入ノウハウを掛け合わせることで、お客様の現場をよりスマートに進化させていきたいと考えています。導入して終わりではなく、データを通じて現場が変わり、生産性が向上し続ける。そんな伴走型のサポートを通じて、製造業のDXに貢献していきます。

――設備の自動化という「ハード」の改善だけでなく、位置情報という「データ」を活用して「人」と「物」の動きを最適化する。iFieldがもたらすのは、単なる可視化を超えた、製造現場の意思決定そのものを変えるイノベーションであるといっても過言ではないだろう。今現在、現場の効率改善に課題があるのなら、iFieldの導入を検討してみる価値は大きいに違いない。
iField お役立ち資料
iFieldの紹介資料をダウンロードいただけます。