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画期的なAR技術で、3D CADデータと現物の差分をインタラクティブに目視検査

製造の現場では欠かすことのできない目視検査。重要な工程であるにもかかわらず、自動化やDX化が遅れている分野でもある。人的なアナログ検査では、たとえば全数検査ともなれば、そこに要する時間と労力は膨大なものになりかねない。そんな目視検査を極めて効率的に実施できるのが、AR技術を利用したインタラクティブ検査だ。

本稿では、アナログな目視検査の問題点や課題を明確にしつつ、その解消に役立ち、かつ目視検査の作業効率を高いレベルで改善してくれる「SuPAR」の利用メリットなどについて、丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部 計測ソリューション技術部 技術四課 課長 宮下 進太郎と、製造ソリューション事業本部 計測製造ソリューション部 スペシャリスト 唐澤 豪朗に話を聞いた。

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目視検査が抱える課題や問題点

製造の現場では、仕入れた製品や部品、あるいは出荷予定の製品・部品などに関して、受け入れ時あるいは出荷前に目視検査が行われる。大まかな形状不具合を選りすぐることで、精密な検査システムやセンサーで多大な時間を掛けてまで行うまでもないような、検知しやすい不具合状態を人の目で選別してしまう行為である。
※本稿では、目視検査には、製品の「見た目の美しさ」を左右する微細な傷やゆがみを探し出す「外観検査」を含まない

目視検査は、設計CADデータがある場合には、当該CADモデルと現物の形状を比較して行われるのが一般的である。

「そもそも目視検査には、たとえば部品などの場合、各部の寸法や形状などの状態をCAD図面と比較してきちんと確認し、次の工程に不良品を流さないようにするという重要な役割、目的があります。万が一、当該部品の不具合に気づかずに製品に組み付けてしまうと、製品自体が不良品となってしまいます。こうした目視検査は重要であるにもかかわらず、DX化が遅れている分野であり、未だに、紙にプリントした検査図面やパソコンの画面と実物を見比べて行われているケースが多く見受けられます。検査図面やPC画面と実物の間で視線を何度も行き来させる必要があるため、見逃しのリスクも高くなりますし、検査作業にも時間がかかってしまい、効率が悪いという弊害も生まれます」と唐澤は問題点を指摘する。

こうした問題を解消するためには、検査員に対して検査のポイントや注意点などを提示したり、検査箇所を明示したりできるようなツールが、現場では求められているという。そうしたツールを活用することで、検査員はその提示されたポイントに沿って素早く目視検査を行うことができ、そして見逃しのリスクも軽減できる。

唐澤は、さらに2つの目視検査の課題・問題点を指摘する。
「1つ目は、従来の目視検査では、エビデンスがデジタル形式で残らないことが多いという点を挙げられます。どこをどう検査し、どの数値を確認したのかといった記録がなかったり、あるいは手書きのアナログ形式のまま残していたりといった状況であると、何か問題が発覚した際のトレーサビリティが容易ではないのです。さらに2つ目として、検査自体には直接お金を生む効果がないので、どうしても検査に関する設備投資は後回しにされがちだという点があります。そのため、有効なツールがあったとしても導入が進まず、結果的に検査の自動化技術の現場への浸透が遅れがちになっています。」

目視検査の課題・問題点を、どう解消すべきか

多くの製造現場において、次工程へ渡す前や、納品先への出荷前、あるいは受け入れ時に、不良品の流出や流入を防ぐために目視検査が行われている。

「目視検査には人手がかかります。しかし品質保全のために製品の全数を検査するようなケースでは、人手に頼っていては検査の効率化や時間短縮を実現することはとても難しいと言わざるを得ません。そのため、目視検査の効率化・円滑化のためには何らかのツールの活用が望まれるのですが、目視検査の中には高難易度であるために、何らかのツールに置き換えて自動化を図ることが難しいといったケースも多々あります。しかし、そうした状況を解消し、目視検査を効率化するためのソリューションとして、拡張現実(AR:Augmented Reality)を用いたインタラクティブ目視検査が注目を集めています」と宮下はいう。

AR技術で、目視検査の効率を劇的に高める「SuPAR」

丸紅情報システムズが提供する、AR技術を利用したインタラクティブ検査ツール「SuPAR」は、まさにインタラクティブな目視検査を実現し、さまざまな目視検査の課題・問題点を解消してくれるソフトウェアである。ARにて、iPad Proの画面にフィッティング(重ね合わせ)される3D CADモデルと現物を見比べ、3D表示されているライン(カーブ)と実物のエッジに誤差がないかどうかの目視比較を補助してくれる仕組みだ。

つまり、AR技術によって、現実の視界に仮想の情報を盛り込むことができるため、参照したい情報を探すために目線をあちらこちらへ移動する必要を最小範囲に抑えられるのである。

「目視検査に『SuPAR』を活用することで、検査にかかるトータルの工数を大幅に削減し、業務を効率化することが可能になります。検査工程においては、事前に図面を用意したり、手順書を作成したりといった準備が必要です。検査の結果をレポーティングするということにも一定の時間と労力を費やします。目視検査そのものの効率化もさることながら、その前後にある各種の工程自体も含めて考えると、極めて高いレベルでの効率化が可能になります。」と唐澤は話す。

「そもそも目視検査というものについて『SuPAR』が果たす役割というのは、インタラクティブな目視検査環境を提供するという点にあります。それによって、3D CADのデータをベースとした目視検査プロセスを劇的に効率化し、最大で90%の時間短縮を実現します。この機能は『SuPAR」』の大きな特徴で、競合製品と比較しても圧倒的な優位性になっています。CADのデータというのは、“こういうものを作りたい”というアイデアの塊のようなものです。そのアイデアの塊であるCADの内容と、実際にでき上がってきた現物の差分を発見することが目視検査の目的です。それをタブレット端末などを使って機動的に実現することで、目視検査にかかる事前の準備を極力軽減し、検査作業自体も効率化し、かつレポーティングもサポートしてしまおうというのが、『SuPAR』の基本的なコンセプトなのです。」と唐澤は続ける。

「SuPAR」のAR技術の優れた点は、従来であればハイエンドのワークステーションなどを使って実行するような計算を、iPad Pro上で動作する独自の高速なオブジェクトトラッキングエンジンで可能にしたことにある。iPad Proから得られる、カメラの映像データ、LiDARスキャナによる深度情報、慣性センサによる動作検知、これらに基づき当該エンジンが3D CADモデルを映像データにベストフィットするような位置合わせをリアルタイムで継続する。これによって、ユーザーの移動やタブレット姿勢の変更に伴う視点移動が生じても、現物に即した向きや大きさの3D CADモデルが画面上で常に重畳した状態を維持できるのだ。

さらには、インタラクティブな目視検査を実現するためのグラフィカルユーザーインタフェースが充実しており、3D CADモデルのサーフェス透過度やエッジ表示有無、検査に必要な公差情報、検査すべきポイントの位置指示、差異の存在可能性といったさまざまな仮想の情報レイヤの表示をユーザー自身が自在にコントロールできるので、検査し記録を残すという基本的な目視検査作業を、iPad Proだけでを完結することができる。測定のための機器やゲージ、記録のためのツールなども一切不要なのだ。
※検査項目などの事前設定はPCアプリで行います

「SuPAR」の特徴、優位性ポイント

「SuPAR」の際立った特徴、優位性について、宮下は次のように説明する。

「1つ目は、特別なマーカーなどを置かなくても、対象となるオブジェクトをトラッキングできるという点です。ごく標準的なARの場合、マーカーとなる二次元コードなどをオブジェクト側に置いて、それを手がかりにして画像データを表示しますが、『SuPAR』では、そうしたものが一切不要です。」

「2つ目としては、AIモジュールを追加することで、目視検査におけるOK/NG判定をAIに任せることができます。この機能はオプションではありますが、これを使うことで、ユーザーはiPad Proで対象物を映すだけで、あとは『SuPAR』が高速で自動判定してくれます。現時点では、このAIモデルはスポット溶接打点AIと、穴AIで、指定された公差範囲内に『スポット溶接打点があるか否か』、『穴が開いているか否か』の判定を高速に実現します。たとえば、スポット溶接打点AIにおいては、溶接打点の色や明るさ、大きさ、形などの異なる大量の画像を使った機械学習により、高速判定を可能にしています。また誤りのバイアスについても溶接の目的に考慮されており、打点がないのに「ある」と誤判定する確率は極めて低く、逆に打点があるのに「ない」と誤判定するような、安全を担保する傾向にあります。AIが「ない」と判定した箇所のみを人的に確認するだけで済むので、作業効率は高まります。」

「3つ目は、目視検査に特化したグラフィカルユーザーインタフェースを搭載していることで、不具合発見や記録を効率的に実施できるという点です。目視検査の作業効率を強力にサポートする機能を多数搭載しており、また判定状況の証拠写真キャプチャ、注記入力といった記録作業も効率的に実施できます。」

「4つ目は検査結果のレポート出力機能です。レポートはPDF形式やExcelファイル形式に対応しており、結果レポートとして必要な画像なども盛り込みながら、スピーディなアウトプットが可能です。」

こうした優位性があることによって、「SuPAR」を使った目視検査では、問題発見の高速化や簡素化、そして精密な検査準備の短時間化が可能になるというメリットが生まれる。

現物に「SuPAR」を搭載したタブレットなどのカメラを向けるだけで、問題がありそうな箇所を示してくれる。精密に行う本検査に先立って、予め用意すべき資料などの内容も簡素化できる。

自動車産業を中心に、導入が進む「SuPAR」

「SuPAR」は、分野を限定することなく、目視検査を必要とするあらゆる製造の現場で業務効率を改善することが可能だ。現時点では自動車メーカーを中心に導入が進んでおり、その他の分野では今後普及していくだろうと宮下は予測する。

「私たちが提供する『SuPAR』を活用するためには、3D CADデータが必須です。つまり、3D CADデータを有効活用できる現場であれば、『SuPAR』を導入するメリットがあります。実は、この3D CADデータの活用がもっとも進んでいる業界のひとつが自動車産業です。そのため、現状では自動車メーカーさんでの導入割合が高くなっています。しかしこれからは、自動車産業以外でも3D CADデータの有効活用が進み、それに伴って『SuPAR』の導入が他分野に広がっていくものと考えています」と宮下はいう。

ある自動車メーカーでの導入事例について、唐澤が説明してくれた。

「自動車の骨格部品は、さまざまな板金部品が溶接でつながっているのですが、どこにスポット溶接を施すかは予め決まっていて、それはCADのデータで確認できます。この検査のためには、まずは仕様書や図面、CADモデルといったデータを準備し、検査用にデータ作成をしなくてはなりません。その上で、設計データと現物を見比べながら、きちんとスポット溶接されているかどうかの目視検査が実施されます。そして検査後には、当然そのレポートが作成されます。この一連の検査工程に従来4時間かかっていたものが、『SuPAR』の導入によって、20分ほどに短縮されました。ただ重要なのは、単に時間短縮が実現するということではなく、検査のための準備作業が軽減されたり、検査にあたっての人的な見逃しが大幅に軽減されたり、生産現場へのDX導入が促進されるといった複合的なメリットが生まれるという点にあります。トータルでの時間短縮は、その結果に過ぎません。」

唐澤がいうように、「SuPAR」の導入によって享受できるメリットは多様だ。もし今、目視検査の効率化に課題を感じているのなら、「SuPAR」の導入を検討することをおすすめしたい。

参考:ユースケース

自動車のケース
自動車のケース
重工業のケース
輸送機械(建機、農機、バス、鉄道車両など)のケース
ソフトウェアの構造図(3 in 1)

SuPARお役立ち資料

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ご協力いただき、ありがとうございました。
宮下進太郎
丸紅情報システムズ
製造ソリューション事業本部
計測ソリューション技術部 技術四課
課長
※所属・職名等は記事公開当時のものです。(敬称略)
唐澤豪朗
丸紅情報システムズ
製造ソリューション事業本部
計測製造ソリューション部
スペシャリスト
※所属・職名等は記事公開当時のものです。(敬称略)