介護業界におけるIoTとは? 導入するメリット、デメリットを解説

介護業界では、人手不足による介護サービスそのものの質の低下や、介護スタッフの労働環境の悪化が問題視されています。こうした中、介護業界におけるIoTやAIの活用が注目されています。

本稿では、介護業界におけるIoT活用の実態と可能性について述べるとともに、IoT導入のメリット、デメリットやIoT導入を後押しする補助金制度について解説します。

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介護業界におけるIoTの役割

IoTとは何か、介護業界においてIoTができることを解説します。

IoTとは

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。さまざまな家電製品や自動車、製造現場のロボット、製造ラインそのものをインターネットに接続することで、さまざまなデータをやりとりし、家電製品や製造ロボットを制御することができます。IoTの活用シーンは以下の記事で詳しく解説しています。

介護業界においてIoTができること

介護業界においてIoTが有効な側面は2つあり、1つは介護サービスの質の向上、もう1つは介護スタッフの付帯業務の軽減です。また、以下の記事では具体的なIoTの活用方法を解説しています。

1.介護サービスの質の向上

IoTセンサーを使えば、在宅の介護者を遠隔監視することができます。また、AIやIoT機能を搭載した介護ロボットを活用することで、高齢者とのコミュニケーションを促進し、QOL(生活の質)の向上に役立てることができます。

2.介護スタッフの付帯業務の軽減

IoTデバイスを積極的に活用した業務管理システムの導入など、DXを推進することで業務の効率化が図れます。たとえば、情報共有のための申し送りの手間が軽減され、伝え忘れなどの不備の防止にもつながります。

要介護者や高齢者のヘルスチェックデータは、手持ちのタブレット端末などで素早く入力でき、スタッフ間でのデータ共有もスムーズになります。また、被介護者のカルテ作成や介護プランの作成も効率化できます。

介護業界でIoT化が期待される背景

現在、介護業界でIoT導入への関心が高まっている背景には、主に3つの要因があります。

1.介護業界の人材不足

団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題を皮切りに、今後、介護を必要とする人口の増加が見込まれています。一方で、日本全体の労働人口が減少傾向にあることや、介護業界自体の労働環境が必ずしも改善されていないことから、今後、人手不足が深刻化すると予想されています。

2.少子高齢化社会

日本は今後も少子高齢化が進むといわれており、それに伴い介護を必要とする人は確実に増えていきます。一方、生産年齢人口は減少傾向にあり、介護をする側とされる側のアンバランスはますます大きくなることが予想されています。

3.介護の質の低下

少子高齢化や介護業界の人材不足を背景に、介護スタッフの業務負担は大きくなっています。その結果、介護スタッフ1人当たりの生産性はなかなか向上せず、介護サービスそのものの質の低下を招いています。

とくに介護の質の低下は重要な問題です。この状況を打開するためには、介護スタッフの生産性を向上させ、介護業務に割ける時間を増やすことが不可欠です。そのためには、事務作業などの間接業務をIoTで自動化することで削減し、介護業務にもIoTを導入することで手作業を減らしていく必要があります。

介護業界で導入が進んでいるIoT機器

介護業界で導入が進むIoT機器について、大きく3つに分けて解説します。

1.業務支援システム

介護の現場では、介護スタッフによる業務の引き継ぎや申し送りが不可欠ですが、引き継ぎ自体にも一定の時間がかかります。たとえば、電子カルテシステムを導入し、介護記録をクラウドで管理すれば、引き継ぐべき情報を漏れなくカルテに記録することができ、業務時間の有効活用につながります。

また、消耗品や備品の在庫管理をシステム化し、在庫が少なくなったときにアラートを出したり、自動的に発注したりすることで、在庫が突然なくなったときにスタッフが買い出しに行くなどの無駄な作業を減らすことができます。

2.コミュニケーション支援システム

近年、AIを搭載した介護用ロボットが実用化されています。センサーで高齢者や被介護者を見守り、ちょっとした会話でコミュニケーションをとるロボットもあります。

3.見守りシステム

さまざまなIoTセンサーを利用することで、在宅中の高齢者や被介護者を遠隔から見守ることができます。見守りには人の動きを検知する人感センサーが一般的ですが、温湿度センサーをリビングに設置し、一定の温度や湿度を超えるとアラートを発信することもできます。高齢者の場合、体温調節機能が低下し、暑さに気づかないこともあり、熱中症が懸念されるため、居室環境の適切な管理は欠かせません。しかし、介護スタッフが見回りや見守りをするのは現実的ではないため、IoT機器の活用が有効です。

介護現場にIoTを導入するメリット

介護現場にIoTを導入するメリットを4つ解説します。

1.介護スタッフの業務負荷を軽減できる

IoT機器を利用したさまざまなシステムは、介護スタッフの業務負担を軽減することができます。

2.介護サービスの質を向上できる

上記のような事務作業などの負担を軽減することで、本来の介護業務に集中し、サービスの質を向上させることが可能です。

つまり、IoTによって見守りなどの業務の一部を効率化・自動化することで、スタッフが人的サービスの提供が必要な介護業務に十分な時間を割くことが可能となり、介護サービスの質の向上につながります。

3.緊急時における対応の迅速化

介護施設などでは、ベッドにセンサーを取り付けることで、被介護者の身体の異常をいち早く察知し、迅速な対応が可能になります。

また、徘徊リスクのある高齢者の見守りでは、ウェアラブル端末などを装着して、一定範囲を超えるとアラートを出すシステムを構築することで、早期発見が可能になります。

4.事故の防止

居室などに設置された各種センサーやウェアラブル端末から必要な情報を常時収集し、異常を検知するとリアルタイムで介護スタッフに通知することで、異常事態への迅速な対応と事故防止を実現します。

介護現場にIoTを導入するデメリット

人手不足に悩む介護業界にとって、IoTの導入はメリットも多いですが、デメリットもあります。

導入と維持に費用がかかる

IoT機器やデータを管理するシステムなど、いわゆるIT投資が必要になります。また、イニシャルコストだけでは足りず、ある程度のランニングコストも必要となります。

スタッフ全員のシステムへの理解が難しい

現在のシステムは操作性に優れ、難しい機械操作を必要としないことが多いです。しかし、システムに対する最低限の理解は不可欠であり、場合にはトレーニングやセミナーの受講が必要になります。

個人情報の漏えいリスク

電子カルテのようなものを導入することで、介護を受ける人や施設を利用する高齢者の個人情報が介護施設に保管されることになります。これらの個人情報はネットワーク上でやり取りされるため、適切なセキュリティ対策を講じなければ、個人情報漏えいの危険性が高くなります。

IoT導入における補助金制度

介護業界の人手不足や介護サービスの質の低下を解消するため、政府は介護業界へのIoT導入を積極的に支援しています。ここでは、「ICT導入支援事業」と「介護ロボット導入支援事業」の2つの補助金制度を取り上げます。

ICT導入支援事業

ICT導入支援事業は、介護施設等に対し、施設(事業者)の申請に基づき、ICT導入費用の一部を助成する補助金制度です。

ソフトウェアの導入だけでなく、タブレット端末やパソコンなどの情報通信機器も補助の対象となります。

主な支援制度は厚生労働省ですが、申請自体は各都道府県が行っているので、詳細は各都道府県に確認する必要があります。

介護ロボット導入支援事業

介護ロボット導入支援事業は、介護ロボットを活用した介護事業所の生産性向上の取組を通じてケアの質の維持・向上やスタッフの負担軽減等を図るため、介護ロボットやICTの導入費用の一部を助成する厚生労働省主導の補助金制度です。

移乗支援ロボットや入浴支援ロボット、見守りセンサーなどの導入に向けた通信環境の整備にかかる費用が助成の対象となります。

こうした国の補助金制度を積極的に活用することで、介護現場へのIoT導入を進めることが可能になります。

介護のIoT化に役立つ「MAIDOA plus」

これまで述べてきたように、多種多様なセンサーを活用することで、見守りなどの介護サービスの一部をシステムに置き換えることが可能です。しかし同時に、さまざまなセンサーから受信したデータを管理する仕組みも不可欠です。

MAIDOA plus」は、多種多様なセンサーからのIoTデータを集約・管理できるワンストップのIoTプラットフォームです。

介護現場で役立つセンサーなどの機器は多くの新製品が開発されています。しかし、そうしたセンサーやシステムは、「このセンサーをこのシステムで」というように、使い方が限定されているのが一般的です。そのため、より精度の高いセンサーの使用が必要になるたびに、多額の費用が必要になります。

MAIDOA plusは、さまざまなセンサーや新しいセンサーに柔軟に対応し、運用ニーズに合った使いやすいユーザーインターフェースを低コストで提供します。データを管理するダッシュボードは、ユーザーが簡単にカスタマイズできます。ダッシュボードはご要望に応じてカスタマイズすることも可能です。

MAIDOA plus お役立ち資料

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