セッション内容
登壇していたのは、歴史ある日本の大企業のDX・AIX戦略を担当するチームでした。
セッションのテーマは、
「現場と経営を巻き込みながらAIを進めている取り組み」
というもので、
- なぜ今 AIX(AI Transformation)なのか
- 経営と現場をどうつなぐか
- どのようにAIツールを"日常の仕事"に組み込んでいるか
- 「業務特化型エージェント」をどう構想しているか
といった話が、具体例を交えながら紹介されていました。
資生堂が AIX に踏み出した背景
AIX に踏み出した背景として語られていたのは、どの大企業も抱えがちな課題です。
- 国内市場の伸び悩み
- 海外プレイヤーも含めた競争の激化
- 人口減少による、将来的な人手不足リスク
こうした前提の中で、
「今あるやり方を、少し効率化する」
ではなく、
「中長期の競争力そのものをつくり直す」
ための打ち手としてAIを位置づけているのが印象的でした。
特に、「クリエイティブさ」や「想像力」といった、人間ならではの力を引き出すためのパートナーとしてAIを捉えている点が、単なる効率化とは違うスタンスだと感じます。
「経営マター」としての AIX と、サンドイッチ型の推進
もう一つ印象に残ったのが、AIX を 「IT部門のプロジェクト」ではなく「経営マター」 として扱っていたことです。
それは企業体制によく表れており、この企業が実際に取っていたのが、
経営層
↓
推進部門 + 各部門のキーメンバー
↑
現場の従業員
という、"サンドイッチ型"の推進体制でした。
- 経営が大きな方向性と優先順位を示す
- 専任の推進部門が全社プログラムを設計する
- 各部門から選ばれた「現場推進役」が、日常業務と AIX の橋渡しをする
- 現場は、実際の業務でAIを使いながら、改善点をフィードバックする
という役割分担になっています。
これを聞いて「全社のあちこちに"AIの火種"を置きつつ、それを束ねる仕組みをつくっている」というイメージが浮かびました。
Gemini / Gemini Enterprise をどう位置づけているか
ツール面では、Google Cloud の
- 生成AI「Gemini」
- エージェントプラットフォーム「Gemini Enterprise」
を軸に据えた取り組みが紹介されていました。
個人の仕事に溶け込ませる:Google Workspace での Gemini 活用
まず、Google Workspace 上で、
- 文書作成のドラフト
- 会議メモ整理
- アイデア出し
- メールの要約・草案 など
に Gemini を使うことを「特別なこと」ではなく「日常の仕事の一部」にしていく、という話が印象的でした。
定着の鍵として語られていたのは、
- 部門ごとのハンズオン
- 社内ニュースレター
- 社内の"AI好き"な人たちのネットワーク化
など、「継続的に話題にし続ける」ための工夫です。
組織全体のナレッジにアクセスする:Gemini Enterprise
もう一つの柱が、Gemini Enterprise を使った「社内ナレッジ検索エージェント」です。
- 社内のお知らせ
- 商品やキャンペーンの資料
- マニュアル類 など
部門をまたいで点在している情報を、まとめて横断的に聞ける窓口としてAIエージェントを置く、というイメージです。
「今までは、どこに何があるか知っている人に聞いていたような情報がAIに聞けばすぐ出てくるようになる」という話で、情報を探す時間が大幅に減りそうだと思いました。
また、「探すのに時間がかかる」問題を、組織全体でまとめて解決する、
その一つの形が、AIエージェントを使ったナレッジ検索基盤である
という考え方は、自分の仕事にもすぐに応用できそうだと感じています。
「業務特化型エージェント」という考え方
セッション後半では、「業務特化型エージェント」というキーワードが出てきました。
これはざっくり言うと、
汎用的なチャットボットではなく、
ある業務の"やり方や考え方"に深く寄り添うエージェント
のことです。
その本質として強調されていたのは、次の3点でした。
- 業務知識の理解
社内文書や専門用語、その業務ならではの前提知識をちゃんと理解させること - 業務判断の再現
ベテランが暗黙のうちにやっている判断基準や例外処理を、ルールとして落とし込むこと - 業務改善の継続
使ってみたフィードバックを取り入れて、精度や振る舞いを育てていくこと
そのうえで、
- 研究開発のように、専門性が高くてロジックも複雑な領域
- ECのように、立ち上げスピードと運用効率が求められる領域
などでの具体例が紹介されました。
大事だと感じたのは、
「自動化」ではなく「理解→判断→改善のサイクル」をAIに組み込むことで、
仕事そのものの質を上げていこうとしている
というスタンスです。
セッションからの学び
このセッションを通じて、AIツール導入を「組織変革」や「カルチャー変化」とどう結びつけるか、という観点で特に重要だと感じたポイントが4つあります。
- AI活用を、経営課題と切り離さずに語ること
「売上」「コスト・生産性」「人材・組織」「顧客体験」といった文脈とセットで考える。
- 経営と現場の間に、"つなぐ人"と"つなぐ場"をつくること
トップダウンとボトムアップのどちらかではなく、それらを橋渡しする中間層を意識的に設計している。
- 「どれだけ使われたか」ではなく、「何が良くなったか」を見にいくこと
利用率だけでなく、時間削減・ミス削減・新しい提案の創出など、価値の出方を言語化する。
- 個別の成功を「型」にして、組織全体で再利用できるようにすること
テンプレート化・プラットフォーム化・エージェント化などで、「もう一度使える形」にしていく。
これは、Google Workspace や Gemini / Gemini Enterprise をお客様に導入・活用してもらう立場にあるIT企業にとって、そのまま「上流構想のチェックリスト」にもなる視点だと感じました。
IT企業の新入社員として、私が取り組もうと思った4つのこと
一方で、私はまだIT企業に入社したばかりの立場です。
社内外のDX戦略を決めるポジションにはいません。
それでも、このセッションを聞いて、
「自分の今の業務の範囲でもできることがある」
と感じました。
ここからは、実際に意識して取り組もうとしている4つのアクションです。
1.「お客さまの経営テーマ」を意識して会議を聞き・まとめる
会議に同席するとき、これまでは「技術的に何を話しているか」にばかり注目しがちでした。
これからは、
- この議論は、売上・利益の話なのか
- コストや生産性の改善の話なのか
- 組織や人材の話なのか
- 顧客体験やブランドの話なのか
といった「経営テーマ」のレンズを持ってメモを取るようにします。
会議後には、自分用に、
「このプロジェクト/議論の狙いは、〇〇という経営課題に対して、△△というアプローチを取ろうとしている」
と一言で整理し、技術やツールの話を、経営の言葉と結びつけて理解していきたいです。
2.「ツール利用」ではなく「価値創出」をひと言で振り返る
Gemini やその他のツールを使ったときに、
- 何が良くなったか
(時間短縮、手戻り減少、レビューが楽になった、論点が整理された など) - どのくらい良くなったか
(ざっくりでいいので、「3時間→1時間」「ステップが半分」など)
を、一言メモで残していきます。
「AIを使ったかどうか」ではなく、「どんな価値が出たか」で振り返る癖をつけることで、自分なりの"小さな業務改善"を回したいと考えています。
3. 一度やった仕事を「型」として残す
自分が行った仕事のうち、
- 会議メモのフォーマット
- うまくいったプロンプト
- 先輩に評価された資料構成
など、「これは今後も使えそう」と思うものは、意識的にテンプレート化していきます。
次に似たタスクが来たときは、
- そのテンプレートをベースに調整して使う
- うまくいけば、テンプレートをアップデートする
というサイクルを回し、
個別の作業を「再利用可能な型」にしていくという、
セッションで学んだ考え方を自分のレベルで実践しようと思います。
4. 「小さく発信する」ことで、自分と周囲の学びを増やす
自分なりに整理した
- プロジェクト/議論の狙い
- AI、ツール活用での気づき
- 使いやすかったフォーマットやプロンプト
などを、完璧な記事にしようとせず、
- チーム内チャット
- 同期向けの共有スペース
などで、短いメモとして共有してみます。
- 「この観点で会議を聞いてみました」
- 「このプロンプトで作業が楽になりました」
- 「このフォーマットが使いやすかったです」
といった、"ラフな共有"を積み重ねることで、自分の学びを自分だけのものにせず、周囲の学びも増やしていければと思います。
セッションから得た学びを、自分の業務に生かす
今回聞いた AIX の事例は、規模も歴史もある大企業の取り組みです。
そこでは、
- AIを「経営マター」として扱うこと
- 経営と現場をつなぐ"サンドイッチ型"の体制づくり
- Google Workspace での Gemini / Gemini Enterprise 活用を軸にした文化・基盤づくり
- 業務特化型エージェントというコンセプト
- 価値創出と型化の発想
などが語られていました。
一見すると「スケールの大きい話」に聞こえますが、その考え方の多くは、
IT企業の新入社員である自分にも応用できるものだと感じています。
- 会議の聞き方を変える
- ツール利用を価値で振り返る
- 一度やった仕事を型にする
- 小さく発信して学びを広げる
といった日々の小さな実践を通じて、自分なりに「AIネイティブな働き方」に近づいていきたいと思います。
そしていつか、自分も、今回登壇していた企業のように、
経営と現場をつなぎながらDXを推進する立場に立てるよう、目の前の仕事から一歩ずつ積み上げていくつもりです。
※本記事は、Google Cloud Next Tokyo 26 における資生堂のセッション聴講を基にした筆者の所感です。
記載内容は筆者による要約・解釈であり、資生堂および Google Cloud の公式見解を示すものではありません。
※本記事における「AIX」は、資生堂が用いる AI Transformation の呼称です。
一般的なIT用語や、IBMのUNIX系OSである「AIX」とは異なります。
※ Google、Google Cloud、Google Workspace、および Gemini は Google LLC の商標です。
Google Cloud Next Tokyo 26
関連するソリューションの資料をダウンロードいただけます。
