コンタクトセンターのカスハラ
コンタクトセンターのカスハラとは、顧客などの言動が社会通念上許容される範囲を超え、オペレーターの就業環境を害するものです。電話を介して応対するため、対面窓口とは異なる形で発生します。
| 判断の観点 | 押さえる内容 |
|---|---|
| 対象となる言動 | 「顧客などの言動」「許容範囲の超過」「就業環境の侵害」の3要素をすべて満たすもの |
| クレームとの境界 | 要求内容の妥当性と、手段・態様の相当性から判断する |
| 発生規模 | 電話対応者の75.3%が被害を経験し、勤務先での対策実施率は5割未満 |

電話越しの暴言や執拗な要求が該当する
職場におけるカスハラは、顧客などの言動が社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境が害される状態を指します。厚生労働省の指針では、「顧客などの言動であること」「許容範囲を超えていること」「就業環境が害されること」の3要素をすべて満たすものと整理されています。
電話やSNSを通じた言動も対象です。コンタクトセンターでの応対も、この範囲に含まれます。
要求の妥当性でクレームと分ける
正当なクレームとカスハラは、要求内容に妥当性があるか、要求を実現する手段や態様が社会通念に照らして相当か、という2点から判断します。
商品やサービスに瑕疵があり、改善や交換を求める申し出は正当なクレームです。一方、瑕疵が認められないにもかかわらず金銭を求める行為や、要求自体は妥当でも暴言や長時間の拘束を伴う行為は、カスハラに該当する可能性があります。
電話業務の75.3%が被害を経験
業務で電話対応をする人のうち、75.3%がカスハラを受けた経験があると回答しています。株式会社リンクが2025年に全国の400人を対象に実施した調査では、勤務先でカスハラ対策が実施されている割合は47.0%にとどまりました。
厚生労働省の令和5年度調査では、過去3年間に顧客などから著しい迷惑行為を受けた労働者は10.8%でした。調査対象や設問は異なりますが、電話対応者の被害経験の多さがうかがえます。
【業界別 電話業務におけるカスタマー・ハラスメント対策に関する調査】業務で電話対応をする人の7割以上がカスハラを経験。一方で、カスハラ対策実施率は5割に満たない結果に|株式会社リンク
コンタクトセンターで多いカスハラの型
電話窓口で起きるカスハラは、暴言型、長時間拘束型、過剰要求型、脅迫型の4つに整理できます。型によって一次対応や記録すべき内容が異なるため、それぞれの特徴を押さえておくことが重要です。
| 型 | 典型的な言動 |
|---|---|
| 暴言型 | 怒鳴り声、人格否定、経験年数や声質への侮辱 |
| 長時間拘束型 | 同じ要求の繰り返し、用件が解決した後の説教や雑談 |
| 過剰要求型 | 瑕疵がない場合の金銭・無償対応の要求、対応不可能な要求 |
| 脅迫型 | SNSでの拡散や訪問の示唆、威圧的な上位者の呼び出し要求 |
怒鳴り声や人格否定を続ける暴言型
怒鳴り声や人格否定は、要求内容が妥当であっても、手段・態様が相当でなければカスハラに該当し得ます。オペレーターの経験年数や声質を理由とする侮辱も、心身に負担を与えます。
オペレーターが言い返すのではなく、定められた手順に沿って警告し、発言内容を記録する運用が必要です。
通話を長引かせる長時間拘束型
同じ要求を繰り返して通話を引き延ばす行為は、拘束が長引くほど許容範囲を超える可能性が高まります。用件が解決した後の説教や雑談も、他の顧客の待ち時間を増やす要因になります。
用件と関係のない通話時間などに目安を設け、超過した場合に対応を切り替えられるようにしておきます。
法外な賠償を迫る過剰要求型
商品やサービスに瑕疵がないにもかかわらず、金銭や無償対応を求める行為は、要求内容の妥当性を欠く可能性があります。契約上のサービスを著しく超える要求や、対応不可能な要求も同様です。
窓口ごとの判断で例外対応を重ねないよう、対応できる範囲を組織として明確にしておく必要があります。
SNS拡散をほのめかす脅迫型
要求を通すためにSNSでの拡散や訪問をほのめかす言動は、手段・態様の面で許容範囲を超える可能性があります。上位者の呼び出し要求も、それ自体ではなく、威圧的な言動や不当な要求を伴うかどうかを踏まえて判断します。
オペレーター個人で抱え込まず、発言を正確に記録したうえで、速やかに管理者へ引き継ぐことが大切です。
コンタクトセンターのカスハラ放置リスク
カスハラへの対応を現場任せにすると、人材とサービス品質の両面に影響が及びます。被害はオペレーター個人だけにとどまりません。
| 影響範囲 | 生じる損失 |
|---|---|
| オペレーター | 心身の不調、休職・離職、採用・教育コストの増加 |
| 他の顧客 | 待ち時間の増加、放棄呼の発生 |
| 企業 | 対応のばらつきによる信頼低下、やり取りの外部拡散 |
暴言が続き休職や離職が増える
暴言を受け続けると、オペレーターが心身に不調を来し、休職や離職に至るおそれがあります。組織に守られていないと感じる状態が続けば、応対経験の豊富な人材の流出にもつながりかねません。
欠員が出ると、残ったメンバーの受電負荷が増します。離職が続けば採用・教育のコストが繰り返し発生し、育成期間中は応対品質を維持することも難しくなります。
放棄呼が増え他の顧客を待たせる
1件の長時間通話によってオペレーターの対応枠が埋まると、他の顧客の待ち時間が延びます。電話を切った顧客が再入電すれば、窓口の負荷はさらに高まります。
応答率や放棄呼の変化を見る際は、その背景にカスハラ対応による長時間通話がないかも確認する必要があります。
SNS拡散でブランドが傷つく
担当者によって対応が異なると、企業としての姿勢が顧客に伝わりにくくなります。対応方針がないまま個人の判断で応対した結果、やり取りの一部が切り取られてSNSに投稿される可能性もあります。
あらかじめ組織としての方針を定め、社内外に示しておけば、一貫した説明がしやすくなります。
コンタクトセンターのカスハラ対策義務
2026年10月1日から、事業主にはカスハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。求められる措置には、方針の明確化と周知、相談体制の整備、発生時の適切な対応などがあります。
| 講ずべき措置 | 実務での落とし込み |
|---|---|
| 方針の明確化と周知 | 許容しない言動と対応方針を文書化し、従業員や顧客に示す |
| 相談体制の整備 | 相談窓口と担当者を決め、連絡方法を周知する |
| 発生時の対応 | 事実確認、被害者への配慮、再発防止に取り組む |
| 悪質な言動の抑止 | 悪質な言動には組織として対応し、再発を防ぐ |
| 不利益取扱いの禁止 | 相談や事実確認への協力を理由に、不利に扱わない |

カスハラを許さない方針を周知する
どのような言動を許容せず、発生時に組織としてどう対応するかを文書で示します。社内への周知に加え、Webサイトや通話開始時のアナウンスを通じて顧客に伝える方法もあります。
方針が明確であれば、オペレーターも個人の判断ではなく、組織の方針に基づいて対応していることを説明できます。
相談窓口を設けて担当者を決める
相談体制を機能させるには、窓口を設けるだけでなく、担当者と連絡方法を明確にする必要があります。SVが窓口を兼任する場合も、通話中に支援を求める手段と、応対後に相談する手段を用意しておくとよいでしょう。
委託先や在宅勤務のオペレーターも利用できる体制になっているか、確認が必要です。
発生時に事実確認と配慮を行う
カスハラが発生したら、録音や応対メモをもとに経緯を確認し、被害を受けた人への配慮を行います。心身の状態について相談できるようにするほか、同じ顧客への再対応を一人に任せないことも重要です。
相談者への不利益な扱いを禁じる
相談や事実確認への協力を理由に、評価や処遇で不利に扱わないようにします。
たとえば、カスハラ対応によって通話時間が延びたにもかかわらず、通常の応対と同じ基準で成績を評価すると、オペレーターが報告をためらう可能性があります。通話時間や応対件数のKPIを評価する際には、カスハラ案件の扱いも定めておきましょう。
コンタクトセンターのカスハラ判断基準
対応方針を用意しても、現場で判断できなければ適切な対応にはつながりません。繰り返し回数や通話時間の目安、エスカレーションの条件、切電の権限を決めておくことで、判断のばらつきを抑えられます。
| 決めること | 基準の例 |
|---|---|
| 該当性の目安 | 同一要求の繰り返し回数、用件と関係のない通話時間 |
| エスカレーション条件 | 暴言・脅迫の発生時や、設定した目安を超えた時点でSVに引き継ぐ |
| 切電の権限 | 最終判断はSVや管理者が担う |
| 習熟の方法 | 型ごとのロールプレイで警告や終話の文言を練習する |
3回繰り返しなど数値で線を引く
同じ要求を3回繰り返した場合や、用件と関係のない通話が一定時間を超えた場合など、判断の目安を数値で示します。オペレーターが印象だけに頼らず、確認できる事実に基づいて対応を切り替えやすくなります。
ただし、数値を超えたことだけでカスハラと断定するのではなく、要求内容や経緯も確認します。適切な目安は業務によって異なるため、既存の通話ログも参考に設定しましょう。
エスカレーション条件を明文化する
暴言や脅迫があった場合や、通話が設定した目安を超えた場合など、SVへ引き継ぐ条件を明文化します。オペレーターの我慢に頼らず、決められた条件で支援を求められるようにするためです。
転送先のSVが不在の場合に備え、代替の連絡先や対応手順も定めておきます。
電話を切る判断はSVが担う
切電の最終判断をSVや管理者が担う体制にすると、オペレーターが責任を一人で抱えずに済みます。
たとえば、警告を行っても言動が改まらない場合の終話手順や、SVへの引き継ぎ方法を決めておきます。ただし、緊急性の高い脅迫などについては、状況に応じた別の対応手順も必要です。
音声認識で通話内容をテキスト化する
音声認識システムは、顧客との会話をリアルタイムでテキスト化し、応対記録の作成にかかる手間を大幅に削減します。文字起こしされたデータから優秀なオペレーターの応対パターンを分析すれば、これまで抽出が難しかった暗黙知を可視化することも可能です。
AIが会話内容をくみ取り、回答候補となるFAQを自動で画面に表示する機能を持つツールも普及しています。
ロールプレイ研修で対応を標準化する
基準を実際の応対で使えるようにするには、ロールプレイが有効です。暴言、長時間拘束、脅迫などの場面を想定し、警告や終話の文言、SVへの引き継ぎ方を練習します。
新人研修だけで終わらせず、手順の更新時にも短時間で反復すると、対応を定着させやすくなります。
コンタクトセンターのカスハラ対策ツール
運用ルールに加え、通話中に支援を求める仕組みや、応対内容を記録する仕組みを整えることも重要です。録音、アラート、音声認識などを組み合わせれば、オペレーターを組織として支えやすくなります。
| 仕組み | 期待できる効果 |
|---|---|
| 通話録音と事前告知 | 応対内容を記録し、過激な言動の抑止につなげる |
| 手挙げアラート | 応対中にSVへ支援を求め、モニタリングや引き継ぎにつなげる |
| 音声認識とテキスト化 | 通話内容を確認・記録しやすくする |
| FAQやIVRの整備 | 自己解決や適切な振り分けを促し、待ち時間を短縮する |
録音の事前告知で暴言を抑止する
通話録音は応対の記録として役立つほか、事前に告知することで過激な言動の抑止にもつながります。録音データは、事実確認や再発防止策を検討する際にも利用できます。

手挙げアラートでSVが即介入する
応対中にSVを呼び出せる機能があれば、オペレーターは通話中でも支援を求められます。SVは通話をモニタリングし、必要に応じて引き継ぎや終話を判断できます。
アラートの履歴を残せば、特定の窓口や時間帯に負荷が集中していないかも確認できます。
AI検知で通話を早期に把握する
音声認識によって通話をテキスト化すると、内容を確認しやすくなります。特定の語句や長時間の応対を条件に抽出すれば、報告されていない案件に気付く手がかりにもなります。
ただし、抽出結果だけでカスハラと判断せず、録音や応対の経緯を人が確認することが必要です。
FAQやIVRで入電自体を減らす
FAQを充実させ、顧客が問い合わせ前に自己解決できるようにすれば、入電数の抑制につながります。IVRによる適切な振り分けや待ち時間の短縮も、問い合わせ時の不満を軽減する手段です。
カスハラ対策をオペレーター個人の応対力だけに頼らないためにも、窓口全体の使いやすさを見直しましょう。
コンタクトセンターのカスハラ対策注意点
基準を厳しくしすぎると、正当なクレームまで受け止めにくくなります。判定の精度を保つとともに、被害を受けたオペレーターのケアまで含めて運用を設計することが重要です。
| 注意点 | 具体的な対応 |
|---|---|
| 正当なクレームの扱い | 商品やサービスへの適切な指摘を、改善につながる情報として受け止める |
| 判定の方法 | システムの抽出結果を確認の手がかりとし、人が最終判断する |
| 被害者のケア | 相談、担当交代、通話後の休息を手順に組み込む |
正当なクレームまで拒まない
カスハラ対策は、顧客からの申し出を一律に遮断するものではありません。商品やサービスの問題点に関する適切な指摘は、改善につながる情報として受け止めます。
対策を講じる際は、消費者の権利に加え、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や、合理的配慮の提供義務にも留意が必要です。
AIの判定だけで該当性を決めない
音声認識やAIによる検知結果は、確認が必要な通話を絞り込むための材料です。語調の強い正当なクレームが抽出されることもあります。
被害者のケアまで運用に含める
対応を標準化しても、カスハラを受けたオペレーターの負担がすぐになくなるわけではありません。相談窓口の案内に加え、同じ顧客からの再入電を別の担当者に引き継ぐ、通話後に休息を取れるようにするなどの配慮が必要です。
まとめ
コンタクトセンターのカスハラ対策では、該当性を適切に判断する基準と、判断や対応を組織で担う仕組みが重要です。要求内容の妥当性と手段・態様の相当性を踏まえ、繰り返し回数や通話時間を現場の目安とします。そのうえで、必要に応じてSVが介入・判断できる体制を整えましょう。
2026年10月1日からは、方針の明確化と周知、相談体制の整備などが事業主の義務になります。施行に向けて、方針の文書化、研修、録音・検知の仕組みを計画的に整える必要があります。
丸紅I-DIGIOグループは、金融業界をはじめとするコンタクトセンター向けに、システム構築から稼働後の保守まで一貫して提供しています。音声テキスト化サービス「MSYS Omnis」は、通話内容の自動テキスト化とFAQ・ナレッジ連携に対応しています。
また、モニタリング画面では通話をリアルタイムで確認でき、手挙げボタン、感情分析、NGワード検知の結果も同じ画面で把握できます。暴言や長時間拘束などの兆候を早期に捉え、SVが介入する運用を支援します。カスハラ対応の記録と応対品質の改善を並行して進めたい場合の選択肢です。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
コンタクトセンターのナレッジ活用に、こんなお悩みはありませんか?
- 対応者によって回答品質にばらつきがあり、エスカレーションが増えている
- FAQやナレッジが更新されず、AIやチャットボットに活かしきれていない
- ナレッジ作成・更新が属人化しており、現場の負担が大きい
上記のようなお困りごとがありましたら、KCS®を活用したナレッジマネジメントをご検討ください。問い合わせ対応の中でナレッジを作成・更新・改善するKCS®の考え方により、信頼できるナレッジ基盤を構築。さらに生成AIを活用してナレッジの原案作成を効率化し、現場負担を抑えながら対応品質と生産性の向上を目指せます。
\KCS®×Omnisで、コンタクトセンターのナレッジ活用を変革/
資料ダウンロードはこちら