対話型生成AIの搭載で、コンタクトセンターの業務効率を劇的に改善する音声テキスト化サービス

恒常的な人材不足、コンタクトポイントのオムニチャネル化による業務対応の複雑化など、コンタクトセンターが抱える課題は一朝一夕では解決が難しい課題ばかりだ。

そうした難題を抱えるコンタクトセンターの業務効率化を推進し、顧客対応の品質向上を実現するソリューションとして、多くのコンタクトセンターで導入され好評を博している、コンタクトセンター向けクラウドサービス「MSYS Omnis」。

その「MSYS Omnis」が、このほど対話型生成AIを実装し、コンタクトセンターのさらなる業務効率の改善と、顧客対応の品質向上を可能にした。

本稿では、「MSYS Omnis」に新たに搭載された生成AI機能によって、コンタクトセンター業務にどのようなメリットを提供可能になったのか、丸紅情報システムズ株式会社 エンタープライズソリューション事業本部 サービス企画室 室長 樋口 健一郎に話を聞いた。

多くのコンタクトセンターが抱える重要な2つの課題

昨今のコンタクトセンターには、大きく2つの課題があると樋口は話す。

「ひとつは人材不足という課題です。日本の少子高齢化が進展する中で、コンタクトセンターに限らず、多くの業種・業態で人材不足と、採用難が常態化しています。しかしとりわけコンタクトセンターでは、定着率があまりよくないという事情もあり、人材不足・採用難がより深刻になっているのです。また、SNSの普及やDXの進展などによって、顧客と企業との接点がオムニチャネル化しています。それによってコンタクトセンターにも、電話以外のコンタクトポイントに関する対応力が求められるようになってきています。これが2つめの課題です。」

人材不足は日本全体の課題ともいえるが、コンタクトセンターの場合、業務の一部にクレーム対応も含まれることがあるため、特に採用が難しいという問題がある。

また、オムニチャネル化するコンタクトポイント別に対策を検討することもコンタクトセンターにとっては急務の課題だ。

「最近は、メールや各種SNSなどの、いわゆるノンボイス系チャネルの対応が必須になってきており、オペレーターに対しても電話応対のスキルだけでなく、一定のITスキルなどが求められるようになってきています。」と樋口は話す。

顧客満足の向上と、業務効率の改善を両立させる生成AIの活用

では、こうした課題に対して、コンタクトセンターはどのように対応すべきなのか。

「実は、この2つの課題については、ひとつのソリューションで対応することが可能です。そのソリューションとは、自動化です。」と樋口は言い切る。

「人材が思うように採用できない環境下では、せっかく採用できたオペレーター人材に長く働いてもらうことが肝要です。そのためには、できるだけオペレーターの業務負荷を軽減しつつ業務効率の改善を行うこと、オペレーターがストレスを感じやすい場面では積極的なサポートができるような体制を構築することが重要です。そして、この2つの課題はどちらも、自動化で解消できるのです。」

コンタクトセンターのオペレーターは、顧客からの電話対応はもちろんのこと、いわゆるアフターコールワークも負荷になっていることが多い。たとえば、通話内容を正確に記録する作業はアフターコールワークの中でも特に重要なものであるが、こうした通話内容の要約のような業務は、生成AIなどのテクノロジーを活用すれば、業務負荷の軽減を期待できる。

また業務効率化という視点と、オペレーターの負荷軽減という視点の両方を満たさなければならないのが、SV(スーパーバイザー)によるオペレーターの支援だ。顧客対応に苦戦しているオペレーターに対して適切なタイミングでSVがサポートに入ることで、顧客対応時間の短縮や、オペレーターのストレス軽減という負荷削減につながる。しかし、何人、何十人といったオペレーターの管理・監督を担っているSVが、すべてのオペレーターの通話状況を把握し、タイムリーに支援に入ること自体が難しいという側面があった。

「しかし昨今では、そうした課題も生成AIによって解決が可能になります。丸紅情報システムズが提供しているコンタクトセンター向け音声テキスト化サービス『MSYS Omnis(以下、Omnis)』が、生成AI機能を搭載したことで、こうしたコンタクトセンターの課題を円滑に解消していくことが可能になりました。」と樋口は、この度のOmnisの生成AI機能搭載に自信を覗かせる。

生成AIの搭載で、効率的にオペレーターを支援するOmnis

Omnisが生成AIを搭載したことで、さまざまなシーンでコンタクトセンターの業務改善に資することができるようになったと樋口は話す。

「たとえば顧客対応の通話中に、会話内のキーワードに基づいて、関連情報をオペレーターに表示することで、リアルタイムで会話を支援することが可能です。また、先ほど触れた、アフターコール業務としての通話内容の記録ですが、これも、録音された音声データを生成AIによって要約可能になるため、オペレーターの業務負荷は大きく軽減されます。これまでも、音声データに基づく要約機能はあったのですが、生成AIを搭載したことで、要約の精度が飛躍的に向上しました。かつては、一度要約した文章をオペレーターが時間をかけて修正するようなことも珍しくありませんでしたが、そうした作業時間を大幅にカットできるようになりました。」

さらに、オペレーターが苦戦している会話に、どう円滑にSVがサポートに入るかという課題についても、Omnisの生成AI機能は強力な支援を可能にしたという。

「通話状況をモニターしているSVが、あるオペレーターの通話に支援が必要と判断した場合、まずはそれまでの会話内容を確認した上で介入することが必須でした。状況把握が中途半端のまま介入してしまうと、顧客に同じ説明をもう一度させることになったり、“わかっていないのに、なんで入ってきたんだ”とさらに不興を買うような事態にもなりかねません。しかし、Omnisの生成AIは、それまでの会話内容を迅速に要約し、SVに提示します。SVはそれを確認することで、通話の経緯を理解した上で介入できますので、スピーディな問題解決が可能になります。」

Omnisの生成AI機能は上記のような対応を改善でき、大きく業務の効率化に寄与することがわかる。

オペレーター支援だけではない、Omnisの生成AI機能

オペレーターの業務的負荷や、ストレス軽減にもつながり得るOmnisの生成AI機能だが、それ以外にも多様な業務支援に活用されることを想定していると樋口は話す。

「たとえば、オペレーターが通話記録の要約を作成する場合、オペレーターの熟練度や、ものの見方・観点の違いなどによって、必ずしも横並びで比較できるような標準化された要約内容にすることはできないという側面がありました。しかし、Omnisの生成AI機能であれば、常に同じアルゴリズムによって要約を作成するので、見方が違ったり、熟練度が違ったりというような個人スキルに依存しない、標準的な要約文の作成が可能になります。これによって、横並びでのテキスト分析なども行いやすく、マーケティングデータの価値も高まります。」

生成AIを活用したアウトプットをマーケティングに活用することで、顧客基盤の拡大にもつなげることができる。

また、オペレーターの通話内容に関する品質評価も、より客観的に実施できるため、オペレーターの教育面でも有効であり、何より正しく評価・支援することで、オペレーターのモチベーション向上につながり、離職防止の効果も期待できる。

「一般に、コンタクトセンターでのオペレーター評価というと、処理件数の多寡であったり、通話時間の長短などの定量的なものが中心だったようです。しかし、Omnisであれば、録音された通話内容そのものを分析して、評価することが可能になります。もともとOmnisでは会話内容に基づいて、オペレーターの感情分析をする機能が備わっていましたが、その機能にオペレーター自動評価機能が加わったことで、より客観的でより公正な品質評価が可能になりました。」

定量的に評価するだけでは、オペレーター側に不満が残る可能性も否めないが、会話の内容を客観的に分析・評価できることで、オペレーター側からの信頼性も高まり、離職率の低減も期待できる。

今後、生成AIによるFAQ生成支援機能の開発を検討している。さまざまなドキュメント(マニュアルなど)のリソースを取り込んで、既存の情報資源を利用し、FAQ作成を支援する機能だ。樋口によれば、こうしたFAQの作成については、専任のFAQナレッジマネージャーのような方が担当されることが多いとのことだが、それでも日々蓄積されるデータやナレッジが膨大である場合、とても作業が追いつかないという。そのような場合でも、FAQを自動生成することで、それを人的にチェックする程度の作業で、有効なFAQの更新も可能になる。

柔軟かつスピーディなカスタマイズ対応でコンタクトセンターを支援するOmnisの優位性

今般の生成AI搭載によって、非常に強力な支援ツールとしてバージョンアップしたOmnis。もちろん、Omnisの優位性は生成AIのみにとどまらない。

樋口は、数ある優位性の中でも、柔軟かつスピーディなカスタマイズ対応が特に大きな優位性のひとつだと話す。

「Omnisでは、利用されているコンタクトセンター様からご要望を受け、他のお客様でも有用な機能と判断した場合、比較的柔軟に、機能実装を行っています。たとえば、“この画面で、こういう項目が追加されれば、CRM連携の時にスムーズで助かる”といったご要望が出ることがあります。多くのシステムベンダーさんだと、バージョンアップのタイミングでの反映となり半年、1年とかかる場合が多いと思います。しかし、Omnisでは、短期間で対応することがあります。内容によっては、ご要望をいただいてから、2週間程度で実装したという事例もあります。もちろん、すべてのご要望にお応えすることは難しく、バージョンアップ時の反映になることもありますが、対応できるところは、できるだけ対応したいと考えています。」

樋口が話すように、こうした柔軟な対応力と、迅速な機動力は、Omnisの大きな優位性といえる。

Omnisは、席数300超の大規模コンタクトセンターから、5席程度の小規模コンタクトセンターまで、累計70社超のコンタクトセンターで利用されている。

一度Omnisを導入すると、長く利用し続けられる理由は、機能が優れていることはもちろんのこと、この迅速で柔軟な対応力によるところも大きいのではないだろうか。

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樋口 健一郎
丸紅情報システムズ株式会社
エンタープライズソリューション事業本部
サービス企画室 室長
※所属・職名等は記事公開当時のものです。(敬称略)