千葉県四街道市は、新庁舎の建設・移転を契機に、市役所の業務を支えるICT基盤の心臓部であるネットワーク環境の全面的な刷新・構築に取り組んだ。
旧庁舎時代の「継ぎ接ぎ」による複雑な構成を脱却し、災害時の拠点としての「可用性」、運用にあたって専門知識に依存しすぎない「シンプルさ」、そして将来のさらなるDX推進を見据えた「拡張性」を実現したいという、ネットワークの課題解決が大きなねらいだった。
本稿では、新庁舎ネットワークのプロジェクトで採用されたExtreme Networksソリューションと、その選定理由、導入後の運用評価について、プロジェクトを牽引した四街道市役所 経営企画部 デジタル推進課 デジタル推進係 係長 綿貫 陽一氏と、同デジタル推進係 主任主事 水守 健斗氏のお二人に、お話を聞いた。
- 旧庁舎の物理的な構造に起因するネットワークの「複雑化」と「不透明さ」
- 新庁舎は、災害時の防災拠点となるため、ネットワークに安定性と可用性が必要不可欠
四街道市役所が抱えていたネットワークの課題と解決の方向性
1. ネットワーク配線や機器の複雑化・不透明さの解消に加え、可用性や拡張性の実現が大きな課題
―― 新庁舎への移転にあたり、ネットワーク環境を抜本的に見直す必要があったとのことですが、旧庁舎時代に抱えていた具体的な課題とは、どのようなものでしたか。
綿貫氏 最大の課題は、旧庁舎の物理的な構造に起因するネットワークの「複雑化」と「不透明さ」にありました。旧庁舎は長年にわたる部分的な増改築を繰り返した結果、建物自体が継ぎ接ぎのような状態でした。それに伴い、ネットワークも必要に応じて配線や機器を追加・変更してきたため、構成が極めて複雑で、全体像の把握が困難になっていたのです。変更のたびに多大なイニシャルコストが発生し、保守運用の負荷も増大していました。

新庁舎を建設し、移転するにあたって、まず私たちが最優先事項として掲げたのは「安定性」と「可用性」です。新庁舎は市全体の「防災拠点」としての役割を担うことになります。そのため、災害発生時に市民の安全を守り、行政機能を維持するためには、ネットワークがいかなる状況でも不安定になったり、止まったりすることは許されませんから、ネットワークの「安定性」と「可用性」は、絶対に妥協できない要件でした。
また、デジタル担当としての観点からは、ネットワークの「シンプルさ」も重要なテーマでした。昨今のネットワーク技術は高度化・複雑化の一途をたどっていますが、特定の担当者にしか分からないブラックボックス化を防ぎ、人事異動などで担当が変わってもスムーズに引き継げる、運用のしやすい環境を構築したいと考えました。そしてもちろん、これらに加え、将来的に新しいICT技術を柔軟に取り入れていける「拡張性」を備えることも大切な課題として考えていました。
2. 課題解決に向けてExtreme Networksを選んだ理由、選定の決め手
―― 複数の選択肢がある中で、最終的にExtreme Networksを採用された理由、選定の決め手は何だったのでしょうか。
綿貫氏 大崎コンピュータエンヂニアリング(以下、OCE)から提案をいただいたExtreme Networksのソリューションは、まさに私たちが求めていた「可用性」と「シンプルさ」を高次元で両立させるものでした。
選定の大きな決め手の一つは、Extreme Networksが有する「Fabric Connect」ソリューションです。従来のネットワーク構築では、ループを防止するためのスパニングツリー(STP)など、複雑な設計が必要で、設定やトラブル切り分けに専門的な知識を要しました。しかし、Extreme NetworksのFabric Connectの場合は、一つのシンプルなプロトコルでネットワークを構成することができます。これにより、ネットワーク全体が「一つの面」として機能し、どこで障害が起きても瞬時に経路を切り替える高い冗長性を、極めてシンプルな運用で実現できる点に魅力を感じました。
また、有線LANのスイッチだけでなく、無線LAN(Wi-Fi)環境も同じブランドで統一するという提案であった点も高い評価に値しました。一つのブランドに統一した形でネットワーク環境を提供してもらえるということは、当然ネットワークの安定性につながるものだと考えました。
水守氏 無線LANについては、管理ツールによりグラフィカルに可視化できるという点でも、今まで分かりにくかったところがシンプルになってよかったと思っています。
綿貫氏 正直なところ、これまで馴染んできた「ツリー構造」とは全く異なる「面(ファブリック)」という概念を導入することへの不安もありましたが、技術的な優位性と、防災拠点としての要件を満たす堅牢性が、その不安を上回る決め手となりました。
導入決定から実際に稼働に至るまでのプロセスにおける満足度
3. タイトなスケジュールにもかかわらず、遅滞なく稼働へ
―― 導入決定から新庁舎での稼働開始まで、約半年という限られた期間でのプロジェクトだったと伺っています。導入プロセスにおけるExtreme NetworksやOCE、丸紅I-DIGIOグループの丸紅情報システムズ(以下、MSYS)の対応はいかがでしたか。
綿貫氏 契約締結が令和6年3月末で、第一期の稼働開始が同年10月でしたので、実質的な構築期間は約6〜7ヶ月でした。新庁舎の建設プロジェクト全体と並行して進める必要があり、スケジュールは非常にタイトでしたが、結果として「完全なオンスケジュール」で稼働にこぎ着けることができました。
このプロセスにおいて、OCE、MSYS、そしてメーカーであるExtreme Networksの対応には非常に満足しています。特に構築作業においては、限られた時間の中で現場の状況に柔軟に対応していただきました。
4. 実稼働してから今日までの稼働状況についての評価
―― 稼働し始めてから現在までの運用状況はいかがでしょうか。安定性や操作性など、実際に活用してみての率直な評価をお聞かせください。
綿貫氏 稼働開始から現在まで、ネットワークの「バックボーン」については、目立ったトラブルもなく非常に安定して稼働しています。まさに私たちが目指していた「止まらないネットワーク」が実現できており、高く評価しています。
デジタル担当として、インフラが意識されることなく「つながって当たり前」の状態を維持できていることが、何よりの成果だと感じています。
今回のプロジェクトで、特に印象に残っているのは、技術に対する信頼性を確信させてくれたデモンストレーションです。一通りの構築作業が完了した際に、OCEから「稼働テストをしてみましょう」とご提案いただき、その場で技術者の方がコアスイッチにつながっているLANケーブルを、通信中に引き抜いた瞬間がありました。以前のネットワークなら、当然ネットワークの切り替えにある程度の時間がかかるような場面です。もちろん、今回構築した環境下では、仕組みとしてネットワークがつながり続けるということは分かっていましたが、実際にLANケーブルを抜いても、Extreme NetworksのFabric Connectのおかげで、通信は何事もなかったかのように継続されている、という状況を目の当たりにし、このネットワークを選んで正解だったと確信しました。

水守氏 私は今年度からデジタル推進の担当になり、ネットワークの専門知識についてはまだ勉強中の身ですが、無線LAN管理用として導入したExtreme Networksの管理ツールは単語さえ理解できれば、視覚的に状況が分かりやすいため、未経験に近い状態からでも運用に携わることができています。
もちろん、今回初めて導入した全庁的な無線LAN環境においては、端末とアクセスポイントの整合性や電波調整の面で、初期段階にいくつかの課題はありました。しかし、これらはインフラそのものの問題というより、無線特有の環境設定の問題であり、OCEと連携しながら着実に最適化を進めることができています。全体として、運用の利便性は旧環境から劇的に向上したと実感しています。
稼働後のアフターフォロー・サポートと、今後の展望など
5. 稼働後の通信障害にも迅速に対応してくれる心強さ
―― 稼働後に発生した無線LANの微調整や、日々の運用サポート体制についての満足度はいかがでしょうか。
水守氏 サポート体制についても非常に充実しており、助かっています。稼働後に無線LANの通信障害のような挙動が見られた際も、OCEがすぐに現場に駆けつけてくださり、原因の切り分けや電波の調整に迅速に対応してくれました。
綿貫氏 MSYSとExtreme Networksに対しても、リセラー、メーカーとして強力にバックアップしていただいていることを感じます。海外メーカーの場合、ドキュメントの日本語化やレスポンスに不安を感じるケースもありますが、今回は技術的な相談や情報提供もスムーズに行われていると感じています。
現在はチームとして対応していただいているため、誰か一人の営業担当者に依存することなく、技術的な裏付けに基づいた継続的なサポートを受けられています。「入れて終わり」ではなく、稼働後の細かなトラブルに対しても真摯に向き合っていただける姿勢には、非常に満足しています。
6. 今回導入した堅牢なネットワーク基盤を土台として、庁内のDXをさらに加速させる
―― 今後Extreme Networksに期待することや、将来的にこのネットワーク基盤をどのように活用し、市のDXを推進していきたいか展望をお聞かせください。
綿貫氏 今後はこの堅牢なネットワーク基盤を土台として、庁内のDXをさらに加速させていきたいと考えています。現在はクラウド活用が主流ですが、AI技術の急激な進化やデータの集約・分散の波を考えると、数年後にはネットワークに求められる要件も変わってくるでしょう。Extreme NetworksのFabric Connectがもつ高い拡張性を生かし、どのような技術トレンドがきても、最小限の負荷で柔軟に対応できるインフラであり続けてほしいと願っています。
メーカーへの要望としては、技術的な素晴らしさを「非専門家」にも分かりやすく伝えるためのサポートをお願いしたいです。ネットワークは「動いて当たり前」のインフラであり、その技術的なすごさは一般の職員や市民の方々などには、少々伝わりにくいものです。市としては、「Extreme Networksに刷新したことで、具体的にどれだけリスクが減り、どんなメリットを享受できているのか、そして運用コストがどれほど削減されたのか」といったことを、専門知識がない人にも一目で分かるような、かみ砕いた説明資料や比較データを提供していただけると、大変ありがたいです。
水守氏 現在はまだ無線LAN環境の最適化を進めている段階ですが、将来的にはこのインフラを活用して、職員の柔軟な働き方の下支えや、市民サービスを向上させるような新しいICT活用につなげていきたいです。このシンプルで強力なネットワークを最大限に生かし、四街道市のデジタル化を支えていきたいと考えています。

―― 四街道市役所の新庁舎ネットワークプロジェクトは、Extreme Networksの「Fabric Connect」という先進ソリューションを採用することで、防災拠点にふさわしい「止まらないネットワーク」と「運用のシンプル化」を同時に実現した。複雑な継ぎ接ぎの過去を脱却し、統一されたシンプルさを獲得したインフラは、同市のDX推進に向けた強固な礎となるに違いない。




